59 / 100
五章 嫌われ将軍、ママになる
●憂いなく欲しいままに望むことが許される相手
しおりを挟む
「ん……ッ……」
唇に伝わる柔らかさと熱が、ガイの頭の奥まで甘く痺れさせる。
キスはこれが初めてではないのに、今までで一番意識を奪われる。
ここは自分たちの家で、周りには誰もいない。
エリクは誓いを立ててくれるほど、自分を求めている。
だから完全に気を許して身を委ねてもいい――すんなりとそう思えてしまう下準備を、エリクはずっと進めていたことをガイは思い知る。
そして、これがエリクの本心だと信じられる。
他に何か狙いがある訳でも、一度関係を持てばいいという軽薄なものでもない。
なんの憂いもなく、欲しいままに望むことが許される相手。
これまで生きてきた中で、そんな存在を自分が手に入れられた。
どちらともなく深く睦み合わせる口づけを交わしながら、ガイは少しずつそれを実感していく。
舌を絡ませながら、エリクがガイの頭を撫で、その手を背中に下ろし、そっと抱き寄せる。
軽く突き飛ばせば呆気なく解けるほどの、優しい抱擁。
今のガイには、それが身も心も、魂すらも捕らえて離さない強固なものに思えてならなかった。
「……っ……ぁ……」
もっとキスを味わいたいところで、エリクがわずかに唇を離す。
思わずもどかしげな声を零したガイを、エリクは目を蕩かせ、熱く見つめながら微笑む。
「フフ……少し唇へのキスはおあずけです。ガイ様、我慢できますか?」
不意の問いかけに、つい小さくガイは頷く。
自分のほうが遥かに年上だというのに、こういう時は年が逆転したように感じてならない。
こみ上げる羞恥心に目を逸らしていると、エリクの唇はガイの首筋に落とされる。
優しく吸われ、歯を立てられ――今までよりもゆっくりと細やかに身を奪われて、思わずガイは身を震わせる。
「こうやって、全身に口付ける気なのか……?」
「駄目ですか?」
「……ほどほどにして欲しい……っ……体が、もたない……」
エリクから与えられる刺激のすべてに、体が翻弄される。
あまり時間をかけられたら、最後まで応えきれずに意識を手放してしまう。他の日ならまだしも、今日だけは避けたかった。
ガイはエリクの首に腕を巻き、一緒にベッドに倒れ込む。
そして思わぬ動きに目を丸くしたエリクに、ガイはキスをひとつ与えた。
「君も同じではないのか? 我慢し過ぎて鼻血で中断……は、いけないだろ。特に今夜は……」
「……同じですが……あまり、煽らないで下さい。これでも余裕がないんです」
「そうなのか? 俺よりも余裕があるように見えるが……」
「ありませんよ。ほら――」
唇に伝わる柔らかさと熱が、ガイの頭の奥まで甘く痺れさせる。
キスはこれが初めてではないのに、今までで一番意識を奪われる。
ここは自分たちの家で、周りには誰もいない。
エリクは誓いを立ててくれるほど、自分を求めている。
だから完全に気を許して身を委ねてもいい――すんなりとそう思えてしまう下準備を、エリクはずっと進めていたことをガイは思い知る。
そして、これがエリクの本心だと信じられる。
他に何か狙いがある訳でも、一度関係を持てばいいという軽薄なものでもない。
なんの憂いもなく、欲しいままに望むことが許される相手。
これまで生きてきた中で、そんな存在を自分が手に入れられた。
どちらともなく深く睦み合わせる口づけを交わしながら、ガイは少しずつそれを実感していく。
舌を絡ませながら、エリクがガイの頭を撫で、その手を背中に下ろし、そっと抱き寄せる。
軽く突き飛ばせば呆気なく解けるほどの、優しい抱擁。
今のガイには、それが身も心も、魂すらも捕らえて離さない強固なものに思えてならなかった。
「……っ……ぁ……」
もっとキスを味わいたいところで、エリクがわずかに唇を離す。
思わずもどかしげな声を零したガイを、エリクは目を蕩かせ、熱く見つめながら微笑む。
「フフ……少し唇へのキスはおあずけです。ガイ様、我慢できますか?」
不意の問いかけに、つい小さくガイは頷く。
自分のほうが遥かに年上だというのに、こういう時は年が逆転したように感じてならない。
こみ上げる羞恥心に目を逸らしていると、エリクの唇はガイの首筋に落とされる。
優しく吸われ、歯を立てられ――今までよりもゆっくりと細やかに身を奪われて、思わずガイは身を震わせる。
「こうやって、全身に口付ける気なのか……?」
「駄目ですか?」
「……ほどほどにして欲しい……っ……体が、もたない……」
エリクから与えられる刺激のすべてに、体が翻弄される。
あまり時間をかけられたら、最後まで応えきれずに意識を手放してしまう。他の日ならまだしも、今日だけは避けたかった。
ガイはエリクの首に腕を巻き、一緒にベッドに倒れ込む。
そして思わぬ動きに目を丸くしたエリクに、ガイはキスをひとつ与えた。
「君も同じではないのか? 我慢し過ぎて鼻血で中断……は、いけないだろ。特に今夜は……」
「……同じですが……あまり、煽らないで下さい。これでも余裕がないんです」
「そうなのか? 俺よりも余裕があるように見えるが……」
「ありませんよ。ほら――」
184
お気に入りに追加
573
あなたにおすすめの小説
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる