326 / 345
十四話 決戦に向けて
●愛好者
しおりを挟む
心のどこかで本気をぶつけたかった華侯焔や、最初から想いを秘めていた英正と違って、才明の根底にあったのは目的のため。ゲーム攻略に必要があるからと、割り切って俺を抱いてきた。
合わせ技を発動させる前までは、攻略目的でも俺を心から求めることを躊躇していた。どれだけ求めても、東郷さんから俺を奪うことはできないからと――。
そんな才明が、なりふり構わず俺を求めようとしている。
現実でも繋がりがある相手だけに、このまま受け入れてしまうことに抵抗を覚えてしまう。
褒美を与えるためにも、合わせ技の威力を高めるためにも必要なことだ。
心の中で怖気づきそうな自分に言い聞かせていると、才明が俺の手をそっと握った。
「誠人様、こちらへ。床に崩れ落ちてしまわれると、私では華侯焔のように軽々と抱き上げられませんから」
小さく笑いながら冗談めかせると、才明は俺を寝台に座らせ、目前で跪く。
顔上げて俺を見上げるその顔に陰りはなく、どこか恍惚としたものがあった。
「ふふ、嬉しいものですね。こうして心を向けるだけで私を意識して下さる。私でも誠人様の心を乱すことができるのですね」
「……才明、あまり俺をからかわないでくれ」
「本心ですよ。あの方に身も心も奪われていることは承知しています。だから私がどれだけ本気をぶつけても、困らせるだけだと……私のような者が、心を深く揺らすことなど叶わないと思っていましたから」
言いながら才明は俺の手を取り、恭しく手の甲に唇を落とす。
まるで騎士が忠誠を誓うような態度と、こそばゆい唇の感触に、俺の鼓動が大きく跳ねた。
小さな動揺の数々に気づいていると言いたげに、才明は口端を引き上げた。
「私はね、誠人様……貴方の愛好者になる道を選んだのですよ。要はファンです」
もう一度手の甲に口づけると、指にも柔らかなキスを与えてくる。
音もなくゆっくりと繰り返される手への刺激。時折、才明の舌先が当たり、俺の身体がピクリとなる。
ささやかだからこそ、過ぎた快楽を覚えてしまった身体が貪欲になりたがる。
もっと俺を激しく奪って欲しいという欲が膨れ上がっていく中、才明は俺の指先を舐め、甘くかじり、わずかに感嘆の息を漏らす。
「本当は合わせ技を放てるほど心を捧げる気はなかったのですが、誠人様が華侯焔に敗北を与えられそうになった瞬間に吹っ切れました。貴方が負ける姿を見たくない、と」
才明の本音を聞きながら、俺は身体に熱が孕むのを感じていく。
優しく理性が壊されていくのを感じていても、今の俺には才明を止めることはできなかった。
「どちらの世界でも、誠人様には勝ち続けてもらいたい。その本心に気づいて、ようやく貴方を深く想う覚悟ができました。振り向いてもらわなくてもいい。熱狂的なファンとなれば、一方的に込み上げる想いをぶつけることができますから」
「才明……それでいいのか?」
「いいどころか、最高です。私たちがどのような間柄になったとしても、命尽きるまでずっとできること。たとえ誠人様が私の手の届かない所に行くことになったとしても、想い続け、思い出の数々を愛でて幸せに浸れます」
合わせ技を発動させる前までは、攻略目的でも俺を心から求めることを躊躇していた。どれだけ求めても、東郷さんから俺を奪うことはできないからと――。
そんな才明が、なりふり構わず俺を求めようとしている。
現実でも繋がりがある相手だけに、このまま受け入れてしまうことに抵抗を覚えてしまう。
褒美を与えるためにも、合わせ技の威力を高めるためにも必要なことだ。
心の中で怖気づきそうな自分に言い聞かせていると、才明が俺の手をそっと握った。
「誠人様、こちらへ。床に崩れ落ちてしまわれると、私では華侯焔のように軽々と抱き上げられませんから」
小さく笑いながら冗談めかせると、才明は俺を寝台に座らせ、目前で跪く。
顔上げて俺を見上げるその顔に陰りはなく、どこか恍惚としたものがあった。
「ふふ、嬉しいものですね。こうして心を向けるだけで私を意識して下さる。私でも誠人様の心を乱すことができるのですね」
「……才明、あまり俺をからかわないでくれ」
「本心ですよ。あの方に身も心も奪われていることは承知しています。だから私がどれだけ本気をぶつけても、困らせるだけだと……私のような者が、心を深く揺らすことなど叶わないと思っていましたから」
言いながら才明は俺の手を取り、恭しく手の甲に唇を落とす。
まるで騎士が忠誠を誓うような態度と、こそばゆい唇の感触に、俺の鼓動が大きく跳ねた。
小さな動揺の数々に気づいていると言いたげに、才明は口端を引き上げた。
「私はね、誠人様……貴方の愛好者になる道を選んだのですよ。要はファンです」
もう一度手の甲に口づけると、指にも柔らかなキスを与えてくる。
音もなくゆっくりと繰り返される手への刺激。時折、才明の舌先が当たり、俺の身体がピクリとなる。
ささやかだからこそ、過ぎた快楽を覚えてしまった身体が貪欲になりたがる。
もっと俺を激しく奪って欲しいという欲が膨れ上がっていく中、才明は俺の指先を舐め、甘くかじり、わずかに感嘆の息を漏らす。
「本当は合わせ技を放てるほど心を捧げる気はなかったのですが、誠人様が華侯焔に敗北を与えられそうになった瞬間に吹っ切れました。貴方が負ける姿を見たくない、と」
才明の本音を聞きながら、俺は身体に熱が孕むのを感じていく。
優しく理性が壊されていくのを感じていても、今の俺には才明を止めることはできなかった。
「どちらの世界でも、誠人様には勝ち続けてもらいたい。その本心に気づいて、ようやく貴方を深く想う覚悟ができました。振り向いてもらわなくてもいい。熱狂的なファンとなれば、一方的に込み上げる想いをぶつけることができますから」
「才明……それでいいのか?」
「いいどころか、最高です。私たちがどのような間柄になったとしても、命尽きるまでずっとできること。たとえ誠人様が私の手の届かない所に行くことになったとしても、想い続け、思い出の数々を愛でて幸せに浸れます」
1
お気に入りに追加
428
あなたにおすすめの小説


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる