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三章 ヴェリシアへ
噂の根源1
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おどけたようにボリスは片目を閉じた後、臨時で負傷兵を看護する侍女たちを顎で指す。
「でも気を付けろよ。お前が薬師さんの隣に並ぶだけでも、女性陣が妙に色めき立って騒ぎ出すからな。あの子たちの中じゃあ、もう二人が付き合ってるってことになってると思う」
思いがけないことを言われ、レオニードは全身を硬直させる。
言われてみれば……みなもと話しながら侍女たちとすれ違う時、毎回こちらを見る目がやけにキラキラしていたような気がする。
てっきり解毒剤を可能にしてくれたみなもへ、感謝と敬意を向けているのだろうと思っていたが、まさかそんな目で見られていたとは……。
レオニードが愕然としていると、ボリスに膝を指でつつかれる。そして彼は指先を左側へ向けた。
示されるままに目を向けると、何やら部屋の隅で談笑している浪司と侍女たちの姿があった。
「あそこのオジサンも、お前と一緒にここまで来たんだろ? 旅先で何があったか、彼女たちに言いふらして煽っているぞ」
……諸悪の根源はお前か。
恐らく浪司のことだ、侍女たちの反応を見て面白がっているのだろう。
自分だけならまだしも、みなもまで巻き込むのはいただけない。
冷ややかになった目付きのまま、レオニードは立ち上がり、浪司の元へ早歩きで向かった。
こちらに気づいた浪司が「お疲れさん」とにこやかに手を振ってくる。
だが、途端に身をすくませ、話をしていた侍女の背中に隠れた。
「ど、どうしてそんなに怒ってんだ? ワシ、何か悪いことでもしたか?」
「……少し話がある。ついて来てくれ」
返事を聞かずにレオニードが背を向けると、侍女たちに「また後でな」と言ってついて来る浪司の足音がした。
廊下へ出ると、辺りに人がいないことを確かめてからレオニードは浪司へ振り向いた。
「侍女たちに妙なことを吹き込まないでくれ。俺をおちょくるだけならまだしも、みなもに迷惑をかけるような真似は――」
「やっぱ頭がカタいなあ、レオニードは」
大きく息をついてから、浪司は腕を組んで胸を張る。
開き直ったのかと思っていたが、彼は苦笑しつつも浮かれた気配は見せていなかった。
「一応これでも、みなものためにやってんだぜ」
「でも気を付けろよ。お前が薬師さんの隣に並ぶだけでも、女性陣が妙に色めき立って騒ぎ出すからな。あの子たちの中じゃあ、もう二人が付き合ってるってことになってると思う」
思いがけないことを言われ、レオニードは全身を硬直させる。
言われてみれば……みなもと話しながら侍女たちとすれ違う時、毎回こちらを見る目がやけにキラキラしていたような気がする。
てっきり解毒剤を可能にしてくれたみなもへ、感謝と敬意を向けているのだろうと思っていたが、まさかそんな目で見られていたとは……。
レオニードが愕然としていると、ボリスに膝を指でつつかれる。そして彼は指先を左側へ向けた。
示されるままに目を向けると、何やら部屋の隅で談笑している浪司と侍女たちの姿があった。
「あそこのオジサンも、お前と一緒にここまで来たんだろ? 旅先で何があったか、彼女たちに言いふらして煽っているぞ」
……諸悪の根源はお前か。
恐らく浪司のことだ、侍女たちの反応を見て面白がっているのだろう。
自分だけならまだしも、みなもまで巻き込むのはいただけない。
冷ややかになった目付きのまま、レオニードは立ち上がり、浪司の元へ早歩きで向かった。
こちらに気づいた浪司が「お疲れさん」とにこやかに手を振ってくる。
だが、途端に身をすくませ、話をしていた侍女の背中に隠れた。
「ど、どうしてそんなに怒ってんだ? ワシ、何か悪いことでもしたか?」
「……少し話がある。ついて来てくれ」
返事を聞かずにレオニードが背を向けると、侍女たちに「また後でな」と言ってついて来る浪司の足音がした。
廊下へ出ると、辺りに人がいないことを確かめてからレオニードは浪司へ振り向いた。
「侍女たちに妙なことを吹き込まないでくれ。俺をおちょくるだけならまだしも、みなもに迷惑をかけるような真似は――」
「やっぱ頭がカタいなあ、レオニードは」
大きく息をついてから、浪司は腕を組んで胸を張る。
開き直ったのかと思っていたが、彼は苦笑しつつも浮かれた気配は見せていなかった。
「一応これでも、みなものためにやってんだぜ」
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