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幕間四 現王は真実を秘める(イヴァン王視点)
エリク許すまじ――と謎の声
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英雄が帰還しても今までの態度は変えられない。
しかし、これだけ冷遇しても王命に応えようとするガイの忠義は素直に受け取り、帰還を祝いたいと思う。
だが簡潔で分かりやすい報告を目で追っていく内に、イヴァン王の胸がざわついた。
(神竜の卵を預かり、成竜まで育てることになった? 山脈のふもとの町に家を構え、旅の供をしたエリク・マレーロと住みながら、育て……住む? エリクとかいう輩と?!)
バッと勢いよく顔を上げると、イヴァン王は動揺を露わにしたままウーゴに尋ねていた。
「ウ、ウーゴよ、エリクとは何者だ?」
「……ガイ将軍が旅立ったその日に軍を退役した、我が国随一のガイ将軍崇拝者です」
あの鉄扉面なウーゴの眉間に皺が寄り、目を細めながら釣り上げ、腹立たしさと殺気がダダ漏れになる。
つまりエリクという元兵士は、ウーゴたち親衛隊を出し抜き、ガイと二人きりで邪竜討伐の旅をした挙げ句、一緒に神竜の子を育てながら住もうとしているということ。
――エリク、許すまじ。
絶対に手を出すことができぬ身であると分かっていても、誰かがガイの隣に並ぶなど腹立たしさこの上ない。
イヴァン王は思わず机の引き出しから紙を取り出し、羽根ペンを握り、素早く字を綴っていく。
「今からガイに、至急こちらに戻れと命ずる。神竜の子は我が国で育てればいい。そんな下心丸出しの狂信者と一緒に暮らすなど、もってのほかだ!」
「へ、陛下……?」
「昔からガイは無防備なのだ! あれだけ周りに近づかれても気づかず、鈍いくせに人の機微にはよく気づいて心を鷲掴みにしてくる。それでどれだけの者が振り回されてきたことか……っ」
本音が止まらなくなってしまったイヴァン王を目の当たりにして、ウーゴは一瞬戸惑う。
そして自分と同じものをすぐに感じ取り、即座に悟る。
イヴァン王も同類であり、ガイへの冷遇は自分たちと通じるものがあることを。
「まさか陛下もこちら側のお人でしたか」
「……」
「陛下のお気持ち、このウーゴ、痛いほどよく分かります」
「……そうであろうな。近い内に時間は取れるか? 今までの弁明と懺悔をさせてくれ」
「喜んで。その際には我々のこれまでの活動も共有させて頂きます」
「うむ、一回では済まぬであろう。定期的に話を聞かせてくれ」
「はっ、仰せのままに」
互いに同志であり、同じ腹立たしさを有することを知り、イヴァン王とウーゴの間で妙な一体感が生まれる。
誰か一人に奪われるくらいなら、徒党を組んででも不埒な者の手から守らねば――そんな思いにイヴァン王が駆られていると、
「欲しいならば、さっさと奪えばいいものを」
どこからともなく、低い声が聞こえてくる。
イヴァン王とウーゴが辺りを見渡していると――大きく翼を広げた影が、イヴァン王に被さった。
しかし、これだけ冷遇しても王命に応えようとするガイの忠義は素直に受け取り、帰還を祝いたいと思う。
だが簡潔で分かりやすい報告を目で追っていく内に、イヴァン王の胸がざわついた。
(神竜の卵を預かり、成竜まで育てることになった? 山脈のふもとの町に家を構え、旅の供をしたエリク・マレーロと住みながら、育て……住む? エリクとかいう輩と?!)
バッと勢いよく顔を上げると、イヴァン王は動揺を露わにしたままウーゴに尋ねていた。
「ウ、ウーゴよ、エリクとは何者だ?」
「……ガイ将軍が旅立ったその日に軍を退役した、我が国随一のガイ将軍崇拝者です」
あの鉄扉面なウーゴの眉間に皺が寄り、目を細めながら釣り上げ、腹立たしさと殺気がダダ漏れになる。
つまりエリクという元兵士は、ウーゴたち親衛隊を出し抜き、ガイと二人きりで邪竜討伐の旅をした挙げ句、一緒に神竜の子を育てながら住もうとしているということ。
――エリク、許すまじ。
絶対に手を出すことができぬ身であると分かっていても、誰かがガイの隣に並ぶなど腹立たしさこの上ない。
イヴァン王は思わず机の引き出しから紙を取り出し、羽根ペンを握り、素早く字を綴っていく。
「今からガイに、至急こちらに戻れと命ずる。神竜の子は我が国で育てればいい。そんな下心丸出しの狂信者と一緒に暮らすなど、もってのほかだ!」
「へ、陛下……?」
「昔からガイは無防備なのだ! あれだけ周りに近づかれても気づかず、鈍いくせに人の機微にはよく気づいて心を鷲掴みにしてくる。それでどれだけの者が振り回されてきたことか……っ」
本音が止まらなくなってしまったイヴァン王を目の当たりにして、ウーゴは一瞬戸惑う。
そして自分と同じものをすぐに感じ取り、即座に悟る。
イヴァン王も同類であり、ガイへの冷遇は自分たちと通じるものがあることを。
「まさか陛下もこちら側のお人でしたか」
「……」
「陛下のお気持ち、このウーゴ、痛いほどよく分かります」
「……そうであろうな。近い内に時間は取れるか? 今までの弁明と懺悔をさせてくれ」
「喜んで。その際には我々のこれまでの活動も共有させて頂きます」
「うむ、一回では済まぬであろう。定期的に話を聞かせてくれ」
「はっ、仰せのままに」
互いに同志であり、同じ腹立たしさを有することを知り、イヴァン王とウーゴの間で妙な一体感が生まれる。
誰か一人に奪われるくらいなら、徒党を組んででも不埒な者の手から守らねば――そんな思いにイヴァン王が駆られていると、
「欲しいならば、さっさと奪えばいいものを」
どこからともなく、低い声が聞こえてくる。
イヴァン王とウーゴが辺りを見渡していると――大きく翼を広げた影が、イヴァン王に被さった。
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