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第四話 信じるより信じたい
ツッコまずにはいられない
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もっと交流を持ちたかったが、そろそろ昼休みも終わりかけ。もう帰っていいから、って言えば精霊消えてくれるのかなあ……と思っていたその時だった。
「あ……」
ケイロたちが校舎裏へやって来たことに気づいて、俺は木の陰から三人をうかがう。
まだ俺には気づいていないようで、アシュナムさんとソーアさんはケイロにへりくだった態度を取っている。ケイロが緩んでいるみたいで偉そうだ。
このまま気づかれないなら、やり過ごしたほうがいいか? こんな所で俺ひとりで何やってんだって話になりそうだし。
でもなあ……こっちの世界のことをアドバイスする立場にある身としては、ちょっと見過ごせねぇ……っ。
俺は姿を現わし、ケイロたちへ駆け寄った。
「太智?! どうしてここにいるんだ?」
驚くケイロへ答える前に、周囲を見回して人がいないことを確かめてから、俺は声を潜ませながら近づいた。
「精霊が使えるようになったから、魔法の練習してたんだよ……ちょっと聞くけど、校舎の中を移動する時も三人一緒に行動しているのか?」
「ああ、そうだが? 立場は違えど兄弟なら校内で一緒にいてもおかしくないだろ?」
「お前のキャラに合ってない」
「……どういうことだ?」
「人と馴れ合わないクール男子は、学校で兄弟仲良く並んで歩かねぇ! むしろ身内とは顔を合わせないように避けるか、短く用件を伝えてさっさと離れる。基本、俺らぐらいの男子高生は兄弟と馴れ合わないことのほうが多い」
「な、なん、だと……?!」
あからさまに驚くケイロと、信じられないと首を振ったり目を剥くアシュナムさんとソーアさんへ、俺は大きく頷く。
そう。兄弟仲が良くて公私ともに距離が近いことはあるけれど、思春期になると気恥ずかしくなって外では距離を取る男子のほうが体感的に多い。
しかもケイロは誰とも馴れ合わない空気を放っている。そんな奴が身内と仲良く歩いているだけで、周りは興味津々になると思う。
俺は三人へ目を合わせながら訴える。
「校内の密室とか人払いした部屋とか自宅ならいいけど、遠目でも目撃できちゃう所では悪目立ちするからやめておけ。俺みたいな巻き込み被害者を作らないよう、慎重にやってくれ」
切実な俺の願い。ケイロたちの被害者は俺だけでいい――ハーレム有りの重婚展開は嫌だからな!
話を聞いて、三人が各々に距離を取って頷いた。
聞き分けが良くて何より、と俺が満足して腕を組んでいると、ソーアさんが俺の背中に隠れていた精霊に気づいて覗き込んだ。
「風の精霊ですか。話には聞いていましたが、よく使えるようになりましたね」
「前にケイ……百谷が使っていたのを思い出して頑張ってみたんです。意外と交流が図れて、ちょっと可愛くなってきました」
これぐらい言っても問題ないだろうと、軽い気持ちで口にした事実。
――また三人が驚いて俺を凝視してきた。
「あ……」
ケイロたちが校舎裏へやって来たことに気づいて、俺は木の陰から三人をうかがう。
まだ俺には気づいていないようで、アシュナムさんとソーアさんはケイロにへりくだった態度を取っている。ケイロが緩んでいるみたいで偉そうだ。
このまま気づかれないなら、やり過ごしたほうがいいか? こんな所で俺ひとりで何やってんだって話になりそうだし。
でもなあ……こっちの世界のことをアドバイスする立場にある身としては、ちょっと見過ごせねぇ……っ。
俺は姿を現わし、ケイロたちへ駆け寄った。
「太智?! どうしてここにいるんだ?」
驚くケイロへ答える前に、周囲を見回して人がいないことを確かめてから、俺は声を潜ませながら近づいた。
「精霊が使えるようになったから、魔法の練習してたんだよ……ちょっと聞くけど、校舎の中を移動する時も三人一緒に行動しているのか?」
「ああ、そうだが? 立場は違えど兄弟なら校内で一緒にいてもおかしくないだろ?」
「お前のキャラに合ってない」
「……どういうことだ?」
「人と馴れ合わないクール男子は、学校で兄弟仲良く並んで歩かねぇ! むしろ身内とは顔を合わせないように避けるか、短く用件を伝えてさっさと離れる。基本、俺らぐらいの男子高生は兄弟と馴れ合わないことのほうが多い」
「な、なん、だと……?!」
あからさまに驚くケイロと、信じられないと首を振ったり目を剥くアシュナムさんとソーアさんへ、俺は大きく頷く。
そう。兄弟仲が良くて公私ともに距離が近いことはあるけれど、思春期になると気恥ずかしくなって外では距離を取る男子のほうが体感的に多い。
しかもケイロは誰とも馴れ合わない空気を放っている。そんな奴が身内と仲良く歩いているだけで、周りは興味津々になると思う。
俺は三人へ目を合わせながら訴える。
「校内の密室とか人払いした部屋とか自宅ならいいけど、遠目でも目撃できちゃう所では悪目立ちするからやめておけ。俺みたいな巻き込み被害者を作らないよう、慎重にやってくれ」
切実な俺の願い。ケイロたちの被害者は俺だけでいい――ハーレム有りの重婚展開は嫌だからな!
話を聞いて、三人が各々に距離を取って頷いた。
聞き分けが良くて何より、と俺が満足して腕を組んでいると、ソーアさんが俺の背中に隠れていた精霊に気づいて覗き込んだ。
「風の精霊ですか。話には聞いていましたが、よく使えるようになりましたね」
「前にケイ……百谷が使っていたのを思い出して頑張ってみたんです。意外と交流が図れて、ちょっと可愛くなってきました」
これぐらい言っても問題ないだろうと、軽い気持ちで口にした事実。
――また三人が驚いて俺を凝視してきた。
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