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二章 嫌われ将軍、元敵国でも絶賛嫌われ中
見込みってなんのことだ?
しおりを挟む完全に日が落ち、辺りが夜に包まれる頃。
ガイたちは火をなるべく小さくし、追っ手に気づかれにくくした上で休もうとする。
ぶるり、とガイの体が震える。
昼間よりも気温が下がり、冷めたさを帯びた風が洞窟に入り込み、ガイの肌を撫でていく。
荷物に入れてあった外套をかけてはいるが、寒さは完全に防げない。
徐々に手足の指先が冷え切っていくのを感じてしまい、ガイは眠ることができなかった。
自分でこの調子なのだ。エリクはさぞ辛いだろう。
ガイは一人分ほど間を空けた隣で、壁に背を預けて寝ようとしているエリクに声をかける。
「エリク、眠れそうか?」
「あー、その……ちょっと難しいかもしれません」
やはり体が冷えて眠れないのかとガイは合点がいき、おもむろに二人の距離を詰めた。
「それなら体をくっつけ合って、温まりながら寝よう」
「……え?」
「俺が近くにいるのは逆に熱苦しいかもしれないが、寒さで眠れないよりはマシだろう」
エリクの返事を待たずに肩を並べると、すぐに温もりだ伝わってきてガイは小首を傾げる。
「なんだエリク、寒くはないのか。若いな」
「……っ、え、ええ、あつい――いえ、寒くてたまりません!」
言うなりエリクはガイに両腕を巻き付け、自分の胸に押し付けるように深く抱き込んだ。
……なんだこれは?
温かい……を通り越して、熱い。体が火照る。
突然の包容にガイが驚いていると、エリクの手が頭に回され、優しく撫でられた。
「エリク、何をする? 俺を温めようとしているなら、気持ちは嬉しいが――」
「どうかこのままで……ガイ様」
耳元で囁かれて、思わずガイの肩がびくんと跳ねる。
考えていたのは互いにみっちりと並んで隙間をなくし、二人分の外套をかけて寒さを凌ぐ方法。こんな一方的に抱きすくめられるのは想定外だった。
こんな時にエリクの奇行が出てしまうとは、とガイは悔やむ。身動きが取れずどうしようもできない。
ゆっくりとエリクの手が、ガイの頭から背中へと移り、撫で下ろされていく。
ざわざわざわ、と触れられた所が妙に疼く。こそばゆくて暴れたいような、今すぐこの場を転げ回りくてたまらないような気分になってくる。
「ま、待ってくれ。一旦離れよう。熱くてたまらない」
身に覚えのない感覚にしどろもどろになるガイを、エリクが少しだけ顔を上げ、間近に見つめ合おうとしてきた。
「熱い……それだけですか?」
「もちろん違う。落ち着かないし、なんというか恥ずかしい」
「……嫌ではないと?」
「剣を抜いて切りつけたいほどではない」
ガイが素直に答えると、エリクから吐息が溢れた。
「ああ、良かった。見込みはありそうで……」
見込みってなんのことだ?
こんな時に理解できないことをされると割り切れない。
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