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十三話 裏切りの常習犯
残された兄の苦労
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部屋の中へと入り、東郷さんは和毅くんの枕元にあったパイプ椅子に座ると、そっと伸び切ったボソボソの髪を撫でる。優しい手付きが、確かな肉親の情を覗かせた。
「最初は何も知らなくて、ゲームの中で弟と交流を持てるのが嬉しくてたまらなかった。現実で多くのものを失ったのだから、せめてゲームの中だけでは守り抜こうと、俺は澗宇の配下として徹した……敗者が柳生田さんの手駒や奴隷になると知ったのは、俺が社会人になる頃だった」
俺はぎこちない歩きで病室に入り、立ったまま東郷さんに並ぶ。
いつも背筋を正している東郷さんが、肩を落とし、わずかに項垂れている。傷ついた気配に思わず肩を叩こうとしたが、俺は途中で手を握り込んで耐えた。
長いため息をつき、東郷さんは核心を語る。
「俺と澗宇で『至高英雄』の秘密を知りたくて調べていたが、その動きを柳生田さんに気づかれ、真実を教えられた。そして誰かが覇王となれば、魔導士に伝えて『至高英雄』の世界を消せば、負けた者がみな開放される。だが同時に、あの世界は消える――弟は、また何もかもを失う」
「そのことを、和毅くんは――」
「知っている。その上で『至高英雄』に囚われた者たちを助けたいと望んでいるんだ」
鈍い動きで東郷さんは振り向き、俺を見上げる。
何の希望も夢もない、光が消えた目。俺を見下していると感じていたこの目は、救いを求める色を見せていた。
「俺はすぐに領主を降り、澗宇は領主でも仮の肉体。柳生田さんを負かし、皆の解放を選ぶ領主を探している内に――俺に勝つことを諦めない誠人君に、夢を見てしまったんだ。だから先にゲームに参加していた坪田君に、誠人くんがゲームをするよう仕向けてもらった」
坪田の名前が東郷さんの口から出てくる。
やっぱり坪田と仕組んでいたのかという怒りが湧きかけたが、それよりも無事が知りたい気持ちが勝った。
「坪田は今、どこにいるのですか? 俺にゲームを勧めたあの日から、ずっと行方が分からないのはなぜですか?」
「すまない、それは俺も知らないんだ。誠人君の装備が選ばれなくなっていたことも、聖獣の白鐸が存在することも……」
坪田が行方不明な件に、東郷さんは関わっていないというのは本当だろうか?
信じたいが、怖い。
俺はざわつく心を鎮めるために、己を抱くようにギュッと自分の二の腕を掴んだ。
「俺を領主にして、志馬威を討ち取って欲しかったことは分かりました。でも、なぜ今になって俺に志馬威と手を組めと言い出したのですか?」
「澗宇と俺の目的が違ったからだ……俺の目的は、この世界を消さないまま澗宇の自由を守る術があるかを、魔導士に尋ね、可能性を探ることだった」
「最初は何も知らなくて、ゲームの中で弟と交流を持てるのが嬉しくてたまらなかった。現実で多くのものを失ったのだから、せめてゲームの中だけでは守り抜こうと、俺は澗宇の配下として徹した……敗者が柳生田さんの手駒や奴隷になると知ったのは、俺が社会人になる頃だった」
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長いため息をつき、東郷さんは核心を語る。
「俺と澗宇で『至高英雄』の秘密を知りたくて調べていたが、その動きを柳生田さんに気づかれ、真実を教えられた。そして誰かが覇王となれば、魔導士に伝えて『至高英雄』の世界を消せば、負けた者がみな開放される。だが同時に、あの世界は消える――弟は、また何もかもを失う」
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やっぱり坪田と仕組んでいたのかという怒りが湧きかけたが、それよりも無事が知りたい気持ちが勝った。
「坪田は今、どこにいるのですか? 俺にゲームを勧めたあの日から、ずっと行方が分からないのはなぜですか?」
「すまない、それは俺も知らないんだ。誠人君の装備が選ばれなくなっていたことも、聖獣の白鐸が存在することも……」
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信じたいが、怖い。
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「俺を領主にして、志馬威を討ち取って欲しかったことは分かりました。でも、なぜ今になって俺に志馬威と手を組めと言い出したのですか?」
「澗宇と俺の目的が違ったからだ……俺の目的は、この世界を消さないまま澗宇の自由を守る術があるかを、魔導士に尋ね、可能性を探ることだった」
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