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九話 新たな繋がり

語られる英正の動向

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 互いの腕を伸ばせばぶつかり合う所まで近づいた侶普は、堂々とした佇まいのまま俺に跪く。

 これが侶普のギリギリの間合いなのだろう。威圧感が凄まじい。
 華候焔に次ぐ猛将だということに疑う余地はない。それに未だ警戒の糸を解かず、主にもしものことがあれば迷わず俺の首を狙いそうな気配すらある。

 つられて緊張してしまう俺と目を合わせると、侶普は深々と首を垂れた。

「誠人様、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。我が名は侶普。この度は我が主を手厚くもてなし、同盟を組んで下されたこと、誠に感謝しております」

 低く抑揚に乏しい声。実直そうな人柄で、武人としてこうありたいと思わせてくれる将だ。

 今、俺の意図を汲む者たちは、俺が切実に澗宇との同盟を望み、彼とのかかわりを大切にしたいと思っていることを理解している。だから澗宇に何かすることはないと確信しているし、もし何かあれば華候焔も動く。

 澗宇との関係が良好である限り、侶普が俺たちの敵に回ることはない。
 そんな確信があるからこそ、俺は侶普の威圧感に呑まれることなく、向き合うことができた。

「遠路はるばるよく来てくれた。同盟を結ぶことができて、本当に嬉しく思っている」

「ありがたきお言葉。私個人としても、誠人様をこの目でぜひ見てみたいと思っておりましたから、念願が叶い、嬉しく思っています」

 ゆっくりと顔を上げた侶普が、チラリと横のほうを見やる。
 その視線を追ってみれば、宴で盛り上がる中、広間の隅にジッと控えながら俺の様子を伺い続ける英正の姿があった。

「……彼が我らの領地に足を踏み込んだと知らせを受け、私は彼を捕らえに向かいました。我が主に近づこうとする不届きな輩は後を絶ちませんから、彼も同じだと思い、場合によっては斬り捨てるつもりでした」

「戦ったのか、英正と?」

「いえ。私の攻撃を避けるばかりで、戦おうとはしませんでした。ずっと澗宇様に直接親書を渡したいと……己の身が裂けることより親書を汚さぬことを迷わず選ぶ将だと知り、他とは違う気概を感じて剣を収めました」

 英正……無理はするなと言ったのに。
 この世界で二番目の猛者に斬られかけていたという事実を知ってしまい、俺は心の中で頭を抱える。

 表情に出していないつもりでも気配で俺が青ざめていることが伝わってしまったようで、侶普はわずかに強固な無表情を和らげた。

「誠人様は良き将に恵まれておりますね。この目で見るまでは信じられませんでしたが、華候焔も貴方様には忠誠を誓っている……英正殿や華候焔にここまで忠を抱かせる領主とは、どのような方だろうと思っておりました」
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