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第一話 気になるお隣さんをウォッチング
不思議工事でプライバシー消滅
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◇ ◇ ◇
「はぁぁ……ったく、なんだったんだよ今日のアレは……」
夜、風呂から上がって、ぼふんっと自室のベッドへ俺はうつ伏せに倒れ込んでから、左薬指を見つめる。
どれだけ眺めても消えない指輪。圭次郎いわく、アイツらの世界の物だからみんなには見えないらしい。確かに悠やクラスメート、先生や母ちゃんからは一切指摘されないままで、その点だけは救いだ。
意識すると指を薄く締め付ける感触を覚えて、俺がアイツと婚姻してしまったあり得ない現実を突き付けてくる。
こんなの無効だろ! と必死で授業中に指輪を外そうと奮闘したが、回しても指先が滑るだけだし、上下に動かそうとしても微動だにしない。そんな俺の様子を圭次郎は隣でほくそ笑みながら観察していた。
「ずっと観察して楽しんでた俺への仕返しかよ……性格悪ぃ……」
あのキレイで性悪な笑みを浮かべた圭次郎の顔を思い出した途端、沸々と怒りが湧いて俺は顔を引きつらせる。
巻き込むだけ巻き込んだクセに……後で説明するって自分で言っておきながら、休み時間も放課後もどこかに行っちまって話ができないって……うう、状況が謎過ぎて胸がモヤモヤする……っ。
視線を指輪から窓に移してみれば、百谷家の庭が光っていない。いつもならこの時間に光っているのに……もしかして誰も帰っていない? 俺を巻き込んじまった挙句に結婚なんかしちまったから、大騒ぎになってたりして――。
「……スゲーややこしいことになってそうだな……面倒クセー」
自室にいる安堵感で、あれこれ浮かぶ本音を漏らしていると、
「それについては同感だな。誰も俺には逆らえないクセに、自分たちの考えと違うだけで必死にケチをつけてくる……相手にするのは面倒極まりない」
いきなり圭次郎の声が聞こえて、俺はベッドから飛び起きる。
するといつの間にか圭次郎が俺の勉強椅子に腰かけ、脚を組み、わずかに微笑みながら俺を見つめていた。黒のハイネックにジーンズというシンプルな格好がコイツの無駄に整ったツラを際立たせていて、驚きと同時にちょっとムカつく。
「も、も、百谷ぁ……?! どこから入ったんだよ?!」
「成り行きとはいえ婚姻関係を結んだからな。自由に部屋を行き来できるよう、空間を繋げさせてもらった」
ニッと歯を見せてから圭次郎が窓を指差す――フワ……と光のモヤが現れ、その向こうに簡素な部屋が薄っすらと見える。
王子様で顔も派手なのに、部屋は地味なんだなあ……なんて現実逃避でぼんやりと考えてから、俺はハッと我に返った。
「勝手に人の部屋を不思議工事するなよっ! あと断りもなく入って来るな! お前の世界にはプライバシーっていう概念はないのか?!」
「世界は違えど、夫婦になればプライバシーはいくらか共有するものではないか?」
「そ、それはお互いの同意があって成り立つモンだろ?! 少なくとも俺はこの結婚に同意してないからな!」
グッと左手を硬く握り込んで俺は熱く訴える。でも圭次郎は妙に落ち着いたままだ。
「まあ俺たちの場合、俺が望めばそれがすべてになるからな……まあ諦めろ、としか言えんな」
「百谷っ、あのなあ――」
「こっちの人間がいない時はケイロと呼べ。俺の本来の名だ。それと、ようやく時間が作れたから、この俺がわざわざ足を運んで事情を説明しに来てやったんだ。ありがたく思いながら清聴しろ」
どこまでも偉そうな態度に腹は立ったが、いったいどうなっているのか詳しい話は聞きたい。俺は苛立ちをぶつけたい気持ちをグッと堪え、開けば文句と責めの言葉しか出なさそうな唇を硬く閉じた。
「はぁぁ……ったく、なんだったんだよ今日のアレは……」
夜、風呂から上がって、ぼふんっと自室のベッドへ俺はうつ伏せに倒れ込んでから、左薬指を見つめる。
どれだけ眺めても消えない指輪。圭次郎いわく、アイツらの世界の物だからみんなには見えないらしい。確かに悠やクラスメート、先生や母ちゃんからは一切指摘されないままで、その点だけは救いだ。
意識すると指を薄く締め付ける感触を覚えて、俺がアイツと婚姻してしまったあり得ない現実を突き付けてくる。
こんなの無効だろ! と必死で授業中に指輪を外そうと奮闘したが、回しても指先が滑るだけだし、上下に動かそうとしても微動だにしない。そんな俺の様子を圭次郎は隣でほくそ笑みながら観察していた。
「ずっと観察して楽しんでた俺への仕返しかよ……性格悪ぃ……」
あのキレイで性悪な笑みを浮かべた圭次郎の顔を思い出した途端、沸々と怒りが湧いて俺は顔を引きつらせる。
巻き込むだけ巻き込んだクセに……後で説明するって自分で言っておきながら、休み時間も放課後もどこかに行っちまって話ができないって……うう、状況が謎過ぎて胸がモヤモヤする……っ。
視線を指輪から窓に移してみれば、百谷家の庭が光っていない。いつもならこの時間に光っているのに……もしかして誰も帰っていない? 俺を巻き込んじまった挙句に結婚なんかしちまったから、大騒ぎになってたりして――。
「……スゲーややこしいことになってそうだな……面倒クセー」
自室にいる安堵感で、あれこれ浮かぶ本音を漏らしていると、
「それについては同感だな。誰も俺には逆らえないクセに、自分たちの考えと違うだけで必死にケチをつけてくる……相手にするのは面倒極まりない」
いきなり圭次郎の声が聞こえて、俺はベッドから飛び起きる。
するといつの間にか圭次郎が俺の勉強椅子に腰かけ、脚を組み、わずかに微笑みながら俺を見つめていた。黒のハイネックにジーンズというシンプルな格好がコイツの無駄に整ったツラを際立たせていて、驚きと同時にちょっとムカつく。
「も、も、百谷ぁ……?! どこから入ったんだよ?!」
「成り行きとはいえ婚姻関係を結んだからな。自由に部屋を行き来できるよう、空間を繋げさせてもらった」
ニッと歯を見せてから圭次郎が窓を指差す――フワ……と光のモヤが現れ、その向こうに簡素な部屋が薄っすらと見える。
王子様で顔も派手なのに、部屋は地味なんだなあ……なんて現実逃避でぼんやりと考えてから、俺はハッと我に返った。
「勝手に人の部屋を不思議工事するなよっ! あと断りもなく入って来るな! お前の世界にはプライバシーっていう概念はないのか?!」
「世界は違えど、夫婦になればプライバシーはいくらか共有するものではないか?」
「そ、それはお互いの同意があって成り立つモンだろ?! 少なくとも俺はこの結婚に同意してないからな!」
グッと左手を硬く握り込んで俺は熱く訴える。でも圭次郎は妙に落ち着いたままだ。
「まあ俺たちの場合、俺が望めばそれがすべてになるからな……まあ諦めろ、としか言えんな」
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「こっちの人間がいない時はケイロと呼べ。俺の本来の名だ。それと、ようやく時間が作れたから、この俺がわざわざ足を運んで事情を説明しに来てやったんだ。ありがたく思いながら清聴しろ」
どこまでも偉そうな態度に腹は立ったが、いったいどうなっているのか詳しい話は聞きたい。俺は苛立ちをぶつけたい気持ちをグッと堪え、開けば文句と責めの言葉しか出なさそうな唇を硬く閉じた。
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