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六章 嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんだと知る

ガイを取り囲んでいた者たちの本音

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   ◇ ◇ ◇

 翌日、朝食を終えてからすぐに闘技大会は再開された。

 ベルリムからは、初日で魔物たちにガイの顔見せができたから、優勝者を決める試合になるまで自由だと言われていた。

 しかし、人の意向を完全に無視して行われていることとはいえ、戦う理由が自分のためだからと、ガイは戦いを見届ける道を選んだ。

 まだ魔王の提案を受け入れていないが、武人として戦う彼らのことを尊重したい。

 そんなガイの態度は、魔物たちのやる気をますます高めることになった。

「我が配下たちが喜んでおるよ。本当にそなたは我らの心をくすぐるのが上手いものだ」

 隣で観戦するベルリムが嬉しげに呟き、艶のある視線を流してくる。

 種族の違いを痛感しながら、ガイは悩ましげに首を振る。

「すまないが、そんな気は一切ない……俺が何をしても喜ばれてしまいそうだ」

「そなたがそなたの考えで動けば、それが我らの喜びとなる。我が領域では何も我慢せずとも良い。あるがままに居てさえくれれば、我が心は歓喜に満ちる」

 昨夜話をしたせいか、ベルリムが本音を覗かせる。

 自分が負けるとは思っていない、溢れ出る自信。
 しかし純粋な力で言えば、自分のほうが上だとガイは思う。

(……俺が本気でここを去ろうとする、とは考えないのか?)

 そんな考えがふとよぎる。
 だがエリクたちのことが脳裏に浮かぶと、足に足枷でもついたような重みを覚えてしまう。

 家に戻りたい。
 エリクとロジーに会いたい。

 君をもっと知って、君と同じ気持ちで愛したい。

 帰りたくてたまらないが、それでエリクたちを不幸にしてしまうなら――。

 胸の奥が翳っていくのをガイが感じていた、その時。

「ベルリム様! 人間どもの軍が攻めてきました!」

 入場口から濁った声が聞こえ、ガイは目を向ける。豚のような巨躯の魔物、オークだ。
 試合に沸いていた魔物も、好意的に接していたベルリムも、すぐに臨戦の気配に切り替わる。

 その場からベルリムは立ち上がると、威厳ある声を張り上げた。

「身の程知らずな……どこの国の軍だ?」

「レアランダとサグニアの合同軍です! 転移魔法を駆使し、兵たちを順にこちらへ送っている模様。軍を率いているのはレアランタ国王。名将ゲイン、元ガイ将軍副将ウーゴの姿も確認しております」

 オークの報告に、ガイの血の気が引いた。
 
「陛下自ら……!? そんな、なぜ……」

 自分が出向いたことで、イヴァン王はすぐ解放したとベルリムに教えてもらった。

 冷遇していた将が魔王に捕らわれた。
 目障りならば放っておけばいい。民衆の目を気にするなら、他の将に任せればいい。魔族を相手に王自ら動くなど、愚策としか言えない。しかも本国こら遠く離れた敵地に赴くなど――。

 チラリと、ベルリムがガイに不敵な笑みを向けた。

「教えたであろう? これがあの愚王の――そなたを取り囲んでいた者たちの本音だ」
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