俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

文字の大きさ
上 下
268 / 345
十二話 真実に近づく時

捕獲

しおりを挟む
 昨夜、才明は澗宇たちと打ち合わせをしていた。華侯焔も砦に残って澗宇と話をしている。そこで昂命を捕らえたいことや、どうするといいかの話はしているはず。

 あくまで捕獲。倒すことが目的じゃない。
 ならばこの攻撃は――。

 俺は地を蹴り、手を伸ばしながら昂命に向かう。

「何を――うわっ」

 妙な動きを取られる前に俺が昂命に体当たりし、地面に押さえ込む。それと同時に、才明の仕掛けたものが俺たちに降りかかった。

 ばさり。
 微光を帯びた網。肌に触れた瞬間、わずかにピリッと痺れが走る。俺が感じるのはその程度だが、

「ウウ……ッ!」

 昂命は身体を大きく跳ねさせ、硬直し、小刻みに震え出す。
 どうやら網には痺れる術が施されているらしい。俺にほぼ効かないのは、白鐸の加護があるからだろう。

 すぐに皆が俺の所に駆けつけた。

「誠人様、大丈夫か? ……おい才明、巻き込む前提で仕掛けるな!」

 華侯焔の非難を浴びながら、才明は白鐸から降りて微笑む。

「仕方ありません。誠人様に押さえてもらわなければ、魔法で逃げてしまいますから。白鐸の加護を強くかけてもらっていますので、どうかご安心を」

「お前な……誠人様に何も言ってないだろ?」

「動きを読まれないための策ですよ。誠人様なら自ずと気づいて動いて下さると信じておりました」

 才明に言われて、チラリと華侯焔がこちらを見る。昂命を押さえ込み続ける俺に、フッと嬉しげな笑みを浮かべる。

 言葉にしないだけで、どうやら華侯焔の期待に応えられたらしい。
 内心そのことを密かに嬉しく思っていると、英正がしゃがみ込み、俺を覗き込む。

「私が代わって差し上げたいのですが、白鐸様の術は誠人様のみにしか効きません。これから砦まで戻りますので、どうかこのまま昂命を押さえて頂けますか?」

 短く「分かった」と頷いてから、俺はふと気になったことを英正に尋ねる。

「英正、さっきの攻撃は本気で討つものだったが、それも才明に指示されていたのか? 魔法で避けられることを見越して」

 捕らえる目的なのに、英正の攻撃は明らかに加減がなかった。当たれば確実に昂命の命を絶つ攻撃だった。

 英正の瞳が、ほの暗く翳る。

「……いえ、私の独断です」

 多くを語ろうとしない英正にもどかしさを覚えたが、苦しげな顔を見せられると何も言えなくなる。

 これ以上は追い詰めてはいけないと考えている最中、俺と昂命の身体が網に包まれたままフワリと浮かんだ。

「ではこのまま砦に戻りますよー。誠人様はソイツをしっかり抱えていて下さいねー。そうしないと、無駄に痺れて壊れちゃうかもしれないのでー」

 そんな術をいつの間に使えるようになったんだ、白鐸……。

 成長して白鐸が強くなった片鱗を見つつ、壊れてしまっては困るからと、俺は昂命になるべく網が触れないよう、空中で抱え込んだ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

処理中です...