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第三話 特訓!バスケは格闘技に含まれないが、例外あり

悠への疑惑

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「わ、悪い……大、丈夫だったか?」

「これぐらいは想定の範囲内だ。問題はないが、雑念は捨ててパスに集中しろ」

 雑念はお前のせいだからな?! と一度心の中で叫んでから、俺は深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 いくら俺を振り回すアイツに腹が立つにしても、ジュッと燃やしてケガなんてさせたくない。魔法であっても火を扱うなら慎重に、というのは世界が違っても同じなのだろう。

「次行くぞ。しっかり取れ」

 ケイロからパスが飛んでくる。
 やはり火の揺らめきが迫ってくるとドキッとするが、俺は逃げたくなるのを堪えてボールを取る。

 一瞬、手の平に熱を覚えたが、ストーブに手をかざした時くらいの温度。
 まったく怖くないと分かってからは、今までと変わらない調子でパスの応酬をすることができた。



 ケイロとのバスケを切り上げて部活へ向かった後も、俺は野球でサードを守りながら練習していた。

 練習試合で俺の所へボールが来たら、すかさず取ってファーストへ投げ渡す。その時に火をともして、魔法の自主練もしてしまう。
 こっちの人間ならほぼ影響がないみたいだし、火傷する心配はない。もしぶつかっても、それはただボールが当たっただけに過ぎない。

 野球の球に火が点いて飛んでいく光景は、どんな野球少年でも夢見るような魔球そのもの。俺しか分からないのが残念だなあと思っていたら――。

 ――ファーストを守っていた悠が、身を縮めてボールを避けた。

「……悠……?」

 まさか……火が見えてる?

 この火を見られるのは、ケイロたちと同じ世界の住人か、俺みたいに結婚させられてあっちの住人にされてしまったヤツか。

 悠とは子供の頃からの付き合いだから、あっちから来た人間じゃないとは思う。
 でも、俺みたいにあっちの人間にさせられちゃっていたら……?

 試合が進んで、再度俺がボールを取って悠へ投げ渡す際にも火をつけてみる。
 ――パシッ。二度目はなんの問題もなく、悠はミットでボールを受け取った。

 その姿を見て俺は心から安堵した。
 だって、もし見えていたら、悠も俺と同じくあっちの誰かと結婚して、三日に一度は中出しされているってことになる……あれを親友もやっていると思ったら、まともに顔を見ることができない。

 そもそも毎日悠と昼食を一緒にしているが、アイツは左手に指輪をしていない。それを思い出して、さらに俺は安堵に安堵を重ねた。

 大丈夫、悠は違う。きっと最初の球の時はボーッとしていたから、急に球が来てビックリしただけなんだろう。

 だからこれはケイロたちに報告しなくてもいいと判断することにした。
 ……一度気になってしまったことを、頭から消去することはできなかったけれども。
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