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第二話 変人の烙印は絶対阻止!

●考えないようにしていたこと

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 体どころか心すら抵抗させまいとするように、ケイロが俺の唇を貪る。
 クチュクチュと舌が絡まり合う音と感触が、頭の奥まで響いて熱に浮かされていく。

 ああ、今ごろホームルームだろうな……俺がこんな目に合ってるなんて、誰も思わないだろうなあ。

 同じ校舎内のことなのに、当たり前だったハズの日常が遠い。
 人生を丸ごとケイロに巻き込まれた感がひどくて悔しさすら滲む。それなのに、

「ん……むぅ……、ぅ……っ……ンン……」

 キスと愛撫に溺れていく俺の体は、もう甘ったるくて快感に従順な情けない声しか出さない。掴まれていた手首が解かれ、そのままずり上がって指を絡められた瞬間、胸の奥がやけに引き絞られて息が詰まった。

 このまま最後まで――と完全に心が行為のすべてを望んでしまったのに、ケイロは俺の下半身を全部暴いてから体を離した。

「ぁ……え……?」

「お前に褒美をやると言っただろ? 今すぐやめろと言うならやめてやるし……俺との婚姻も破棄したいと言うなら、聞いてやってもいい」

 ケイロ……お前、今それを言うか……?!
 心から望んでいたハズの選択をチラつかされて、俺は思わず息を引く。

 ……でも、それ言ったら楽にしてくれないんだろ、体?
 体の頭もお前に弄ばれて、今すぐ欲しくてしかたないんだけど……っ。

 唇をパクつかせて言葉を出そうとするが、声は出ない。
 何度か息を詰まらせ、吐息を漏らして……それからようやく震える声でケイロに告げた。

「いつもの、やって……お前ので、ぐちゃぐちゃに……」

「……こういうことか?」

 俺のヒクついて誘う尻へケイロが指を這わせると、掠れた小声で呟き、俺の中へ粘ついた液体を注いでくる。そしてわざとらしく火照った穴へ指の腹を押し付け、円を描くように揉んできた。

「はっ、ぁ……あっ、ち、ちが……ア……っ」

 ぐに、ぐに、と指で刺激される度に中の液まで波打ち、奥のほうまで刺激してくる。
 中が痺れて声の甘ったるさが余計に悪化する。でも、いつもケイロを迎えた時の圧迫感がまったくなくて、気持ち良いのにせつなくてもどかしい。

「お前の、さっさと挿れろよぉ……っ、奥まで……なぁ……」

 聞きたかった答えなんだろ、これが――ああやっぱりか。スゲーにんまり笑いやがって……言わせるな、バカ王子が。

 顔が熱くてたまらない俺の腰を掴み、ケイロがゆっくりと繋がってくる。
 欲しかった圧迫感に俺は思わず溺れかけの浅い上辺の息を何度も吸い、込み上げてくる快感に流されてケイロの背中に縋った。

「あァ……ぁ……イイ……はぁ……ン……ッ……」

 これから何度も訪れるだろう絶頂で頭がいっぱいになっている俺の耳元で、ケイロが小さく笑った。

「嬉しそうで何よりだ……なあ太智、気づいてるか?」

「……ぁ……何を……?」

「お前、今……魔法を使っていないのに、俺でこんなに悦んでいるんだぞ……」

 考えないようにしていた現実を突きつけられ、俺は息を引く。

 普段とさほど変わらない様子で、ケイロに触れられて出来上がってしまった体。
 指摘されても感じる体は変わらなくて、引き返せなくなっている俺を自覚する。

 分かってる……もうケイロとこうするのだ嫌じゃないってことも、コイツ自身も嫌じゃなくなってることも。むしろ――。

「……そん、なの……どうでもいいから……っ……イかせろよ、ケイロ……っ」

 深く考えてしまいそうになる自分を止めたくて、俺は腰をくねらせ、中で昂っているケイロを煽る。

 たぶんコイツの思うツボなんだろうと気づいていても、俺は自分の体に逆らえなかった。

「もちろん……嫁の頼みとあれば、喜んで……好きなだけイけ」

 そう言うなりケイロは奥を執拗に突いて、俺の意識をサンドバックにして叩きまくった。



 遠くから疎らな内履きの音や生徒たちのざわめきが聞こえ始めて、放課後が始まったことを知る。
 きっと喘いでいたら声が漏れて、鍵がかかっていても中へ入ろうとしてくるヤツが出てくるかもしれない――ケイロとの営みを邪魔されたくない。

 俺はイきっぱなしになりながら、自分からケイロの唇に食いつき、キスで声を押し殺す。
 唸り合う声が俺たちの頭を包み込み、さらに深く、二人だけの世界に溺れていった。
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