嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした

天岸 あおい

文字の大きさ
上 下
43 / 100
四章 嫌われ将軍と嫌われ邪竜

●ここが苦しいのか?

しおりを挟む
 何か言いたいのに、何から言えばいいか判断がつかず口をまごつかせるガイに、再びエリクが唇を重ねてくる。

 初めてのことは何度か経験すれば慣れていくものだが、これは慣れない。
 むしろ回数を重ねるごとに熱と体の疼きが増して、ガイの意識から体が離れて暴走していくようだった。

「んっ……は、ぁ……ん」

 エリクの手は服越しに、ガイの筋肉で盛り上がった胸や、割れた腹筋を撫で愛でていく。

 こそばゆい。なのに、やけに後を引いて「止めろ」と拒めない。
 腰の奥が疼いてもどかしさを覚えて、思わずガイが身を捩れば、エリクが抑え込むように体を被せてくる。

 ギチ、とベッドがしなる。
 エリクの重みでガイの息が詰まる。
 鼓動が速くなるばかりで胸が苦しい。

 それでも嫌悪よりも、その先を知りたい気持ちが勝った。

 唇に隙間が生まれた時、ガイはエリクと目を合わせる。
 熱がさらに込められたエリクの瞳に見つめられ、ふと思ったことがそのままガイの口から溢れた。

「エリク……もしかして、ここが苦しいのか?」

 そっとガイがエリクの胸に手を当てる。
 手の平に小刻みに弾むエリクの鼓動が伝わってきた。

「……はい、ずっと。ガイ様を見るだけで苦しくなるのに、一緒に眠れる日が来てしまって、その度に心の臓が弾け飛びそうになっていました」

「そうか。俺も、いま苦しい。だが嫌じゃない。君もそうなのか?」

「嫌な訳がありません。夢でしかあり得ないことが現実に起きて、触れることを許されてるなんて……」

 はぁ、とエリクが息をつく。
 切なげながら艶めかしい吐息。初めて見るエリクの一面に、ガイの胸が一層騒々しくなる。

 ずっとこんな状態でいたなら、事あるごとに鼻血を出してしまうのも頷ける。
 思わずガイはエリクの頬に手を伸ばし、若く張りのある頬を撫でた。

「我慢しなくていい。君が求めるだけ求めて楽になってくれるなら、俺はそれで嬉しい」

 エリクの目が大きく見開かれる。
 そして、フッと目を細めたその顔は、嬉しげにも悲しげにも見えた。

 エリクがガイの手首をそっと掴み、頬ずりする。

「その言葉、もっと私を知ってから言えるといいのですが……」

 軽くチュッ、と音を鳴らしながらガイの指に口づけた後。
 ガイの首筋に顔を埋め、エリクはほのかに赤く染まった首筋に唇を落とした。

「あ……っ……んん……」

 吸われた感触と吐息が、ガイをさらに追い詰める。
 そうしてシャツをめくられ、胸元や乳首に口づけと舌の愛撫を繰り返され、思わずガイはエリクの頭を抱擁した。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件

深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。 ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが―― その内容がとても信じられないもので… bloveさんにも投稿しております。 完結しました。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

処理中です...