俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

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十話 至高への一歩

最初の褒美は

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   ◇ ◇ ◇

 太史翔の城から離れ、一番近くにある俺の城で戦勝の宴を開いている最中のことだった。
 俺の近くに集まった華侯焔と才明と英正が、何やら話し込んでいることに気づく。

 領主を討ったことで周囲が盛り上がるせいで騒がしく、彼らの話し声は聞こえてこない。
 ただ、戦いの後にこの三人が話すことと言えば、大体が褒美の話だ。

「まーた華侯焔が誠人サマで悪巧みしようとしているんでしょうかねー?」

 俺の脇に控えながら、目の前の瓶に入った酒を楽しんでいた白鐸が、華侯焔たちを見やりながら呟く。

 正直、気になって仕方がない。この後に俺が何をされてしまうのかと思うと、気が気でない。しかも才明は現実で仲林アナだと知ってしまっただけに、真実の姿が頭の中にチラついてしまう。

 そもそも俺の身体はVRではなくて本物だ。また彼らを覚えてしまうのかと思うと、腰の奥が落ち着かなくなってくる。むず痒くて、気を抜くと力が抜けてしまいそうな――。

「誠人サマ、お酒、飲まないんですかー?」

 白鐸に話しかけられて、俺はハッと我に返る。

「今はそんな気分じゃないんだ。良かったら俺の分を飲んでくれないか、白鐸」

 宴の始まりのために盃に注がれた酒を、俺は白鐸へ差し出す。
 ほぼ毛玉な白鐸の目がキラリと光った。

「嬉しいですー! 領主サマ自ら下さるお酒は格別ですー」

 白鐸がその場に浮かび、空を回りながら大きな声ではしゃぐ。

 ギロッ、と華侯焔たちが三人同時に振り向いて白鐸を睨む。
 実力者たちの殺気じみた視線を突き刺されても、むしろ白鐸は自慢げだった。

「ワタシも頑張りましたからねー。っていうか、最初からずーっと頑張っているんですからー」

 俺が手にした盃から直に酒を飲み干すと、白鐸は俺の腕に巻き付いて顔を擦り付けてくる。いつも親しげではあるが、ここまで絡んだりはしない。どうやら酔っているらしい。

 極上のタオルにまとわりつかれているようで、この感触は悪くないと思っていると、白鐸が小さく呟いた。

「本っっ当に嬉しいんですよー。誠人サマがここまで強くなられて……うっうっ……」

 絡み上戸で泣き上戸だったのか、白鐸。
 厄介だと思いつつも、喜んでくれている気持ちは伝わってくる。おもむろに俺は手を伸ばし、白鐸の頭を撫でた。

「感謝している、白鐸。これからも頼りにしている」

「ええ。絶対に誠人サマをお守りしますからー……この命に変えても、必ず――」

 やけに熱意のある言葉を口にするなと思っていると、

「コラ、抜け駆けするな、長毛玉」

 いつの間にか話を切り上げた華侯焔が、白鐸の首根っこを掴んで持ち上げた。

「あーっ、華侯焔! 何するんですかー!」

「ちょっと飲み過ぎだ。外にでも出て酔いを覚まして来い」

 いつもなら売り言葉に買い言葉で延々と言い合いが始まるが、珍しく白鐸から反発がなかった。

 しゅるり、と俺の腕から離れると、白鐸は軽くフラつきなら空に浮かぶ。

「……みたいですねー。誠人サマに迷惑をかける前に、ちょっと行ってきますー」

 そうしてユラユラと上下を波立たせながら、白鐸は宴の広間から出て行ってしまった。
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