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四章 嫌われ将軍と嫌われ邪竜
●ほんの少しの中身
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突然ガイの視界がエリクの顔だけになり、ドクン、と胸が爆ぜる。
自分から言い出しておいて、「ちょっと待ってくれ」と制止する言葉が出かかってガイは飲み込む。
エリクの気配を顔一面で感じて、熱が移る。唇がむず痒い。頭の中がのぼせる。自分が自分でなくなっていくような気がして、体のあちこちが小さく震えてしまう。
前にキスした時はこうではなかったのに……。
まだ唇を迎えていないのに、自分では理解できない反応をしてしまい、ガイは困惑する。
そんな中――エリクが吐息でガイの顔を撫でた後、唇を重ねてきた。
「ん……っ……」
柔らかな熱が唇に触れた途端、ガイの全身に甘い痺れが駆け抜け、かすかに声が漏れる。
前の時よりも落ち着かない。
嫌ではないのに今すぐ逃げ出したい気持ちと、もっと欲しいと望む気持ちが湧き上がって、ガイの戸惑いを大きくする。
不意にペロ、とエリクの舌先が唇をなぞっる。
「……ッ!」
そのこそばゆさにガイの肩が大きく跳ね、全身から湯気が出そうなほど熱が昂ってしまう。
唇よりも熱く湿ったものが口内に入り込み、味わうように蠢く。
未知の感触に思わずガイはエリクにしがみつき、甘く淫らな背筋のざわつきに身を震わせる。
ぬるりと戯れるようにガイの舌を絡め取りながら、エリクはガイの隣に腰掛け、肩に手を置く。
そして優しい力でガイを押せば、屈強な背中が呆気なくベッドに沈んだ。
「あ……ん、むぅ……っ」
次第にエリクの口づけが貪るように激しさを増していく。
舌が蠢く度に口内の上顎を撫で、ガイの体のあちこちをビクビクと跳ねさせる。
深く睦み合うようなキスに圧倒されて、ガイの脳裏に焦りがちらつく。
これでほんの少し。
いったいエリクはどれだけのものを自分に望んでいるのだろうか?
すべてを教えられた時、自分はどうなってしまうのか――。
エリクが言っていた後悔の中身が少し分かりかけたその時、
「んン……ッ」
下着越しにエリクの手がガイの股間に触れる。
思わず体が大きく跳ね、ジン、と甘い痺れが腰の奥へと広がっていく。
唇ばかりに気を取られていたが、下を触られてようやくガイは自分の体の変化に気づく。
雄の証が昂り、硬く膨張していることに。
途端に羞恥心が沸き起こり、ガイの頭が茹だる。
エリクのものがこうなっていても、難儀な体質だと思うだけだった。だが、いざ自分のそれを知られてしまうとなると、今すぐここから消えてしまいたい衝動に駆られてしまう。
ようやく唇を離し、息の自由を返してくれたエリクの顔は、喜びに蕩けていた。
「ああ、良かった。ガイ様も喜んでいらっしゃって……夢のようです」
うっとりと呟くその目は潤み、恍惚の色に満ち――何か吹っ切れてしまったように見えた。
自分から言い出しておいて、「ちょっと待ってくれ」と制止する言葉が出かかってガイは飲み込む。
エリクの気配を顔一面で感じて、熱が移る。唇がむず痒い。頭の中がのぼせる。自分が自分でなくなっていくような気がして、体のあちこちが小さく震えてしまう。
前にキスした時はこうではなかったのに……。
まだ唇を迎えていないのに、自分では理解できない反応をしてしまい、ガイは困惑する。
そんな中――エリクが吐息でガイの顔を撫でた後、唇を重ねてきた。
「ん……っ……」
柔らかな熱が唇に触れた途端、ガイの全身に甘い痺れが駆け抜け、かすかに声が漏れる。
前の時よりも落ち着かない。
嫌ではないのに今すぐ逃げ出したい気持ちと、もっと欲しいと望む気持ちが湧き上がって、ガイの戸惑いを大きくする。
不意にペロ、とエリクの舌先が唇をなぞっる。
「……ッ!」
そのこそばゆさにガイの肩が大きく跳ね、全身から湯気が出そうなほど熱が昂ってしまう。
唇よりも熱く湿ったものが口内に入り込み、味わうように蠢く。
未知の感触に思わずガイはエリクにしがみつき、甘く淫らな背筋のざわつきに身を震わせる。
ぬるりと戯れるようにガイの舌を絡め取りながら、エリクはガイの隣に腰掛け、肩に手を置く。
そして優しい力でガイを押せば、屈強な背中が呆気なくベッドに沈んだ。
「あ……ん、むぅ……っ」
次第にエリクの口づけが貪るように激しさを増していく。
舌が蠢く度に口内の上顎を撫で、ガイの体のあちこちをビクビクと跳ねさせる。
深く睦み合うようなキスに圧倒されて、ガイの脳裏に焦りがちらつく。
これでほんの少し。
いったいエリクはどれだけのものを自分に望んでいるのだろうか?
すべてを教えられた時、自分はどうなってしまうのか――。
エリクが言っていた後悔の中身が少し分かりかけたその時、
「んン……ッ」
下着越しにエリクの手がガイの股間に触れる。
思わず体が大きく跳ね、ジン、と甘い痺れが腰の奥へと広がっていく。
唇ばかりに気を取られていたが、下を触られてようやくガイは自分の体の変化に気づく。
雄の証が昂り、硬く膨張していることに。
途端に羞恥心が沸き起こり、ガイの頭が茹だる。
エリクのものがこうなっていても、難儀な体質だと思うだけだった。だが、いざ自分のそれを知られてしまうとなると、今すぐここから消えてしまいたい衝動に駆られてしまう。
ようやく唇を離し、息の自由を返してくれたエリクの顔は、喜びに蕩けていた。
「ああ、良かった。ガイ様も喜んでいらっしゃって……夢のようです」
うっとりと呟くその目は潤み、恍惚の色に満ち――何か吹っ切れてしまったように見えた。
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