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三章 嫌われ将軍、嫌われすぎて童貞処女な現実
エリクは俺が欲しいのか?
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◇ ◇ ◇
「ガイ様、お先に失礼します!」
宿の部屋に戻ると、エリクが勢いよくベッドに入り込み、背を向けて横になってしまった。
それはもう目にも留まらぬ速さ。
無駄のないその動き。何度か遭遇したことがある暗殺者よりも速い。
どうやらそちらの素質があるらしい。
ゆったりと衣服を脱ぎ、下着姿になって寝る準備をしながらガイは彼の優秀さを認める。
今日の宿はベッドが二つの部屋を確保できた。空いているベッドにガイは腰掛けると、エリクに話しかけた。
「そうか。俺も今日は疲れた……おやすみ、エリク」
言いながら、ガイは横たわらずに息をつく。
外に出て夜風に当たったおかげで、多少は体が落ち着いた気がする。
それでもまだ娼館の匂いや雰囲気にあてられたせいか、体の火照りが続いている。
滅多にそうならない自分がそうなのだから、普段から昂りやすいエリクはもっと酷いのではないかとガイは思う。
心底嫌がっているなら黙すのみだが――。
一騎討ち前の逸るような鼓動を感じながら、エリクに声をかけた。
「エリク……本当に俺は何もしなくていいのか?」
「……っ」
被った布団ごとエリクの肩が大きく跳ねる。
ハー、ハー、と荒くなりかけた息を整えた後、エリクは声を裏返しながら答えた。
「ええ、もちろん……私の体の都合に、ガイ様に付き合って頂くなど――」
「願ったり叶ったりだと言っていたのにか?」
「……ガイ様、煽らないで下さい」
自分を抑え込むように、エリクが布団の下で自分を抱き締める。
どう見ても、このまま眠れるようには見えない。
これから邪竜に向かっていかなくてはいけないのに。しかも二匹。山脈に近づくほどに、いつ遭遇するとも分からない。今から調子を整えなければ、取り返しのつかないことになる。
ゴクリ、とガイは息を呑む。
そして静かに立ち上がり、エリクのベッドの縁に腰掛けた。
「勘違いならすまないが、エリクは俺が欲しいのか?」
エリクの体が強張る。ベッドのしなりで、その動揺が手に取るように伝わってくる。
否定も肯定も返ってこない。
人の機微が上手く掴めないガイでも、エリクの本音が見えた。
「それは……っ……なんと言えばいいか……」
「もしエリクが楽になれるなら、俺にできることがあれば何でもしたい」
「ですから、先ほども言った通り、ガイ様はもっと自分を大切に――」
「俺はエリクを大事にしたい。そう望んではいけないのか?」
口にしながらガイは気づく。
少なくとも自分の身を預けてもいい程には、エリクを信用し、目の前からいなくなって欲しくないことに。
「ガイ様、お先に失礼します!」
宿の部屋に戻ると、エリクが勢いよくベッドに入り込み、背を向けて横になってしまった。
それはもう目にも留まらぬ速さ。
無駄のないその動き。何度か遭遇したことがある暗殺者よりも速い。
どうやらそちらの素質があるらしい。
ゆったりと衣服を脱ぎ、下着姿になって寝る準備をしながらガイは彼の優秀さを認める。
今日の宿はベッドが二つの部屋を確保できた。空いているベッドにガイは腰掛けると、エリクに話しかけた。
「そうか。俺も今日は疲れた……おやすみ、エリク」
言いながら、ガイは横たわらずに息をつく。
外に出て夜風に当たったおかげで、多少は体が落ち着いた気がする。
それでもまだ娼館の匂いや雰囲気にあてられたせいか、体の火照りが続いている。
滅多にそうならない自分がそうなのだから、普段から昂りやすいエリクはもっと酷いのではないかとガイは思う。
心底嫌がっているなら黙すのみだが――。
一騎討ち前の逸るような鼓動を感じながら、エリクに声をかけた。
「エリク……本当に俺は何もしなくていいのか?」
「……っ」
被った布団ごとエリクの肩が大きく跳ねる。
ハー、ハー、と荒くなりかけた息を整えた後、エリクは声を裏返しながら答えた。
「ええ、もちろん……私の体の都合に、ガイ様に付き合って頂くなど――」
「願ったり叶ったりだと言っていたのにか?」
「……ガイ様、煽らないで下さい」
自分を抑え込むように、エリクが布団の下で自分を抱き締める。
どう見ても、このまま眠れるようには見えない。
これから邪竜に向かっていかなくてはいけないのに。しかも二匹。山脈に近づくほどに、いつ遭遇するとも分からない。今から調子を整えなければ、取り返しのつかないことになる。
ゴクリ、とガイは息を呑む。
そして静かに立ち上がり、エリクのベッドの縁に腰掛けた。
「勘違いならすまないが、エリクは俺が欲しいのか?」
エリクの体が強張る。ベッドのしなりで、その動揺が手に取るように伝わってくる。
否定も肯定も返ってこない。
人の機微が上手く掴めないガイでも、エリクの本音が見えた。
「それは……っ……なんと言えばいいか……」
「もしエリクが楽になれるなら、俺にできることがあれば何でもしたい」
「ですから、先ほども言った通り、ガイ様はもっと自分を大切に――」
「俺はエリクを大事にしたい。そう望んではいけないのか?」
口にしながらガイは気づく。
少なくとも自分の身を預けてもいい程には、エリクを信用し、目の前からいなくなって欲しくないことに。
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