嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした

天岸 あおい

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二章 嫌われ将軍、元敵国でも絶賛嫌われ中

独占欲が強すぎる嫉妬深い体力無尽蔵の若い恋人

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 エリクの発言に驚いたらしく、ゲインの握手の力が緩む。ふとガイがゲインを見やれば、衝撃のあまり目を丸くし、驚いて声も出せないように見えた。

 これは絶対に勘違いされている。
 早く訂正するんだとガイはエリクに目で訴えてみるが、にこりと笑いかけてくるばかりで、頑なに直す気はないと訴え返された。

「そ、そうか。これはおめでとうと言うべきなのか?」

 声を上ずらせ、動揺しながらも祝福しようとするゲインに、ガイは慌てて首を横に振る。

「誤解しないでくれゲイン。私とエリクは別に――」

「ありがとうございます、ゲイン様!」

 訂正どころか、エリクが誤解を加速させてしまう。まるでこの誤解をゴリ押しして事実にしようとしている気がして、ガイの動揺と困惑も加速する。

 いくらなんでもこの暴走はあり得ない。
 しっかり正さねばとガイが声に出して注意しようとしたが、

「不躾なお願いをして申し訳ありませんが、そんな事情がありますので、願わくばガイ様と同じ部屋にさせて頂きたく思います」

 ガイの腰に手を回し、同室を要求してくるエリクから、必死な気配が伝わってくる。

 いつもの暴走や奇行ではない?
 しっかり狙いを持った上での言動なのかと、ガイは開きかけた口を閉ざす。

 完全にガイから手を離すと、小さく息をついてからゲインは笑った。

「ベッドは部屋に一つしかないが、それで構わないか?」

「はい! むしろ大歓迎です!」

「正直だな。若者らしくて良いと思うぞ」

 エリクとゲインの談笑を、眉間に皺を寄せながらガイは眺める。

 あまりにエリクが堂々と嘘を通すその様も、たちの悪い嘘だと言いたくなるようなことを信じきった様子のゲインも信じられない。

 俺は悪い夢でも見ているのか? と軽くめまいを覚えそうになる。
 部屋に案内されたらエリクにしっかり説明してもらわねば。そうガイが強く考えていると、ゲインが苦笑を向けてきた。

「年下の恋人はオレもいるが、この年で色々と応えるのは大変だ。朝は精のつくものを用意しよう」

「い、いや、そこまで気を遣わなくても――」

「オレたちは若くないんだ。毎日の積み重ねが大事になってくるぞ。独占欲が強すぎる嫉妬深い体力無尽蔵の若い恋人は、何をどれだけやっても満足しないってことは覚悟しておけ……」

 それはもうしみじみと、諦めを滲ませながらゲインが語る。

 どうやら彼は若い恋人に振り回され、苦労しているらしい。
 一騎打ちでは常にこちらを攻め続け、手を止めたことがないほどの体力を誇っていた。そんなゲインが苦労するとは、相手もよほどの猛者なのだろうかと思いそうになる。

 今のガイには「あ、ああ」とぎこちなく頷き、まだ理由が見えない嘘に付き合うことしかできなかった。
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