234 / 345
十一話 大きな前進
出立の準備
しおりを挟む
頭を抱えるしかない俺をよそに、才明が場を仕切り始める。
「これより出立の準備を行います。明日には向かいますので、各自、準備をお願いします。白鐸には尊朔攻略のための拠点強化や、羽勳たちに授ける計略の準備を手伝って頂きたいので、私と一緒に軍議室へ来て下さい」
「分かりましたー。力が強くなって遠距離支援も出来るようになりましたから、前よりも打てる手が増えましたからー」
白鐸の身体が軽く反る。どうやら胸を張っているらしい。本当に特大の毛玉で奇妙な動きになっているが頼もしい。
それから才明は華侯焔に視線を移し、ニコリと微笑む。
「華侯焔殿には羽勳を始めとする武将たちに、技を授けてもらいます」
「は? 今日だけで覚えさせろってことか? 前から計画していたなら、もっと早くに言えよ」
「登用武将の情報はどの領主でも見ることができますから、前から準備していたら警戒される可能性がありましたから。電光石火ということで……貴方ならできますよね、華侯焔?」
詳細を知らない俺でも、一日で技を教えるというのが大変なのは分かる。華侯焔が顔をしかめていることからも伺い知れる。
ハァ、と大きな息をついてから、華侯焔は短く頷いた。
「分かった。それが必要なことなら、今から本気でアイツらに教え込んでやる」
面倒そうに了承した後、華侯焔の目が俺に向く。
口端が引き上がり、不敵な笑みが浮かぶ。
「俺の指導は高くつくぞ。夜に追加で褒美はもらうからな」
……堂々と夜に抱く宣言はしないで欲しい。
俺に複数人を相手にさせるよう仕向けながら、自分が特別であると才明や英正に牽制するあたり、独占欲が溢れ出ている。
この大事でヘソを曲げられても困る。俺は「分かった」と頷くしかなかった。
話はこれで終わりだと解散する流れになった時、俺は英正を呼び止めた。
「英正、今から手合わせをしたいんだが、時間は取れるか?」
「はいっ、大丈夫です! 相手に選んで頂き光栄です」
ずっと険しい顔だったのに、俺に話しかけられた途端に英正の表情が晴れやかになる。
留守番をしていた番犬が、帰宅した飼い主に構ってもらって喜びを露わにする姿と英正が重なってしまう。思わず吹き出しそうになっていると、才明の声が飛んできた。
「手合わせをされるのでしたら、お二人の合わせ技の確認をされてはいかがですか?」
英正との合わせ技。華侯焔と放ったもののような大技を、英正とも――。
思わず俺の胸が期待で熱くなってしまう。
そんな俺を見て、英正は目が柔らかな弧を描く。
俺と同世代で青さを感じさせていた英正から、大人びいた落ち着きと優しさが覗く。
成長したを嬉しく思いながらも、俺を置いて遥かな成長を遂げてしまった英正が気になって仕方がなかった。
「これより出立の準備を行います。明日には向かいますので、各自、準備をお願いします。白鐸には尊朔攻略のための拠点強化や、羽勳たちに授ける計略の準備を手伝って頂きたいので、私と一緒に軍議室へ来て下さい」
「分かりましたー。力が強くなって遠距離支援も出来るようになりましたから、前よりも打てる手が増えましたからー」
白鐸の身体が軽く反る。どうやら胸を張っているらしい。本当に特大の毛玉で奇妙な動きになっているが頼もしい。
それから才明は華侯焔に視線を移し、ニコリと微笑む。
「華侯焔殿には羽勳を始めとする武将たちに、技を授けてもらいます」
「は? 今日だけで覚えさせろってことか? 前から計画していたなら、もっと早くに言えよ」
「登用武将の情報はどの領主でも見ることができますから、前から準備していたら警戒される可能性がありましたから。電光石火ということで……貴方ならできますよね、華侯焔?」
詳細を知らない俺でも、一日で技を教えるというのが大変なのは分かる。華侯焔が顔をしかめていることからも伺い知れる。
ハァ、と大きな息をついてから、華侯焔は短く頷いた。
「分かった。それが必要なことなら、今から本気でアイツらに教え込んでやる」
面倒そうに了承した後、華侯焔の目が俺に向く。
口端が引き上がり、不敵な笑みが浮かぶ。
「俺の指導は高くつくぞ。夜に追加で褒美はもらうからな」
……堂々と夜に抱く宣言はしないで欲しい。
俺に複数人を相手にさせるよう仕向けながら、自分が特別であると才明や英正に牽制するあたり、独占欲が溢れ出ている。
この大事でヘソを曲げられても困る。俺は「分かった」と頷くしかなかった。
話はこれで終わりだと解散する流れになった時、俺は英正を呼び止めた。
「英正、今から手合わせをしたいんだが、時間は取れるか?」
「はいっ、大丈夫です! 相手に選んで頂き光栄です」
ずっと険しい顔だったのに、俺に話しかけられた途端に英正の表情が晴れやかになる。
留守番をしていた番犬が、帰宅した飼い主に構ってもらって喜びを露わにする姿と英正が重なってしまう。思わず吹き出しそうになっていると、才明の声が飛んできた。
「手合わせをされるのでしたら、お二人の合わせ技の確認をされてはいかがですか?」
英正との合わせ技。華侯焔と放ったもののような大技を、英正とも――。
思わず俺の胸が期待で熱くなってしまう。
そんな俺を見て、英正は目が柔らかな弧を描く。
俺と同世代で青さを感じさせていた英正から、大人びいた落ち着きと優しさが覗く。
成長したを嬉しく思いながらも、俺を置いて遥かな成長を遂げてしまった英正が気になって仕方がなかった。
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説




美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。


【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる