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三章 ヴェリシアへ

意外な来訪者2

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「マクシム陛下、なぜこのような場所に!?」

 仰々しい様子にみなもは思わずたじろぐ。
 そして目前の男が何者なのかという事に気づき、レオニードにならって跪こうとした。
 が、マクシムが「構わぬ」と首を振ったので、みなもは動きを静止する。

 この軽そうな人が王様?
 理解が追いつかず混乱するみなもへ、マクシムが一笑した。

「みなもは余の大切な客人……公の場でなければ、並んで話をするぐらい構わぬだろ。レオニード、お前も立ってくれ」

「……御意」

 レオニードは戸惑いながら立ち上がると、みなもの隣に並んだ。
 実直で堅い反応を見て、マクシムはおどけて肩をすくめる。

「お前の恩人に一目会いたくてな。近くを通りかかったから寄ってみたんだ。想像していたよりも若くて美人だな。もし女性だったら口説いていたところだ」

 ……男のフリをしていて良かったな。王様相手に断るのは面倒そうだし。
 みなもが密かに安堵していると、マクシムは気軽にレオニードの肩を、ぽんっと叩いてきた。

「彼はお前にとっても、他の者にとっても命の恩人だ。失礼のないよう、手厚くもてなしてくれ」

「はい、心得ております」

 マクシムの親しみある態度に対して、レオニードの声は硬いままだ。
 みなもは瞳だけを動かして隣を見やる。調子を崩されてレオニードが困ったような表情を浮かべていた。
 それを見てマクシムが、フッと表情を崩した。

「その生真面目な顔を見られるようになって、余は嬉しいぞ。まだ長旅の疲れも残ってるだろう、あまり無理をするなよ」

 満足げに頷いてから「おお、そうだ」とマクシムは話を切り替え、みなもに視線を移した。

「レオニードから話を聞いたが、みなもの仲間は北方の人間に襲われ、離れ離れになったそうだな」

 わずかに目を伏せ、みなもは小さく頷く。

「はい……八年経った今も、仲間の足跡はおろか、生死も分かっていません」

「王の名と誇りにかけて、ヴェリシアの人間が襲っていないことは断言しよう。それから、バルディグの情報も手に入れ次第、みなもに伝えることを約束する」

 レオニードの話を疑っていた訳ではないが、王から直々に言って貰えると心強い。
 みなもは「ありがとうございます」と一礼した。
 顔を上げると、マクシムの口がさらに言葉を紡いだ。
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