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●終章 愛され将軍、分からせられる

●家に到着して

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   ◇ ◇ ◇

 ロジーの背に乗りながら、ガイは不穏な会話を聞いていた。

「家に帰った後ですが、二、三日ほど離れて頂いても大丈夫ですかロジー?」

《イヤだー……っていいたいけど、いいよーパパ。うみのママのところにいって、おはなししてくるから》

「元気な姿を見せてあげて下さい。そのまま帰ってくるのが伸びても構いませんから」

《うーん、かんがえておくよ。ボク、ちゃんとわかってるから》

「いい子ですねロジー。本当に賢い子です」

 自分がいない間にこんなに仲良くなって……とガイは嬉しく思う。ただ、

「二度とこんなことが起きないよう、ガイ様に分かって頂かないといけませんから」

 ガイの背後に乗っていたエリクが、爽やかに笑いながらハッキリと言う。

 ――振り向いてその顔を見ることはできなかったが、ガイの背後から腹部に回されたエリクの腕に力が入り、絶対に逃さないと告げられた気がした。



 まだ子供でも神竜の羽ばたきは風よりも速く、一日も経たずしてヨルリア山脈のふもとの家に到着した。

《じゃあねーパパ。ママをよろしくー》

 二人が降りてすぐにそう言い残し、ロジーは山のほうへと飛び去ってしまう。

 それまで笑顔だったエリクが、スッと真顔になり、ガイの腕を引いて家に入っていく。

 バタン、と扉を閉じた直後――ガイの唇がエリクに性急に奪われた。

「ン……っ、んン……ぁ……」

 歯をこじ開けられての舌の睦み合いに、ガイの全身が力を失う。
 深い口付けが始まれば、その後は何が待っているか――結婚の誓いを交わしてから、連日のように教えられてしまった体は、早々にエリクを受け入れようと準備を始める。

 息が苦しくなり、ガイが一旦唇を離そうとした時。
 逃げるなと言わんばかりにエリクに両頬を手で挟まれ、口内で生まれる甘い痺れをたっぷりと与えてくる。

 魔王の元に向かってからここに戻ってくるまで、一日を少し過ぎた程度。
 実質エリクと離れていたのは一日あるかどうか。それでもキスが久しぶりに感じて、戻ってきたのだという安堵がガイを満たしていく。

 ようやく息継ぎにエリクが唇をわずかに離してくれたが、頬を挟む手はガイを解放しなかった。

「……ガイ様、私から離れようとしないで下さい。私がどれだけガイ様を求めていたか……ようやく手にできて、どれだけ幸せを噛み締めていたか……」

「エリク……すまない。だが――」

「どうかお覚悟を。これから私がどれだけガイ様を愛し、求めているか……教えて差し上げますから」

 間近で見つめてくるエリクの目は、闘技場に集った者たちの中で一番熱く、甘くガイを捕らえていた。

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