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十五話 覇者

本懐を遂げるために

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「合わせ技で、兵を? それなら確かに勝算が――でも、どちらが先に王城を落とすかということになると、やはり兄がいる以上、志馬威に軍配が上がるのでは……」

 潤宇の憂いは当然だ。互いの主戦力が入れ違いでそれぞれが王城を攻めれば、技で城を落とすことなど容易い華侯焔が勝る。

 本来なら何をやっても叶わない相手。
 そもそも王城の規模も違う。防御力という点でも劣り、攻撃力にも差がある。

 だが、ひとつだけ俺には光明があった。

「俺が華侯焔と対峙して足止めしている間に、羽勳たちに志馬威を攻めてもらう」

「……っ、兄と、真っ向から戦うなんて!」

「華侯焔は城を落とすことより、俺と本気で戦うことを望んでいる。俺がそれに応え、食い止め続ければ勝機はある」

 血相を変えた潤宇を俺は見据える。

 もう覚悟はできている。才明や英正も同じくだ。
 本当ならば俺ひとりで応えたいが、情けないことにまだ未熟な身。主力である才明と英正の力を借りて、ようやく本気で華侯焔と向き合い、ぶつかることができる。

 それがどれだけ難しく、一瞬も怯めないことは理解していた。

 潤宇は弾かれたように口を開きかけて、グッと唇を固く結ぶ。
 大きく息を吸い、吐き出しながら悲痛さを口から追い出し、表情を引き締めた。

「誠人さんの覚悟、しかと受け取りました。ならば僕も覚悟を決めましょう――侶普」

「はっ」

 潤宇の呼びかけに応えると、侶普は距離を詰め、傍に控える。

 巨躯を見上げる潤宇の眼差しは強く、格付け三位の気迫が漂う。

「この戦いで僕はすべてを使い尽くす。侶普もそのつもりで」

「心得ております。この身も心も、すべては潤宇様のもの……どこまでもご意向に沿って参ります」

 彼らもまた覚悟を決めた者。頼もしくもあり、悲しくもある。
 俺が勝てば現実を失い、負ければこれから先、兄を自由にしたいという望みが叶わなくなるだろう。

 どちらに転んでも潤宇は何かを失うことになる。
 ならば共に本懐を遂げたほうがいい。

 華侯焔を――東郷さんをこの世界でも、現実でもしがらみから開放したい。

 俺が目配せすると、才明は俺の望みを汲んだように頷いた。

「ありがとうございます。お二人の力、大切に使わせて頂きます」

 潤宇たちに向かって厳かに拝手し、一礼すると、才明は強気な微笑を浮かべながら告げた。

「では作戦をお伝えしますので、異論がなければすぐに準備をお願いします。早ければ早いほうがいいので」

 言われる間も無く、俺は机の上に広げられた地図に近づく。他の皆も円陣を組むように集まり、才明の策に耳を傾けた――。
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