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十三話 裏切りの常習犯
才明の決断
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白鐸が息を詰める。俺の知らない話。
反発し合っているいるようで、どこか華侯焔と繋がりがあるような気配を感じてしまう。
グッ、と強く押さえられて白鐸が「ううっ」と苦しげに呻く。
「白鐸っ! 今、助ける……っ」
助けなければと立ち上がろうとするが、俺の膝は踊り、身体がふらつく。
華侯焔との距離が遠い。
羽勳も英正も地に伏し、かろうじて顔は起こすものの、立ち上がることすらできない。
俺がまだ動けるのは、白鐸の加護が常にあったからこそ。
その白鐸が俺を保護できなくなれば、俺には一切打つ手がなくなる。
華侯焔が冷ややかな目で白鐸を見下ろし、蹴り飛ばす。
見た目の大きさよりも軽い身体は、何度か地面を跳ねた後、ぐったりと横たわる。
フッ、と小さな笑いを吹き出してから、華侯焔は俺に振り向き、近づいてくる。
「これでおしまいか? だったら、もう終わらせて誠人を奪ってやろう。ずっと俺の本気を注いで、どれだけ壊れても愛してやる。お前は俺のもの――」
目に恍惚の光を帯びながら、その奥に仄暗い諦めの色が覗く。
このまま俺を組み敷くことを望んでいるのか、悲しんでいるのか分からない。
ただ、今の俺では華侯焔の本気に、力で応えることができないという事実が胸を深く突き刺してくる。
もっと足掻きたいのに。
俺は……何をしても東郷さんに敵わないのか?
何度も俺を撫で、支えてくれた大きな手が伸びてくる。
熱い指が俺の頬に触れかけたその時、
「渡しません! 今の貴方には、絶対に……っ!」
突然、横から才明が俺の身体にぶつかり、華侯焔の手から俺を逃す。
一緒に地面を擦りながら倒れ込み、すぐさま才明は膝をつきながら身体を起こし、俺を庇うように腕を広げた。
軍師と最強の将。まともに向き合って勝てるものではない。
才明を見下ろしながら華侯焔が鼻で笑う。
「どうした臆病者? 誠人と向き合うことから逃げたくせに、今さら何をする気だ?」
俺や他の者たちに対してよりも、華侯焔の才明にかける声色が冷たい。
今までの戦いではなかった威圧感が華侯焔から漂い、雰囲気だけで才明を圧しようとしてくる。
しかし才明は怯むことはなかった。
「貴方の言う通り、私は臆病者です。今この時ですら躊躇するほどですから。けれど……」
不意に才明が俺の手を握ってくる。
――ポワ。触れ合った所が、わずかに白緑の光を宿す。
「私は小賢しいだけの小者。本気の貴方に敵う訳がないと、身の程は弁えています。想いを深めても私の手には何も残らない――それでも私は、誠人様が負ける姿を見たくありません」
反発し合っているいるようで、どこか華侯焔と繋がりがあるような気配を感じてしまう。
グッ、と強く押さえられて白鐸が「ううっ」と苦しげに呻く。
「白鐸っ! 今、助ける……っ」
助けなければと立ち上がろうとするが、俺の膝は踊り、身体がふらつく。
華侯焔との距離が遠い。
羽勳も英正も地に伏し、かろうじて顔は起こすものの、立ち上がることすらできない。
俺がまだ動けるのは、白鐸の加護が常にあったからこそ。
その白鐸が俺を保護できなくなれば、俺には一切打つ手がなくなる。
華侯焔が冷ややかな目で白鐸を見下ろし、蹴り飛ばす。
見た目の大きさよりも軽い身体は、何度か地面を跳ねた後、ぐったりと横たわる。
フッ、と小さな笑いを吹き出してから、華侯焔は俺に振り向き、近づいてくる。
「これでおしまいか? だったら、もう終わらせて誠人を奪ってやろう。ずっと俺の本気を注いで、どれだけ壊れても愛してやる。お前は俺のもの――」
目に恍惚の光を帯びながら、その奥に仄暗い諦めの色が覗く。
このまま俺を組み敷くことを望んでいるのか、悲しんでいるのか分からない。
ただ、今の俺では華侯焔の本気に、力で応えることができないという事実が胸を深く突き刺してくる。
もっと足掻きたいのに。
俺は……何をしても東郷さんに敵わないのか?
何度も俺を撫で、支えてくれた大きな手が伸びてくる。
熱い指が俺の頬に触れかけたその時、
「渡しません! 今の貴方には、絶対に……っ!」
突然、横から才明が俺の身体にぶつかり、華侯焔の手から俺を逃す。
一緒に地面を擦りながら倒れ込み、すぐさま才明は膝をつきながら身体を起こし、俺を庇うように腕を広げた。
軍師と最強の将。まともに向き合って勝てるものではない。
才明を見下ろしながら華侯焔が鼻で笑う。
「どうした臆病者? 誠人と向き合うことから逃げたくせに、今さら何をする気だ?」
俺や他の者たちに対してよりも、華侯焔の才明にかける声色が冷たい。
今までの戦いではなかった威圧感が華侯焔から漂い、雰囲気だけで才明を圧しようとしてくる。
しかし才明は怯むことはなかった。
「貴方の言う通り、私は臆病者です。今この時ですら躊躇するほどですから。けれど……」
不意に才明が俺の手を握ってくる。
――ポワ。触れ合った所が、わずかに白緑の光を宿す。
「私は小賢しいだけの小者。本気の貴方に敵う訳がないと、身の程は弁えています。想いを深めても私の手には何も残らない――それでも私は、誠人様が負ける姿を見たくありません」
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