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十二話 真実に近づく時

昂命との面会

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   ◇ ◇ ◇

 夕刻頃、俺は英正を護衛につけて牢に足を運んだ。

 地下の階段を降りるにつれて、先に話を聞き出しに行っていた才明と昂命の声が聞こえてくる。どちらも軍師だからか、感情がこもらない淡々とした会話だ。

「才明、何か分かったことはあるのか?」

 俺が話かけると、牢の前で話し込んでいた才明がにこやかに振り返る。後ろ手に縛られながら壁にもたれかかる昂命も、俺たちに気づいて眉を上げる。

「フフフ……のらりくらりとかわされて、腹立たしい限りですよ」

 朗らかそうな笑顔の時ほど、才明は怒っている。
 ずっと確信を得られない話に付き合わされて、神経をすり減らしていることを察してしまう。

 それでも糸目を薄く開き、意味ありげな流し目を牢の中の昂命に送る。

「ですが、まあ収穫はありました。私が知り得る情報と、彼の話す時のクセと、会話の内容を合わせていけば、見えてくるものがいくつもありますし」

「へえ? オレ、何ひとつ本当のことなんて話していないんだけど?」

 昂命の挑発的な声が牢の中から飛んでくる。だが、

「分かっていないですねえ。貴方にとって嘘をつく価値がないと思うものでも、私たちには価値があるのですよ。それに今のセリフ、嘘でも本当でも、つまりは真実を口にしたことがある、という証明になりますから」

 さらりと才明に揚げ足を取られて、昂命が苦笑いした。

「うわぁ、性格悪いなあ。ネチネチしたヤツは嫌われるよ。あっちのほうもしつこいんじゃない、領主様?」

 昂命が視線と話を俺に移してくる。
 あっちとは何を指しているのがよく分からず顔をしかめていると、昂命は小さく吹き出した。

「なんでそんなに初なままなの? 三人も同時に相手しているんでしょ? これは稀有な逸材だ」

 ようやく言われた内容を理解して、俺の顔が熱くなる。

 昂命のペースに呑まれては駄目だ。毅然とした態度でいなければ。
 俺の恥部を握られているという居心地の悪さを覚えながらも、俺は昂命を見据えた。

「このような所で過ごさせることになって申し訳ない。俺の城に連れていくことになるが、自由にはさせられないまでも、せめて寝食に困らない部屋を用意させてもらう」

「優しいなあ。でも領主様、それって甘チャンだって言われない? 後ろのワンちゃんは不満持ってそうだけど」

 誰のことを指しているか一瞬分からなかったが、俺の後ろに控えているのは英正しかいない。

 わずかに振り返って横目で見やると、英正は今にも胸ぐらを掴んで殴りかかりそうなほど険しい顔を浮かべていた。

「英正、思うところはあると思うが、感情任せに捕虜に手を上げることがないようにして欲しい」

「……はい。誠人様がそれを望まれるなら、従います」

 口は従順な言葉を言いながらも、英正の顔は不満いっぱいのしかめっ面だ。
 なるべく英正には昂命を見せないほうがいいと思いながら、俺は顔を牢に向き直す。

「甘いと思うなら思えばいい。俺はいたずらに相手を傷つけることはしたくない」
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