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十二話 真実に近づく時

不調?

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   ◇ ◇ ◇

 日が暮れて、俺たちは侶普に案内されて街に向かった。

 資源が豊富な領土。領主の居城から離れた地まで豊かさは行き渡っているようで、人々が賑わう街だった。

 騎乗したまま大通りを行き、閑静な場所へと移っていく。
 漆喰の壁に囲まれた屋敷が並ぶそこは、どうやら高官か武将の住居が集まる所らしかった。

 その中でも一番大きな屋敷の前に着くと、侶普は馬を降りた。

「本日はこちらで一泊致します。中の者に知らせて参りますので、今しばらくお待ち下さい」

 深々と一礼すると、侶普は踵を返して屋敷の中へと入っていく。

 俺も馬を降りようとした時、華侯焔が英正の肩を組み、妙に絡んでいる様子が目に入った。

 仲良く雑談しているなら別に気にならないが、英正の顔が明らかに困っている。頬も赤い。真面目な英正に対して遊び半分にからかっているのだとしたら、領主として放ってはおけない。

 俺は二人に近づき、華侯焔に視線を向けて軽く牽制しながら尋ねる。

「何を話しているんだ?」

 振り向いた華侯焔の顔は、明らかに面白がっている笑みを浮かべていた。

「英正に誠人様との合わせ技がどうだったか聞いていたんだよ。やっぱりヨかっただろ?」

「そ、それは、その……誠人様のお役に立てているのが分かって、光栄でした」

「一体感がすごかっただろ? あんなの覚えちまったら、身も心も捧げたくなるだろ?」

「はい……至福の時でした。誠人様のすべてが伝わり、私のすべても伝わる……夢のようで、頭が幸せでおかしくなりそうで……」

「分かる。よく分かるぞ英正。だがこれで限界じゃない。回数を重ねれば、さらにヨくなるんだ」

「あの時よりも、さらに……!?」

「少しでも機会があればヤれ。遠慮するな。それが誠人様のためになる――」

 ……頭では合わせ技のことだと分かっているが、どう聞いても情事のことを言っているようにしか思えない。

 これはアドバイス。華侯焔が英正のためにアドバイスを送っているだけなんだ。だから俺は恥ずかしく思う必要は――駄目だ。今すぐ頭を抱えてこの場から逃げたくなる。

 取り敢えず問題はないと判断して、気を逸らせようと才明のほうへ目を向ける。

 馬を降りたまま、ぼんやりしている才明に気づいて、俺は肩を揺すった。

「才明、大丈夫か?」

「あ……誠人、様」

「連日の移動で疲れが出たのか? 無理をさせて済まないが、潤宇の元に着くまでは耐えてくれ」

 珍しく気が抜けた顔で頭を上げると、才明は鈍い動きで頷く。

「分かっております。いくら前線で武器を取らぬ軍師であれども、これぐらいで音を上げるような鍛え方はしておりませんから」

 小さく笑う才明に、普段の不敵さや余裕が戻ってくる。しかし、それでもどこか弱っている気配が溢れていた。
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