261 / 345
十二話 真実に近づく時
澗宇の素顔
しおりを挟む
◇ ◇ ◇
目が覚めると、もう日は高く昇っていた。
気だるい身体を起こし、しばらくぼうっとしてから俺は大きく息をつく。
「……どうしてあんなに体力があるんだ、焔は」
昨晩のことが頭に浮かび、思わず独り言を漏らしてしまう。
露天風呂を出て部屋に戻った後、俺は延々と華侯焔に抱かれた。
どれだけ果てたかなど覚えていない。途中からはずっと絶頂の上を歩き続けているような感覚で、訳が分からず喘いでいたような気がする。
何度も意識は途絶えたが、その間もゆっくりと俺を愛撫して、かすかに浮上した意識を再び快楽の底に沈めてきた。
ようやく眠りの世界へ行くことを許してくれたのは、窓の外が白ばみ始めた頃。
そんな夜を過ごしておきながら、すでに華侯焔は起床して部屋を出ていた。
今までの中で一番執拗に抱かれてしまった。
我慢させるとここまで酷くなるというなら、毎日構って発散させたほうがいい。
胸の奥にむず痒さと熱を覚えながら、俺は寝台から離れた。
身支度を終えて部屋を出た時、隣の部屋から同じように出てくる人影があった。
俺が顔を向けるよりも先に、朗らかな声が俺を呼んだ。
「誠人さん、おはようございます。よく眠れましたか?」
そこには緩やかな衣服をまとった澗宇が、どこか気恥ずかしそうに微笑んでいた。
「あ、ああ、おはよう澗宇。こんな時間まで寝てしまって面目ない」
「そんな、僕も今起きたところですから。せっかくですし一緒に食堂へ行きましょう」
どこか焦り気味に言うと、澗宇は俺の隣に並んで見上げてくる。
襟から覗く澗宇の細い首筋に、赤い痕。
昨夜、隣の部屋で何があったのかを察してしまい、俺の頬が熱くなった。
おそらく相手は侶普なのだろう。
常に身近に控え、特別な情を交わしている間柄であることは見て取れる。
頭では理解していたつもりだったが、いざ生々しい痕跡を見つけてしまうと動揺してしまう。
そんな俺を見つめながら、澗宇は苦笑しつつ頬を掻く。
「安心して下さい。ここの壁は厚いですから、声は聞こえておりません。こちらの声も聞こえていなかったと思いますし」
「あ……す、すまない。この世界で必要なことなのは分かっているんだが、人のこととなると免疫がなくて……」
「動揺して当然ですよね! いえ、あの実は僕も、こういうことに慣れている訳ではないので――」
俺の羞恥心が移ったように、澗宇も頬を赤くしてしどろもどろになってしまう。
この世界に馴染み切っていた澗宇から、素の顔が覗く。
落ち着かなくなりながらも、その一面が見えて嬉しく思う。
弱肉強食と陰謀の中、それらとは縁を感じさせない存在。配下ではなくとも、俺も守りたいと心から望みたくなる。
目が覚めると、もう日は高く昇っていた。
気だるい身体を起こし、しばらくぼうっとしてから俺は大きく息をつく。
「……どうしてあんなに体力があるんだ、焔は」
昨晩のことが頭に浮かび、思わず独り言を漏らしてしまう。
露天風呂を出て部屋に戻った後、俺は延々と華侯焔に抱かれた。
どれだけ果てたかなど覚えていない。途中からはずっと絶頂の上を歩き続けているような感覚で、訳が分からず喘いでいたような気がする。
何度も意識は途絶えたが、その間もゆっくりと俺を愛撫して、かすかに浮上した意識を再び快楽の底に沈めてきた。
ようやく眠りの世界へ行くことを許してくれたのは、窓の外が白ばみ始めた頃。
そんな夜を過ごしておきながら、すでに華侯焔は起床して部屋を出ていた。
今までの中で一番執拗に抱かれてしまった。
我慢させるとここまで酷くなるというなら、毎日構って発散させたほうがいい。
胸の奥にむず痒さと熱を覚えながら、俺は寝台から離れた。
身支度を終えて部屋を出た時、隣の部屋から同じように出てくる人影があった。
俺が顔を向けるよりも先に、朗らかな声が俺を呼んだ。
「誠人さん、おはようございます。よく眠れましたか?」
そこには緩やかな衣服をまとった澗宇が、どこか気恥ずかしそうに微笑んでいた。
「あ、ああ、おはよう澗宇。こんな時間まで寝てしまって面目ない」
「そんな、僕も今起きたところですから。せっかくですし一緒に食堂へ行きましょう」
どこか焦り気味に言うと、澗宇は俺の隣に並んで見上げてくる。
襟から覗く澗宇の細い首筋に、赤い痕。
昨夜、隣の部屋で何があったのかを察してしまい、俺の頬が熱くなった。
おそらく相手は侶普なのだろう。
常に身近に控え、特別な情を交わしている間柄であることは見て取れる。
頭では理解していたつもりだったが、いざ生々しい痕跡を見つけてしまうと動揺してしまう。
そんな俺を見つめながら、澗宇は苦笑しつつ頬を掻く。
「安心して下さい。ここの壁は厚いですから、声は聞こえておりません。こちらの声も聞こえていなかったと思いますし」
「あ……す、すまない。この世界で必要なことなのは分かっているんだが、人のこととなると免疫がなくて……」
「動揺して当然ですよね! いえ、あの実は僕も、こういうことに慣れている訳ではないので――」
俺の羞恥心が移ったように、澗宇も頬を赤くしてしどろもどろになってしまう。
この世界に馴染み切っていた澗宇から、素の顔が覗く。
落ち着かなくなりながらも、その一面が見えて嬉しく思う。
弱肉強食と陰謀の中、それらとは縁を感じさせない存在。配下ではなくとも、俺も守りたいと心から望みたくなる。
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説




美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる