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五章 嫌われ将軍、ママになる
ロジーとの日々
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◇ ◇ ◇
人間の子供を育てたことはないが、ロジーはガイから見て手のかからない子供だった。
まず意思疎通ができる。もうこれだけでありがたかった。
書物で竜の生態は調べて、何を食べるかは多少理解していた。それでも好き嫌いはあり、成竜の当たり前が小竜に当てはまるとは限らず、その点を一番心配していた。
が、ロジーいわく、
《なんでもたべるよー。おなかいっぱいになればいいのー》
と小さな胸を張り、自信満々に言ってくれた。
それはガイたちにとって、肩の力を抜くことができる朗報だった。ただ、
《ママー、たべさせてー! ママからじゃないとイヤなのー》
ロジーは筋金入りの甘えん坊だった。
食事の時も、遊ぶ時も、昼寝の時も、ガイと一緒にいたがった。
体をくっつけていないと気が済まないらしく、ガイが動いて少しでも離れると、すかさずピトッとしてくる。
とにかくガイから離れなかった。
自分は体力があるから大丈夫だが、世の母親は苦労しているな……とガイは思わずにいられなかった。
そしてガイがロジーに付きっきりなため、他のことはすべてエリクがこなしてくれた。
まったく離れる気配のないロジーを、それはもう恨めしそうに見ながら、
「そんなに甘えたがりでは、いつまで経っても子供のままですね」
と何かしら言ってくる。同じ場所にいると必ずだ。
しかしロジーはロジーで負けん気が強く、
《だってボク、こどもたよ。あまえるのがしごとだもん。ねー、ママ。おとなのパパにはひつようないよね》
一言余計に言ってエリクを煽る。なぜ生まれて間もないのに、ここまで言い返すことができるのか、ガイは不思議に思いつつも感心していた。
日が昇っている間は、ロジーに構い通し。
そして日が完全に沈むと、それまで元気いっぱいに動いていてもロジーは寝てしまう。
満足しきった顔で寝入るロジーを、ガイは微笑ましく思いながら、寝床用に購入したパンかごに寝かせる。
これでようやく一日が終わる――と思いきや、
「……ガイ様」
背後からエリクが抱擁し、ガイのうなじに熱い吐息をかけてくる。
「次は私の番です……ずっと我慢していたんです。かまって下さい」
本当の子供を相手にした後は、大きな子供を相手にしなくてはいけない。
生まれ立ての子に対抗するんじゃない。もう少し大人になってくれ。
色々と言いたいことはあったが、ギュッと抱き締めてくるエリクの腕が、切望をガイに伝えてくる。
「……夕食とシャワーの後だ」
それぐらいは我慢してくれ、という思いを込めてエリクの頭を撫でれば、キスの返事が返ってくる。
ガイたちの日常は、こうして当たり前になっていった。
人間の子供を育てたことはないが、ロジーはガイから見て手のかからない子供だった。
まず意思疎通ができる。もうこれだけでありがたかった。
書物で竜の生態は調べて、何を食べるかは多少理解していた。それでも好き嫌いはあり、成竜の当たり前が小竜に当てはまるとは限らず、その点を一番心配していた。
が、ロジーいわく、
《なんでもたべるよー。おなかいっぱいになればいいのー》
と小さな胸を張り、自信満々に言ってくれた。
それはガイたちにとって、肩の力を抜くことができる朗報だった。ただ、
《ママー、たべさせてー! ママからじゃないとイヤなのー》
ロジーは筋金入りの甘えん坊だった。
食事の時も、遊ぶ時も、昼寝の時も、ガイと一緒にいたがった。
体をくっつけていないと気が済まないらしく、ガイが動いて少しでも離れると、すかさずピトッとしてくる。
とにかくガイから離れなかった。
自分は体力があるから大丈夫だが、世の母親は苦労しているな……とガイは思わずにいられなかった。
そしてガイがロジーに付きっきりなため、他のことはすべてエリクがこなしてくれた。
まったく離れる気配のないロジーを、それはもう恨めしそうに見ながら、
「そんなに甘えたがりでは、いつまで経っても子供のままですね」
と何かしら言ってくる。同じ場所にいると必ずだ。
しかしロジーはロジーで負けん気が強く、
《だってボク、こどもたよ。あまえるのがしごとだもん。ねー、ママ。おとなのパパにはひつようないよね》
一言余計に言ってエリクを煽る。なぜ生まれて間もないのに、ここまで言い返すことができるのか、ガイは不思議に思いつつも感心していた。
日が昇っている間は、ロジーに構い通し。
そして日が完全に沈むと、それまで元気いっぱいに動いていてもロジーは寝てしまう。
満足しきった顔で寝入るロジーを、ガイは微笑ましく思いながら、寝床用に購入したパンかごに寝かせる。
これでようやく一日が終わる――と思いきや、
「……ガイ様」
背後からエリクが抱擁し、ガイのうなじに熱い吐息をかけてくる。
「次は私の番です……ずっと我慢していたんです。かまって下さい」
本当の子供を相手にした後は、大きな子供を相手にしなくてはいけない。
生まれ立ての子に対抗するんじゃない。もう少し大人になってくれ。
色々と言いたいことはあったが、ギュッと抱き締めてくるエリクの腕が、切望をガイに伝えてくる。
「……夕食とシャワーの後だ」
それぐらいは我慢してくれ、という思いを込めてエリクの頭を撫でれば、キスの返事が返ってくる。
ガイたちの日常は、こうして当たり前になっていった。
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