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●終章 愛され将軍、分からせられる
●初恋の人なら、尚のこと
しおりを挟むエリクの手によって、ガイはシャワー室で身を清められ、体を拭く大きなタオルで包まれ、寝室に連れて行かれる。
ベッドに引っ張り込まれれば、エリクのなすがままにガイは押し倒される。
そのままがっつかれて最後までいくかと思ったが、エリクはガイのタオルを開けさせ、上に被さりはしたが、ジッと舐め回すように体を見るばかりだった。
もう何度も抱かれ、エリクには体を知り尽くされている。
しかもついさっきシャワー室で丹念に体を洗われ、中のほうまで清められた。改まって見るものではない。
気恥ずかしさで全身が熱くなり、思わずガイは身を捩り、目を逸らす。
ハァ、と。エリクからうっとりしたため息が溢れた。
「いけませんね……ガイ様のお顔も体も、どれだけでも見入ってしまいます。年を重ねられた凛々しく精悍なお顔が、私の視線で恥じらうなんて……気を抜いたら即鼻血ですよ」
「これだけで!? まだ何も始まっていないのに……」
「私の目には、恐ろしいほど蠱惑的にしか見えませんよ。それに、ここ――」
ゆっくりとエリクが身を倒し、ガイに顔を近づけていく。
それからおもむろに、ガイの頬をそっと撫でた。
「私を意識して、赤く色づいて……可愛いです。歴戦の英雄に向かって使う言葉ではないとは思いますが、初々しくて……ああ、言ってる傍から照れてしまわれて……ほら、耳まで色付きましたよ」
頬を撫でる手がガイの耳へと移り、指先で戯れる。
ゾクゾク、とこそばゆさにガイは肩をすくめ、目を硬く閉じてしまう。
全身をくまなくエリクに触れられたことがあるというのに、口に出され、そこに触られると意識してガイの体が過敏に反応する。
チュッ、と耳に口づけを与えた後、エリクは頭や額にも唇を落としてく。
「ガイ様、唇のキスもお好きですが、キスならどこでも喜びますよね? 一回、一回、体が跳ねて、もっとして欲しそうに瞼と唇が薄く開いて、私を誘う……なんていじらしい」
「……っ、お、俺は、そんなこと……ンッ……ぁ……」
首筋に吸い付かれ、思わずガイは反応してしまう。
ギュッと閉じて、うっすら開く。言われた通りになってしまうガイの唇を、エリクが親指で甘やかになぞる。
「ほら……誘ってる。好きな方にそんな顔をされて、昂らないものなどいませんよ。ましてや初恋の人なら、尚のこと……」
「初、恋……?」
「六歳の頃から恋に落ちて、一途にガイ様を想っていました。こうしてガイ様と結ばれるなんて、人生最高の幸運としか言えません」
そんな昔から?
物心つくような年齢で、こんな屈強な体を持った男を好きになるとは……幼い頃からエリクはおかしかったのか。
恍惚の表情を浮かべるエリクを、ガイは未知のものを見る目で見つめる。
不意に視線が合うと、エリクはガイの手を取り、指に口づけた。
「あの日、私に振ってくれた手……最強の英雄が、優しい顔を私に見せてくれた……恋に落ちるのは、それだけで十分でしょう」
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