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四章 嫌われ将軍と嫌われ邪竜

二匹目の邪竜を探して

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   ◇ ◇ ◇

 二匹目の邪竜を探して、ガイとエリクはヨルリア山脈内を歩き回った。

 数少ない山腹の村や町で聞き込みをするが、出てくるのは既に倒した一匹目ばかり。稀に二匹目の話を聞くが、いずれも一匹目が暴れていると現れるという話だった。

 派手に暴れていた一匹目の時よりも居場所が掴めず、ガイたちはしらみ潰しに怪しい箇所を調べることにした。

 一匹目のことで分かっているのは、その巨体を寝かせ、自由に出入りできる大きさの洞窟を住処にしていること。

 二匹の邪竜は敵対していたこと。

 まるで狙ったように一匹目の邪竜が暴れていると、後から二匹目が現れ、戦っていたこと。

 山中を歩き回りながら、ガイは予想を口にする。

「二匹目の住処は、一匹目の住処からは離れているが、縄張りが被っている可能性が高い。そう考えれば、過去に被害があった場所の周辺を探していけば、見つかると思う」

 ヨルリア山脈一帯の地図を広げ、歩きながら眺めていたエリクが大きく頷く。

「私もそう思います。目撃された箇所に印をつけてみましたが、いずれも山脈の西側に集中しています。すぐにとはいきませんが、見つけられるのは時間の問題でしょう」

 地図に集中しているエリクの横顔を、ガイはちらりと見やる。

 こういう時は凛々しく格好いいと心から思う。
 それが自分が近づくと奇行多発の鼻血量産男になってしまうのだから、なんとも不思議な生態だと考えずにいられない。

 ふと夜のことが脳裏に浮かび、ガイの芯に熱が灯る。

 どうやらエリクは愛してくれているらしい。
 初めて肌を重ねた日を堺に、宿に着くと遠慮なく体に触れてくるようになった。

 部屋の中で目を合わせるだけでキスされる。
 こちらからも迎えてやれば、ベッドに押し倒される。
 嫌だと突き放さなければ、そのまま愛撫で体を蕩けさせられる。

 これだけやればエリクも落ち着くだろうと思っていたが、一緒に寝ようと身を寄せると、幸せそうな顔をして鼻血を垂れ流してしまう。

 ……まだ何か我慢をしているのだろうか?
 また近い内に我慢は体に良くないと諭さなければ――ガイがそう考えていると、遠方の谷間に洞窟が見えた。

「あんな所に……行くのは大変そうだが、邪竜の住処には丁度良さそうだ。エリク、望遠鏡で見てみてくれ」

 エリクは「はい!」と良い返事をすると、腰に下げていた携帯用の望遠鏡を手にして、件の洞窟を見る。

 しばらくして、エリクが息を引く音がした。

「……いました。邪竜が寝ています」

 念願の報告にガイの戦意が昂ぶる。
 この邪竜を倒せば、王命を果たし、レアランダ王国に戻ることができる。

 手負いとはいえ、侮りはしない。
 必ず倒してみせるとガイが覚悟を決めていると、

「ガイ様……邪竜を倒した後、本当にレアランダに戻られるのですか?」

 不意に振り返ったエリクが、声を重たくして尋ねてきた。
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