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幕間二 元敵国の副将もすべてお見通し(元敵将ゲイン視点)
オレが愛しているのはラヒュだけ
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「分かっています……分かった上でゲイン様を求めました。どれだけ貴方が私の想いに応えてくれているかも、私に心を向けてくれているかも知っています。でも――」
言いながらラヒュの剣から力が抜けていく。
まだ剣を交えながらだが、その目は遠くの恋敵ではなく、間近のゲインに熱い眼差しを向け出す。
しっかりと視線が合わさった瞬間、ラヒュの瞳が熱に潤んだ。
「初恋の人が目の前に現れて、ゲイン様の想いが表に出てしまう姿を見て、平気でいられる訳がないでしょう! 本日はガイ将軍に昨日の件を謝罪しに参りましたが……浮足立っている貴方をひと目見て、自分を抑えられませんでした」
「ラヒュ、聞いてくれ。オレは――」
「私というものがありながら、心をまだ彼の英雄に捧げたままだなんて……どうすれば私はゲイン様の心をすべて手に入れることができるのですか? 貴方を攫って見知らぬ地の屋敷に閉じ込めて、絶え間なく愛を注ぎ続けるぐらいのことをしなければ駄目ですか?」
またラヒュの感情が荒ぶり、思考が病んだ方向へ走り出していく。
重たい恋情をぶつけられながら、不意にゲインは交えていた剣を鞘に収める。
そしてラヒュの襟を掴み、引き寄せ、口づけた。
兵たちや使用人が見ている中で、ゲインから仕掛けるのは珍しいことだった。
不意打ちの唇にラヒュの目が丸くなる。ようやくこちらの声が届きそうだと、ゲインはフッと笑ってから語りかける。
「少しはオレに話をさせろ……オレはずっとアイツへの想いを溜め続けていた。敵同士だ。それを出すことは許されなかった。だが、今はお前がいる。生涯オレが隣に置くのはお前だけだと心に決めている」
「ゲイン様……」
「それなのに心をすべてやれないのは、無理に溜め込んでいたせいだ。だから口に出してしまってケリを付けたかったんだ。もう終わったことなんだと、自分の心に分からせたかった」
険しく引きつっていたラヒュの顔から力が抜け、あどけなさすら覗く澄み切った美貌が戻ってくる。
ここで気を抜いてはいけない。
最後まで言い切らないと、ラヒュの暴走が悪化する。
気恥ずかしさを感じながら、しかし目を逸らさずにゲインは口を動かす。
「不安にさせて済まなかった。オレが愛しているのはラヒュだけだ」
ラヒュの手から激情のままに握っていた剣が落ちる。
刹那、弾かれたようにゲインを抱き締めた。
「嬉しいです……っ、そこまで私を想って下さっていたなんて!」
「ああ。だから機嫌を直して、いつものラヒュに戻ってくれ」
なだめるようにラヒュの背を撫でながら、ゲインは心の中で安堵の息をつく。
これで平和が戻ってくる――と思った矢先。
ヒョイ。大柄なゲインの体がラヒュに持ち上げられた。
言いながらラヒュの剣から力が抜けていく。
まだ剣を交えながらだが、その目は遠くの恋敵ではなく、間近のゲインに熱い眼差しを向け出す。
しっかりと視線が合わさった瞬間、ラヒュの瞳が熱に潤んだ。
「初恋の人が目の前に現れて、ゲイン様の想いが表に出てしまう姿を見て、平気でいられる訳がないでしょう! 本日はガイ将軍に昨日の件を謝罪しに参りましたが……浮足立っている貴方をひと目見て、自分を抑えられませんでした」
「ラヒュ、聞いてくれ。オレは――」
「私というものがありながら、心をまだ彼の英雄に捧げたままだなんて……どうすれば私はゲイン様の心をすべて手に入れることができるのですか? 貴方を攫って見知らぬ地の屋敷に閉じ込めて、絶え間なく愛を注ぎ続けるぐらいのことをしなければ駄目ですか?」
またラヒュの感情が荒ぶり、思考が病んだ方向へ走り出していく。
重たい恋情をぶつけられながら、不意にゲインは交えていた剣を鞘に収める。
そしてラヒュの襟を掴み、引き寄せ、口づけた。
兵たちや使用人が見ている中で、ゲインから仕掛けるのは珍しいことだった。
不意打ちの唇にラヒュの目が丸くなる。ようやくこちらの声が届きそうだと、ゲインはフッと笑ってから語りかける。
「少しはオレに話をさせろ……オレはずっとアイツへの想いを溜め続けていた。敵同士だ。それを出すことは許されなかった。だが、今はお前がいる。生涯オレが隣に置くのはお前だけだと心に決めている」
「ゲイン様……」
「それなのに心をすべてやれないのは、無理に溜め込んでいたせいだ。だから口に出してしまってケリを付けたかったんだ。もう終わったことなんだと、自分の心に分からせたかった」
険しく引きつっていたラヒュの顔から力が抜け、あどけなさすら覗く澄み切った美貌が戻ってくる。
ここで気を抜いてはいけない。
最後まで言い切らないと、ラヒュの暴走が悪化する。
気恥ずかしさを感じながら、しかし目を逸らさずにゲインは口を動かす。
「不安にさせて済まなかった。オレが愛しているのはラヒュだけだ」
ラヒュの手から激情のままに握っていた剣が落ちる。
刹那、弾かれたようにゲインを抱き締めた。
「嬉しいです……っ、そこまで私を想って下さっていたなんて!」
「ああ。だから機嫌を直して、いつものラヒュに戻ってくれ」
なだめるようにラヒュの背を撫でながら、ゲインは心の中で安堵の息をつく。
これで平和が戻ってくる――と思った矢先。
ヒョイ。大柄なゲインの体がラヒュに持ち上げられた。
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