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一章 嫌われ将軍、国を追い出される
実質の追放
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「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」
城内の広間に、新王イヴァンの冷ややかな声が響く。
集められた臣下たちがにわかにざわつく中、玉座の前に跪いた屈強な将軍は、頭を垂れたまま何も言わなかった。
ガイ・デオタード。
二十二歳の若さでレアランダ王国の将軍に抜擢され、今年で二十年。
数多の戦で勝利を勝ち取り、先王に英雄の称号を授けられた男。
目尻の皺が深くなったが、凛々しく頑強さ溢れる顔立ちは若い頃から変わらない――老け顔と言えばそれまでだが、若くして将軍の任に就いても違和感のない貫禄を兼ね備えた男だった。
年を重ねた今は、後進を育てながら国を、民を、王を守ろうとガイは心に決めていた。
しかし新王は淡々とガイの決意を踏みにじる。
「ここから遥か彼方にあるヨルリア山脈で邪竜が暴れ、近隣諸国では相手ができぬそうだ。しかしそなたは我が国が誇る英雄。見事に邪竜を討ち果たして来い」
「……王命、謹んで承ります。これより討伐隊を編成し、邪竜の元へ――」
「ガイよ、お前だけで行くのだ。我が兵を連れていくのは許さん」
ざわり。
再び周囲がざわつく。
ガイは密かに息をつき、言葉を紡ぐ。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「邪竜の強さは神をも凌ぐと言われている。どれだけ兵を連れたところで、無駄死にするのは目に見えている……将軍も兵を守りながら戦うのはやりにくかろう。邪竜にのみ集中し、英雄として存分に力を振るうのだ」
新王の話を聞きながらガイは悟る。
これは事実上の追放だ。
英雄という肩書きを持つ者を体よく追い出すための大義名分。
先王はガイによくしてくれたが、先王の息子である新王イヴァンにはずっと険しい目を向けられていたことを思い出す。
先王が崩御し、新王が即位した時、きっと冷遇されるだろうと覚悟はしていた。
しかし、まさか追放されることになるとは夢にも思わなかった。
王命である以上、断っても追い出されることになる。
何を選んでも自分の道は決まっている。だが――。
ガイは垂れていた頭を、さらに深く下げた。
「必ずや邪竜を討ち果たし、陛下の憂いを払いましょう……我が軍は解体せず、どうか副将ウーゴに我が座を譲って頂けましたなら、私は心置きなく邪竜に挑むことができます。何卒――」
「将軍が邪竜討伐に行くならば、そのようにしよう」
今まで苦楽を共にしてきた部下たちが、ガイの脳裏をよぎる。
王命を受ければ彼らの処遇は今までと大きく変わらない。
ただ軍の頂にいた自分が野に下るだけ。
胸奥に広がっていく虚無を感じながら、ガイは口端を上げ、心からの言葉を口にした。
「ありがたき幸せ。このガイ・デオタード、命に代えましても邪竜を討ち果たして参ります」
城内の広間に、新王イヴァンの冷ややかな声が響く。
集められた臣下たちがにわかにざわつく中、玉座の前に跪いた屈強な将軍は、頭を垂れたまま何も言わなかった。
ガイ・デオタード。
二十二歳の若さでレアランダ王国の将軍に抜擢され、今年で二十年。
数多の戦で勝利を勝ち取り、先王に英雄の称号を授けられた男。
目尻の皺が深くなったが、凛々しく頑強さ溢れる顔立ちは若い頃から変わらない――老け顔と言えばそれまでだが、若くして将軍の任に就いても違和感のない貫禄を兼ね備えた男だった。
年を重ねた今は、後進を育てながら国を、民を、王を守ろうとガイは心に決めていた。
しかし新王は淡々とガイの決意を踏みにじる。
「ここから遥か彼方にあるヨルリア山脈で邪竜が暴れ、近隣諸国では相手ができぬそうだ。しかしそなたは我が国が誇る英雄。見事に邪竜を討ち果たして来い」
「……王命、謹んで承ります。これより討伐隊を編成し、邪竜の元へ――」
「ガイよ、お前だけで行くのだ。我が兵を連れていくのは許さん」
ざわり。
再び周囲がざわつく。
ガイは密かに息をつき、言葉を紡ぐ。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「邪竜の強さは神をも凌ぐと言われている。どれだけ兵を連れたところで、無駄死にするのは目に見えている……将軍も兵を守りながら戦うのはやりにくかろう。邪竜にのみ集中し、英雄として存分に力を振るうのだ」
新王の話を聞きながらガイは悟る。
これは事実上の追放だ。
英雄という肩書きを持つ者を体よく追い出すための大義名分。
先王はガイによくしてくれたが、先王の息子である新王イヴァンにはずっと険しい目を向けられていたことを思い出す。
先王が崩御し、新王が即位した時、きっと冷遇されるだろうと覚悟はしていた。
しかし、まさか追放されることになるとは夢にも思わなかった。
王命である以上、断っても追い出されることになる。
何を選んでも自分の道は決まっている。だが――。
ガイは垂れていた頭を、さらに深く下げた。
「必ずや邪竜を討ち果たし、陛下の憂いを払いましょう……我が軍は解体せず、どうか副将ウーゴに我が座を譲って頂けましたなら、私は心置きなく邪竜に挑むことができます。何卒――」
「将軍が邪竜討伐に行くならば、そのようにしよう」
今まで苦楽を共にしてきた部下たちが、ガイの脳裏をよぎる。
王命を受ければ彼らの処遇は今までと大きく変わらない。
ただ軍の頂にいた自分が野に下るだけ。
胸奥に広がっていく虚無を感じながら、ガイは口端を上げ、心からの言葉を口にした。
「ありがたき幸せ。このガイ・デオタード、命に代えましても邪竜を討ち果たして参ります」
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