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十四話 決戦に向けて
●話がしたくて
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◇ ◇ ◇
白鐸の力で居城に戻してもらうと、食事と湯浴みを済ませて才明の部屋に向かった。
かなり無理を重ねていた。まだ寝ていてもおかしくないと思っていたが――部屋に才明の姿はなく、寝台はきれいに整えられていた。
「どこに行ったんだ……ん?」
部屋の中を見渡した時、机の上に広げられた地図と紙の束が目に入る。
紙面に細かく詰められた字が並んでいる。もしかして目覚めてすぐ、地図を眺めながら戦略を練っていたのだろうか?
軍師になってからずっとこうだったのか? それとも……。
元々の性格なのか、常に思考を働かせねば気が済まないほど思い詰めているのか。合わせ技で互いの心を見知った後でも、やはり才明という人間は掴みにくい。
もう夜だというのに部屋に戻っていないということは、軍議室で将たちに指示を出したり、話し合って内容を詰めているのだろうか?
踵を返して部屋を出ようとしたその時、
「おや、誠人様。私に何か用事がおありでしたか?」
髪を濡らした寝巻き姿の才明が扉を開け、俺をにこやかに見てきた。どうやら風呂上がりらしい。うっすらと頬や首筋に赤みがさしている。
「ああ。才明と話がしたくて」
「奇遇ですね。私も今夜は誠人様と話さねば、と思っていたところです」
部屋の中へ入ると、才明は後ろ手で扉を閉める。
そうして俺に近づいたかと思えば、手を伸ばし、頬に触れながら顔を寄せてきた。
「本当は誠人様の部屋に赴いて、一夜の時間を私に預けて頂きたいと請うつもりでしたが……今夜はこちらで過ごして頂けるのですか?」
俺を覗き込んでくる才明の目が、わずかに開く。
鋭さがありながらも、甘さと色気を孕んだ瞳が俺を捕らえる。
今まで以上に眼差しが熱い。何を望んでいるかも、今夜は避けられぬことだと分かっていても、一瞬答えに躊躇してしまう。
才明の眼差しを直視できなくて、思わず視線を反らしてしまう。
それでも小さく頷いて許しの意思を伝えれば、才明はかすかに笑い、俺の唇をそっと奪ってきた。
浅く重ねながら舌先でくすぐるようになぞってくる感触に、腰の奥が淫らにざわつく。早くこの中に欲しいと訴えるように、駆け出した鼓動が俺の胸を叩いて響かせる。
もっと強く鮮明に才明を感じたい。
そんな欲が芽生え始めた俺から、フッと才明は唇を離す。
思わず困惑と恨めしさが混ざった目を向けてしまえば、才明の目に歓喜の輝きが覗いた。
「今までのように、もう我慢はしません。私が欲するままに誠人様を求めさせて頂きますから」
白鐸の力で居城に戻してもらうと、食事と湯浴みを済ませて才明の部屋に向かった。
かなり無理を重ねていた。まだ寝ていてもおかしくないと思っていたが――部屋に才明の姿はなく、寝台はきれいに整えられていた。
「どこに行ったんだ……ん?」
部屋の中を見渡した時、机の上に広げられた地図と紙の束が目に入る。
紙面に細かく詰められた字が並んでいる。もしかして目覚めてすぐ、地図を眺めながら戦略を練っていたのだろうか?
軍師になってからずっとこうだったのか? それとも……。
元々の性格なのか、常に思考を働かせねば気が済まないほど思い詰めているのか。合わせ技で互いの心を見知った後でも、やはり才明という人間は掴みにくい。
もう夜だというのに部屋に戻っていないということは、軍議室で将たちに指示を出したり、話し合って内容を詰めているのだろうか?
踵を返して部屋を出ようとしたその時、
「おや、誠人様。私に何か用事がおありでしたか?」
髪を濡らした寝巻き姿の才明が扉を開け、俺をにこやかに見てきた。どうやら風呂上がりらしい。うっすらと頬や首筋に赤みがさしている。
「ああ。才明と話がしたくて」
「奇遇ですね。私も今夜は誠人様と話さねば、と思っていたところです」
部屋の中へ入ると、才明は後ろ手で扉を閉める。
そうして俺に近づいたかと思えば、手を伸ばし、頬に触れながら顔を寄せてきた。
「本当は誠人様の部屋に赴いて、一夜の時間を私に預けて頂きたいと請うつもりでしたが……今夜はこちらで過ごして頂けるのですか?」
俺を覗き込んでくる才明の目が、わずかに開く。
鋭さがありながらも、甘さと色気を孕んだ瞳が俺を捕らえる。
今まで以上に眼差しが熱い。何を望んでいるかも、今夜は避けられぬことだと分かっていても、一瞬答えに躊躇してしまう。
才明の眼差しを直視できなくて、思わず視線を反らしてしまう。
それでも小さく頷いて許しの意思を伝えれば、才明はかすかに笑い、俺の唇をそっと奪ってきた。
浅く重ねながら舌先でくすぐるようになぞってくる感触に、腰の奥が淫らにざわつく。早くこの中に欲しいと訴えるように、駆け出した鼓動が俺の胸を叩いて響かせる。
もっと強く鮮明に才明を感じたい。
そんな欲が芽生え始めた俺から、フッと才明は唇を離す。
思わず困惑と恨めしさが混ざった目を向けてしまえば、才明の目に歓喜の輝きが覗いた。
「今までのように、もう我慢はしません。私が欲するままに誠人様を求めさせて頂きますから」
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