231 / 345
十一話 大きな前進
才明の狙い
しおりを挟む
表涼、なんて罪深い奴なんだ。
ここまで武将たちを虜にしてしまうとは、最早ただの好色ではなく、華侯焔とは違った傾国の将に育った気がする。
これはどう判断すれば良いのだろうかと頭を悩ませていると、才明が「分かりました」と切り出した。
「第二位に挑むというのは、非常に大きな動き。今すぐここで決断することはできませんが、最優先事項として誠人様と考えることをお約束します」
羽勳たちから「おおっ」と驚きと期待が溢れた声が上がる。
そうして彼らは表情を明るくしながら、「失礼します」と一礼し、大広間を出て行った。
バタンッ、と白鐸が扉を閉じてくれる。そして飛び跳ねながら俺たちに近づいてきた。
「すごいですねー表涼。こんなに男たちを手玉に取るなんて」
「あ、ああ。ちょっとまだ、驚きで頭が上手く回らない――才明?」
ふと才明から忍び笑いが聞こえて振り向くと、彼は口元を手で覆いながら軽くうつむき、肩を震わせていた。
「いえ……まさか、こんなに効果があるとは思いませんでした」
ひとしきり笑ってから、才明は顔を上げ、自慢げな笑みを浮かべる。
「実はこうなるよう、私が表涼へ密かに指示をしていたのです。彼らを夢中にさせ、自ら戦いたいと言い出すようにして欲しいと」
「ええっ! 誠人サマに隠れて、何やっちゃってるんですかー!」
白鐸が俺の代わりに才明に尋ねながらツッコミを入れてくれる。
才明は小さく頷いてから、胸元で拝手し、俺に頭を下げた。
「勝手なことをして申し訳ありません。ただ、これには大きな狙いがあるのです」
「才明がすることには意味があることは承知している。狙いは何か教えて欲しい」
「はい。我々の目的は、一日でも早く第一位を倒して覇者となること。そのためにひとつずつ目的を果たすのではなく、同時進行できればと考え、羽勳たちの士気と欲求を高めて第二位攻略に仕向けました。武将の層も厚くなりましたから、誠人様が不在でも成果は見込めるかと」
才明は『至高英雄』の裏を知り、現実で俺に協力を約束してくれた仲林アナだ。
ただゲームを攻略したいのではない。一日でも早く、敗者となって奴隷となっているプレイヤーたちを解放する目的で、俺たちは動いている。
確かに配下の武将たちだけで第二位を攻略できるなら、その分、俺は別のことができる。才明の真の狙いを理解し、俺は「顔を上げてくれ」と促す。
「才明。俺のために動いてくれたこと、感謝する。それで俺は戦場へ出ず、何をすればいいんだ?」
「第一位である志馬威を倒すための準備をして頂きたい。まずは我らの後ろ盾になっている潤宇に協力を仰ぐため、誠人様には潤宇の本城へ足を運んで頂きたい。大事ですから、領主自ら出向いて誠意を見せる必要があります」
ここまで武将たちを虜にしてしまうとは、最早ただの好色ではなく、華侯焔とは違った傾国の将に育った気がする。
これはどう判断すれば良いのだろうかと頭を悩ませていると、才明が「分かりました」と切り出した。
「第二位に挑むというのは、非常に大きな動き。今すぐここで決断することはできませんが、最優先事項として誠人様と考えることをお約束します」
羽勳たちから「おおっ」と驚きと期待が溢れた声が上がる。
そうして彼らは表情を明るくしながら、「失礼します」と一礼し、大広間を出て行った。
バタンッ、と白鐸が扉を閉じてくれる。そして飛び跳ねながら俺たちに近づいてきた。
「すごいですねー表涼。こんなに男たちを手玉に取るなんて」
「あ、ああ。ちょっとまだ、驚きで頭が上手く回らない――才明?」
ふと才明から忍び笑いが聞こえて振り向くと、彼は口元を手で覆いながら軽くうつむき、肩を震わせていた。
「いえ……まさか、こんなに効果があるとは思いませんでした」
ひとしきり笑ってから、才明は顔を上げ、自慢げな笑みを浮かべる。
「実はこうなるよう、私が表涼へ密かに指示をしていたのです。彼らを夢中にさせ、自ら戦いたいと言い出すようにして欲しいと」
「ええっ! 誠人サマに隠れて、何やっちゃってるんですかー!」
白鐸が俺の代わりに才明に尋ねながらツッコミを入れてくれる。
才明は小さく頷いてから、胸元で拝手し、俺に頭を下げた。
「勝手なことをして申し訳ありません。ただ、これには大きな狙いがあるのです」
「才明がすることには意味があることは承知している。狙いは何か教えて欲しい」
「はい。我々の目的は、一日でも早く第一位を倒して覇者となること。そのためにひとつずつ目的を果たすのではなく、同時進行できればと考え、羽勳たちの士気と欲求を高めて第二位攻略に仕向けました。武将の層も厚くなりましたから、誠人様が不在でも成果は見込めるかと」
才明は『至高英雄』の裏を知り、現実で俺に協力を約束してくれた仲林アナだ。
ただゲームを攻略したいのではない。一日でも早く、敗者となって奴隷となっているプレイヤーたちを解放する目的で、俺たちは動いている。
確かに配下の武将たちだけで第二位を攻略できるなら、その分、俺は別のことができる。才明の真の狙いを理解し、俺は「顔を上げてくれ」と促す。
「才明。俺のために動いてくれたこと、感謝する。それで俺は戦場へ出ず、何をすればいいんだ?」
「第一位である志馬威を倒すための準備をして頂きたい。まずは我らの後ろ盾になっている潤宇に協力を仰ぐため、誠人様には潤宇の本城へ足を運んで頂きたい。大事ですから、領主自ら出向いて誠意を見せる必要があります」
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる