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四章 そして彼は愛を知る

●奪い奪われる喜び

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 すぐに部屋の隅にある寝台へ俺を座らせると、ミカルは首を傾け、俺の頭を抱き寄せながら飢えた牙を導く。

「どうぞ、いつでも口にして下さい。私はカナイのすべてを捕らえますから、貴方も私を好きなだけ堕として下さい……永遠に、囚われたい」

 なんて言葉だ。
 俺へ理不尽になれと告げているようで、顔が緩みそうになる。

 他の誰かに奪われることを覚え、嫌悪しながら生きてきた男が、俺にだけ奪うことを許す。
 それがどれだけ特別なことか、俺には痛いほどよく分かる。

 だから俺もミカルに奪われてもいい、と心の底から思う。

 ついさっき唇で味わった極上の甘露を思い出しながら、俺はミカルの首へ牙を刺す。

 ――場所が違うせいだろうか。血の味がより濃く感じる。
 甘みもバラの香りもより強まり、吸うほどに俺の中を駆け巡り、その香りを俺も宿してしまいそうなほどの濃さだ。

 しかし不快ではない。むしろ心地良く酔いしれる。
 魔の者にとって毒であり、弱体化を促すはずのバラの香気を取り込んでいるというのに、むしろ体に力がみなぎっていく。

 いつもより飢えているはずなのに、少量の吸血で満たされてしまった。
 そして口は血の糧よりもミカルの唇を欲し、衝動のまま口づけを交わす。

 こんなに簡単に、好きなだけミカルを奪える。
 我を失いながら唇を貪る俺の肌を、ミカルは緩やかに撫で回して煽り続ける。

 もっと激しく扱って欲しいのに優しいままで、快楽を覚えながらも心が恨めしさを抱いてしまう。

 口で言うのは恥ずかしくて、俺はもう一度ミカルの首に甘くかじりつき、本能を剥き出しにした熱くそそり立つものへ手を運ぶ。

 軽く握って先端を親指で弄ってやれば、「ぅ……」とミカルが悩ましげに唸り、ビクンッと体を跳ねさせる。

 俺で感じてくれる手応えに胸が躍ってしまう。
 こんなに俺から奪われて喜ぶなんて――もっと奪ってやりたい。何もかも俺だけで埋め尽くしてしまいたい。

 奪うという行為に嫌悪し続けていたというのに。これほど奪うことが心地よく、嬉々と感じる日が来るなんて思いもしなかった。

 昂る体と心のままに、俺の唇はあり得ないと思い続けていた言葉を自然に紡いでいた。

「ミカル……愛してる……」

 唇の先を掠れ合わせながら伝えた俺からの告白に、ミカルが息を引く。

 そして勢いよく俺の唇を喰らったかと思えば寝台へ押し倒し、本能のままに俺を貪り出した。

「あっ……ミカ、ル……ぅ……ッ……は……っ……」

 俺の首筋や胸元のあちこちにミカルはきつく吸いつき、己の痕跡をしっかりと刻んでくる。

 手は腰を弄り、双丘の谷間へ指を這わせ、中へ捻じ込めるかを確かめてくる。
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