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十四話 決戦に向けて

鉄工翁の事情

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 鉄工翁は部屋に入ると、さっそく荷袋を下ろして中の物を取り出す。

 ゴン、と布越しに硬く鈍い音が鳴る。いずれも金属製の物らしい。
 俺たちが覗き込む中、鉄工翁は手際よく包んだ布を外していく。フッと懐かしむような、少し寂しげな微笑を浮かべながら語り出す。

「ある御仁から、この日のために武器を作って欲しいと頼まれておりまして……金はいくらでもやるから、最高の武器をこしらえてくれ、と」

 思わず俺の心臓がドクンと大きく脈打つ。
 いったい誰が依頼したのだと尋ねるよりも先に、鉄工翁が答えてくれる。

「依頼主からは、正体を教えないで欲しいと頼まれております。どうかご勘弁を」

「……分かった、誰かは聞かない。ただ言える範囲で構わない。良ければ依頼された当時のことを教えて欲しい」

 鉄工翁は俺を見上げて目を合わせると、わずかに目を細めた。

「そうですな……本来ワシは平野ではなく、ここより遥か北東の寒冷地の洞窟に住んでおりましてな。そこで武具をこしらえておりました。中でも一番のお得意様は、どんな武器も使いこなせてしまわれる天才で、材料を渡してワシになんでも作れとワガママを――ああ失礼。つい無駄な思い出話を……」

「いや、構わない。むしろそれも含めて聞きたい」

「分かりました。正体は明かすなとしか言われておりませぬから、思い出話は好きに語らせて頂きましょうぞ……ワシはただの鍛冶師でしたが、彼の者のおかげで希少な武具を作る機会を多く与えられ、この世界において特別な鍛冶師となることができました。今のワシがあるのは、彼の者のおかげ」

 にこりと笑い、鉄工翁の目尻のシワが深くなる。親しみを感じさせる気配に、彼の言葉が偽りではなく、心から感謝を覚えていることが伝わってくる。

 ふと何かを思い出したのか、鉄工翁が小さく吹き出す。

「いつも寒い寒いと言っておりましたなあ。白い毛皮を身体に巻いて、ワシから見れば着込みすぎな格好で……ついには、寒すぎるから平野に下りて来いとワシを抱えて、強引に別の土地に連れて行かれました。それが今のこの地です」

「北東の寒冷地からここまでとなると、かなり移動したな。平野に下りるだけなら、山のふもとすぐ近くでもいいように思うが」

 俺が疑問に思ったことを口にすると、鉄工翁は小刻みに頷いた。

「まったくもってその通り! ワシもさすがにやりすぎだと怒ったのですが、彼の者はこの地でなければいけないと頭を下げてきました――そして、ワシにこの日が来るまでに最高の武器を作り上げ、領主様に届けて欲しいと依頼してきたのです」

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