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四章 嫌われ将軍と嫌われ邪竜

エリクの指摘

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   ◇ ◇ ◇

「ガイ様……本当にそれを育てるのですか?」

 邪竜と別れて近くの町で宿を取り、部屋に入って開口一番にエリクが尋ねてくる。

 懐から卵を取り出し、冷えぬようにそっと手で包み込みながらガイは頷く。

「ああ、神竜と約束したからな。無事に孵して育てようと思う」

 種族は違えど、我が子が大切なのは変わりない。そんな命を預けられたのだから、責任を持って育てなければとガイが心を引き締めていると、

「はぁ……これを言えばガイ様を追い詰めてしまうと分かっていますが、敢えて言わさせて頂きます」

 ため息混じりにエリクが険しい表情で話しかけてくる。旅に出る前はよく見ていた顔だが、最近はまったくなかった久しい表情。

 なぜそんな厳しい顔をしている? とガイが首を傾げていると、息をついてからエリクが問いかけてきた。

「今のままでは『邪竜討伐』という王命を果たせぬことになりますが、よろしいのですか?」

「そ、それは……暴れていたのは偽物で、そっちは討伐した。もう一匹は神竜で、そもそも邪竜ではない。事実を報告すれば――」

「多くの人々が邪竜と誤解している中、ガイ様の報告を素直に受け取り、信じてくれる人はどれだけいるでしょうか? ましてやガイ様を冷遇されている陛下が、好意的に報告を聞いて下さるでしょうか?」

 鋭い目をさせながらエリクに迫られ、ガイはつい後ずさってしまう。

 真実を伝えれば分かってくれると思えるほど、ガイは若くなかった。

 口ではどうとでも言えてしまう。結果で見せなければ、誰も嫌われている自分の言葉を信じてはくれない。

 偽の邪竜については、倒したガーゴイルから斬り取った角を見せれば、どうにか分かってくれるかもしれない。しかし、もう一匹の黒い竜は生きている。倒した証を持たない上に、目撃例が出てくれば、嘘をついたと思われる。

 王命に対して虚偽で応えた――そうなれば英雄の肩書きは奪われ、王を欺いた罪で処刑されても文句は言えない。

 頭のどこかでは考えていたこと。
 それをハッキリとエリクに言われ、現実を突きつけられたが、それでもガイの答えは変わらなかった。

「ひとまずイヴァン陛下に書状を送る。俺は新たな生命を委ねられた以上、必ず育て上げてみせる」

 腹を括ったガイに迷いはなかった。しかし、

「ガイ様の覚悟は分かりましたが、別の懸念点が……竜が成長するのに、どれだけかかるのでしょうか?」

「そ、それは……」

「私も詳しくは知りませんが、伝承によれば何百年、何千年と生きるとも言われています。そんな竜が大人になるまで、何年世話をする気ですか?」

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