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第一話 気になるお隣さんをウォッチング
知るほどに稀有な生態
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◇ ◇ ◇
一緒に昼メシを食べるようになってから、ほんの少しだけ圭次郎の態度が丸くなった。
朝の登校時に家から出るタイミングが被ると、特に示し合わせた訳でもなく自然と俺の隣に並んで、学校までそのまま行くようになった。圭次郎からはほぼ話しかけず、無言に耐えかねて俺が話題を振ったら、ちょっとだけ話す程度。
他のヤツなら苦痛でしかないけれど、コイツを観察することが今一番アツくて面白い俺にとっては楽しみでしかなかった。
学校でもブレない王子様キャラに、授業中の奇行。
そして夜になれば何度も庭をぼんやりと光らせた中、百谷兄弟勢ぞろいで見事なコスプレをしながら寸劇の練習――内容が気になって、一度こっそり外に出て庭の草木の隙間から覗きながら盗み聞きをしたら、
『なぜまだ見つからぬ?! ひとつの国をすべて探す訳でもないというのに……っ』
苛立たしそうに声を荒げる圭次郎に、芦太郎先生と宗三郎先生が跪いて口々に『申し訳ありません!』『手は尽くしているのですが……』と謝り倒すという修羅場だった。そして、
『……まあ俺の精霊も見つけられずに嘆いているほどだからな。それだけアイツは厄介だ……これからも全力で探せ、アシュナム、ソーア』
『『仰せのままに、ケイロ様』』
やっぱり圭次郎のほうが偉い設定だったのか……しかも呼び名までしっかり変えてやがる。ケイロにアシュナムにソーア……全員元の名前をもじってるのか。てっきり既存のゲームかアニメかのキャラをコスプレしていると思ってたけど、まさかのオリジナル。
俺、そっちの世界はそんなに詳しくないけれど、百谷一家がコスプレイヤーの中でもコアな部類なのは理解できる。本当にスゲーな……お隣さんがこんなファンタジーだと、スマホでゲームする時間すらないな。あと勉強も。
――ということで、俺の中間テストはボロボロだった。
しかし夜は熱いコスプレごっこ、昼間は熱心に練習という俺以上に勉強していないハズの圭次郎は学年一位。
顔だけじゃなくて頭も良いのか……なんか解せない。
どうしてそんな点数が取れるんだよ、と登校中に圭次郎へ恨み節をぶつけてみたら、それはもう愉快でたまらないと言わんばかりな不敵な笑みを浮かべて俺に答えてくれた。
「俺は誰かに後れを取ってしまうことが耐えられんからな。ここへ来る前に、学び舎で使う書物の内容をすべて頭へ叩き込んできた」
……つまり転校してくる前に、全教科書丸暗記してきたってことか。
すごいな、と心から驚くと同時に俺の頭へ飛来したのは……何かと天才は紙一重なんだなあ、というモヤっとしたものだった。
あと、何気に引っ越してきて初めて圭次郎の笑顔を見てしまって、うっかりドキッとしてしまった。
学校どころか家ですら笑っている気配がないヤツなのに。
誰にも気を許さない孤高の獣が俺にだけ懐いてくれたような気がして、ちょっとだけ嬉しかった。
一緒に昼メシを食べるようになってから、ほんの少しだけ圭次郎の態度が丸くなった。
朝の登校時に家から出るタイミングが被ると、特に示し合わせた訳でもなく自然と俺の隣に並んで、学校までそのまま行くようになった。圭次郎からはほぼ話しかけず、無言に耐えかねて俺が話題を振ったら、ちょっとだけ話す程度。
他のヤツなら苦痛でしかないけれど、コイツを観察することが今一番アツくて面白い俺にとっては楽しみでしかなかった。
学校でもブレない王子様キャラに、授業中の奇行。
そして夜になれば何度も庭をぼんやりと光らせた中、百谷兄弟勢ぞろいで見事なコスプレをしながら寸劇の練習――内容が気になって、一度こっそり外に出て庭の草木の隙間から覗きながら盗み聞きをしたら、
『なぜまだ見つからぬ?! ひとつの国をすべて探す訳でもないというのに……っ』
苛立たしそうに声を荒げる圭次郎に、芦太郎先生と宗三郎先生が跪いて口々に『申し訳ありません!』『手は尽くしているのですが……』と謝り倒すという修羅場だった。そして、
『……まあ俺の精霊も見つけられずに嘆いているほどだからな。それだけアイツは厄介だ……これからも全力で探せ、アシュナム、ソーア』
『『仰せのままに、ケイロ様』』
やっぱり圭次郎のほうが偉い設定だったのか……しかも呼び名までしっかり変えてやがる。ケイロにアシュナムにソーア……全員元の名前をもじってるのか。てっきり既存のゲームかアニメかのキャラをコスプレしていると思ってたけど、まさかのオリジナル。
俺、そっちの世界はそんなに詳しくないけれど、百谷一家がコスプレイヤーの中でもコアな部類なのは理解できる。本当にスゲーな……お隣さんがこんなファンタジーだと、スマホでゲームする時間すらないな。あと勉強も。
――ということで、俺の中間テストはボロボロだった。
しかし夜は熱いコスプレごっこ、昼間は熱心に練習という俺以上に勉強していないハズの圭次郎は学年一位。
顔だけじゃなくて頭も良いのか……なんか解せない。
どうしてそんな点数が取れるんだよ、と登校中に圭次郎へ恨み節をぶつけてみたら、それはもう愉快でたまらないと言わんばかりな不敵な笑みを浮かべて俺に答えてくれた。
「俺は誰かに後れを取ってしまうことが耐えられんからな。ここへ来る前に、学び舎で使う書物の内容をすべて頭へ叩き込んできた」
……つまり転校してくる前に、全教科書丸暗記してきたってことか。
すごいな、と心から驚くと同時に俺の頭へ飛来したのは……何かと天才は紙一重なんだなあ、というモヤっとしたものだった。
あと、何気に引っ越してきて初めて圭次郎の笑顔を見てしまって、うっかりドキッとしてしまった。
学校どころか家ですら笑っている気配がないヤツなのに。
誰にも気を許さない孤高の獣が俺にだけ懐いてくれたような気がして、ちょっとだけ嬉しかった。
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