上 下
243 / 345
十二話 真実に近づく時

胸のざわつき

しおりを挟む
   ◇ ◇ ◇

 食事を終え、湯殿で身を清めた後。俺は白鐸とともに部屋へ向かう。

 中へ入る直前、白鐸は不満げに唸りながら俺に話しかけてきた。

「一応声が聞こえないように防音の術をかけておきますけど、何かあれば助けてと念じて下さいー。この白鐸、すぐに扉を破ってお守りしに参りますからー」

「ありがとう白鐸……才明と込み入った話をするかもしれないから、そうしてくれて助かる」

「きっと話だけで済まないと思いますしー。みんながムラムラして一睡もできない、なんてなったら困りますしねー。あと華侯焔が乱入して、寝台がめちゃくちゃになってお家の人に迷惑かけるのもイヤですしー」

 ……確かに華侯焔が絡むと大変なことになる。いつもの領主の寝台と違って、客人用の寝台だ。下手すると壊れる。そういった意味でも才明が相部屋で良かったと思う。

 そして別々の部屋に入ると、俺は奥の寝台に腰かけた。

 家人が貸してくれた白い寝間着は、居城の時と同じような滑らかさだが、匂いが違う。どこか甘やかな花の香がする。

 部屋は飾り気がないものの、寝台の敷布も手触りが良く、少しでも心地よい眠りを与えられるようにと気が配られている。細やかな気遣いに感謝するばかりだ。

 一度大きく深呼吸して、軽く目を閉じ、己の中を見つめる。

 現実では試合前にやるようにしている軽い瞑想。心の乱れは負けに繋がるからと始めたことだ。

 ――胸の奥がざわついている。
 これは決勝で東郷さんと当たるからと意気込み過ぎてしまい、鎮め切れない時と似ている。

 早くどうにかしたいという焦りと、まだ未熟な俺が覇者を成すことができるだろうかという不安。

 華侯焔は問題があるからと、才明を俺と同じ部屋にした。
 ただでさえ未熟さがあるというのに、勝ち上がるための道に綻びがあるとなれば、小さく見える勝機すら消え失せてしまう。

 武の力は俺たちには劣るが、軍師として頼もしい才明。

 俺たちの関係は特に問題ないはずだと思う。
 ゲームで身体の関係を持ちながら、現実では目的を同じとする同志。そのために必要なことだからと、身体を重ねることを互いに受け入れている。

 何が問題なのかが分からない。
 華侯焔には見えている綻びが俺には分からなくて、胸のざわつきを強めていると、

「誠人様、入ってもよろしいでしょうか?」

 扉の向こうから才明が声をかけてくる。
 重くなった唾を飲み込んでから、俺は「入ってくれ」と許可を出す。

 中に入ってきた才明は、入浴で赤く火照った肌を黒い寝間着で包んでいた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...