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十二話 真実に近づく時
酔い任せの暴露合戦
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◇ ◇ ◇
夜、明日発つ俺たちのために、澗宇が宴を開いてくれた。
砦の中ということもあり、城で行われるような大仰なものではなく、身内だけで食事を楽しむようなささやかな宴。俺としてはありがたかった。
「侶普、俺がいなくなったからって澗宇に無理させるんじゃないぞ。お前がむっつり助平だってことは、最初から知ってんだからな」
酒の酔いでいつもより言いたい放題する華侯焔に、侶普は酒で頬を赤く染めながら目を据わらせて反論する。
「一緒にするな。華侯焔のほうこそ、澗宇様を困らせてばかりだった。今も誠人様を困らせていること、知っているんだからな」
「俺は誠人様のために、誠心誠意尽くしているんだよ。そこんところ、ちゃんと分かってくれているよなあ、誠人様」
隣で肉饅頭を頬張っていた俺を、華侯焔が唐突に肩を抱き寄せてくる。
顔には出ていないが、間違いなく華侯焔は酔っている。こうしていつも以上に絡みたがるのが何よりの証だ。
……食べにくい。抜け出したいところだが、力が強すぎて無理だ。
やめてくれ、と言えば余計に力を強められて、悪戯してくるのが目に見えている。
侶普の隣で食事している澗宇が、俺に申し訳無さそうな顔を向けている。
このままだと兄の威厳が消え果てるぞ――と思っていると、
「華侯焔様、誠人様が困っています! どうかお離し下さい」
突然グイッと俺を華侯焔から引き離し、英正が俺を守るように抱き締めてきた
いつもの英正らしくない行動。まさかと思って顔を見てみれば、顔どころか耳や首まで真っ赤になり、酔いがひどく回っていた。
「大丈夫ですか? 誠人様の心穏やかな食の時間を、私が必ずお守りしますから」
「おい英正、何してくれているんだ? 俺様から誠人様を奪おうなんざ百年早い」
「力の差を恐れて何もせぬことは、主君を見殺すことも同じ。臣下は自らの保身を考えず、常に主君に身を捧げる覚悟を持て……と侶普様から教わりました」
「チッ、滞在している間に侶普から稽古を受けていたことは知っていたが、余計なことまで仕込みやがって」
酔った英正を睨みつけた後、華侯焔は侶普に心底嫌そうなしかめっ面を向けた。
「まったく、つくづくお前は俺に嫌がらせしてくるんだな! 酒の場は無礼講だ。貴重な主従の触れ合いは、互いの絆を深めるっていうのに」
「主を一晩中抱き潰しておきながら、それでも足らぬのか。強欲にも程がある。もっと自制しろと言ってもできぬだろうから、英正に忠臣の心得を与えたまでのことだ」
「お前がそれを言うな、侶普。いつも澗宇を独り占めしているクセに。少し離れていただけで、後で周りが見えなくなるほどやりやがって……」
「覗き見ていたのか! 恥を知れ!」
「見たくて見たんじゃない! 廊下でやるな。せめて部屋の中でやれ。お前のほうこそ、盗み聞きするな!」
「聞こうと思って聞いたんじゃない! 部屋が隣で聞こえてしまったんだ!」
酔い任せに二人して暴露合戦はやめろ。主君の羞恥を晒さないでくれ。
華侯焔を止めたくても、英正が渡すまいと俺を抱き締めてきて身動きが取れない。澗宇は羞恥に耐えられず、その場に丸まってうずくまってしまっている。
誰も止めることができないまま、華侯焔と侶普の暴露混じりな言い合いは続いてしまった。
夜、明日発つ俺たちのために、澗宇が宴を開いてくれた。
砦の中ということもあり、城で行われるような大仰なものではなく、身内だけで食事を楽しむようなささやかな宴。俺としてはありがたかった。
「侶普、俺がいなくなったからって澗宇に無理させるんじゃないぞ。お前がむっつり助平だってことは、最初から知ってんだからな」
酒の酔いでいつもより言いたい放題する華侯焔に、侶普は酒で頬を赤く染めながら目を据わらせて反論する。
「一緒にするな。華侯焔のほうこそ、澗宇様を困らせてばかりだった。今も誠人様を困らせていること、知っているんだからな」
「俺は誠人様のために、誠心誠意尽くしているんだよ。そこんところ、ちゃんと分かってくれているよなあ、誠人様」
隣で肉饅頭を頬張っていた俺を、華侯焔が唐突に肩を抱き寄せてくる。
顔には出ていないが、間違いなく華侯焔は酔っている。こうしていつも以上に絡みたがるのが何よりの証だ。
……食べにくい。抜け出したいところだが、力が強すぎて無理だ。
やめてくれ、と言えば余計に力を強められて、悪戯してくるのが目に見えている。
侶普の隣で食事している澗宇が、俺に申し訳無さそうな顔を向けている。
このままだと兄の威厳が消え果てるぞ――と思っていると、
「華侯焔様、誠人様が困っています! どうかお離し下さい」
突然グイッと俺を華侯焔から引き離し、英正が俺を守るように抱き締めてきた
いつもの英正らしくない行動。まさかと思って顔を見てみれば、顔どころか耳や首まで真っ赤になり、酔いがひどく回っていた。
「大丈夫ですか? 誠人様の心穏やかな食の時間を、私が必ずお守りしますから」
「おい英正、何してくれているんだ? 俺様から誠人様を奪おうなんざ百年早い」
「力の差を恐れて何もせぬことは、主君を見殺すことも同じ。臣下は自らの保身を考えず、常に主君に身を捧げる覚悟を持て……と侶普様から教わりました」
「チッ、滞在している間に侶普から稽古を受けていたことは知っていたが、余計なことまで仕込みやがって」
酔った英正を睨みつけた後、華侯焔は侶普に心底嫌そうなしかめっ面を向けた。
「まったく、つくづくお前は俺に嫌がらせしてくるんだな! 酒の場は無礼講だ。貴重な主従の触れ合いは、互いの絆を深めるっていうのに」
「主を一晩中抱き潰しておきながら、それでも足らぬのか。強欲にも程がある。もっと自制しろと言ってもできぬだろうから、英正に忠臣の心得を与えたまでのことだ」
「お前がそれを言うな、侶普。いつも澗宇を独り占めしているクセに。少し離れていただけで、後で周りが見えなくなるほどやりやがって……」
「覗き見ていたのか! 恥を知れ!」
「見たくて見たんじゃない! 廊下でやるな。せめて部屋の中でやれ。お前のほうこそ、盗み聞きするな!」
「聞こうと思って聞いたんじゃない! 部屋が隣で聞こえてしまったんだ!」
酔い任せに二人して暴露合戦はやめろ。主君の羞恥を晒さないでくれ。
華侯焔を止めたくても、英正が渡すまいと俺を抱き締めてきて身動きが取れない。澗宇は羞恥に耐えられず、その場に丸まってうずくまってしまっている。
誰も止めることができないまま、華侯焔と侶普の暴露混じりな言い合いは続いてしまった。
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