上 下
236 / 345
十一話 大きな前進

心地よい同調

しおりを挟む
 次の瞬間、俺の身体から重みが消える。
 確かに立っているはずなのに、空に浮かんでいるような無の感覚。

 ゆっくりと目を開けてみれば、俺は青白い微光をまとっていた。

「これは……」

 向かい側の英正に目を向けると、俺と同じように光を帯びている。髪の毛は逆立ち、周りで火花が散り、強さに溢れた姿。

 英正の雷獣化だ。しかしこの状態になると理性が消え失せ、狂戦士化すると聞いているが、今の英正から目の光は消えていない。自我を保ったままだ。

 もしかして英正との合わせ技は、二人とも雷獣化する効果があるのだろうか?

 試しに動いてみようと俺が棒を構えると、同じように英正も構える。
 わずかに英正が戸惑いの気配を見せた。

「ま、誠人様、身体が勝手に動いてしまいます」

「なんだって? まさか……」

 俺はその場で棒を振り回し、攻撃の型を繰り出してみる。
 すると英正も同じ動きをする。俺とまったく同じタイミングと速さで――まるで合わせ鏡だ。

「俺と同調して動くようだな。英正の意思で身体を動かすことはできるのか?」

 動きを邪魔しないよう俺が待機すると、英正は棒を振ったり跳んだりして自在に動く。どうやら俺が動かなければ自分の意思で動けるらしい。

 この技は一定時間の間、二人で雷獣化の力を宿しながら俺の動きに合わせて猛攻を仕掛けられる技のようだ。つまり――。

「英正、俺の隣に並んでくれるか?」

「はい、ただちに!」

 俺の指示に英正が素早く動き、肩がぶつからない程度の隣に並ぶ。

 横目でその様を確かめると、俺は棒を構えて駆け出した。

 敵に囲まれた状況をイメージしながら、襲い来る者たちを蹴散らし、前進する動きを取る。

 英正はきれいに俺と同じ動きを取り、棒の風切り音がひとつに重なる。
 寸分違わない動き――美しくて、まったくズレない感覚が心地良い。

 間違いなく隣にいると分かっているのに、俺と英正が完全に溶け合い、ひとつの個として動いているような気分になる。

 まるで英正と踊っているかのような感覚だ。楽しい。どこまでも胸が弾んで、動き続けたくてたまらない。

 ふと隣を見やれば英正も俺を見る。意思を持って動けば、俺と動きを同調している最中でも、目などの細かな部分は違う動きができるらしい。

 視線が合い、互いに笑い合う。
 元々分かりやすい英正の心が、すべて伝わってくる気がする。恐らく英正も俺の心を見てしまっているのだろう。

 英正なら知られてもいい。
 俺だけのために生きて、すべてを捧げているこの男なら――。

 少しずつ身体に重みが戻っていく感覚で、技が途切れる気配を察する。
 最後に確かめておきたいことがあり、俺は英正とともに高く跳躍する。棒を高く構えて先端に力を集めていけば、どちらの棒にも炎の渦が生まれた。

 大きく振り下ろした瞬間、俺たちは同時に叫んでいた。

「「雷獣炎舞撃!!」」

 一帯に大きな炎の渦が現れ、激しい熱風が吹き荒れる。

 隅で様子をうかがっていた兵たちにも届いているらしく、腕で顔を覆い、中には驚いて腰を抜かしている者もいた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...