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九話 新たな繋がり

澗宇との対面2

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「僕自身は弱いですが、ここにいる侶普を始め、優秀な武将に恵まれて今もこうして領主でいることができています。そして、僕のために全力を注いでくれた人がいたから……」

 澗宇の視線がわずかにズレる。すぐに誰を見ているのか分かり、俺の胸がわずかにざわつく。

 フッ、と澗宇が柔らかな笑みを浮かべる。純粋な喜びに溢れた顔。特別を華候焔に送っているのが見て取れた。

「ご無沙汰しています。お元気そうで何よりです、華候焔様」

「……ああ。お前も上手くやっているようで何よりだ」

 背後からの華候焔の声がいつもより低く、抑揚が弱い。どこか遠慮というか、感情を抑えているような気がして俺は振り向く。

「近くに行かなくてもいいのか? 俺のことは気にしなくても――」

「けじめは大切だ。今の俺は澗宇の配下じゃない」

 ぼそり、と俺だけに聞こえる声で華候焔が呟く。
 こんなに気遣っている華候焔は初めてだと思っていると、澗宇は俺に視線を戻して背を正した。

「事情は英正さんや才明さんたちから伺っています。僕からの条件を呑んで下さるなら、喜んで誠人さんと同盟を結びたいと思います」

「条件とは?」

「誰にも話を聞かれないよう、完全に誠人さんと二人きりで話をさせて下さい。僕からの条件はそれだけです」

 それだけでいいのか? と俺は思わず目を見張ってしまう。
 何を言われたとしても、話をするだけで同盟が結べるのならば苦にならない。ただ、あまりにこちらへ有利な内容過ぎて、逆に身構えてしまう。

 すぐに決断できない俺をよそに、華候焔が澗宇へ話しかける。

「お互いに二人ずつ、という訳にはいかないのか? 心配し過ぎて侶普の胃に穴が開くぞ」

「それは困りますけど、どうしても二人だけで話をしたいんです。一応侶普の説得は終わっています。彼も渋々ですが承諾してくれました」

「渋々、か。俺にも聞かせたくないのか?」

「……はい。領主という立場を抜きにして、誠人さんとお話したくて……」

 華候焔にも、忠臣にも聞かせたくないこととは?

 少し考えてからふと考える。
 俺も彼も負けを知らない、現実とこの世界を姿を変えずにそのまま行き来している存在。もしかすると澗宇が話したいことというのは――。

 可能性に気付いた途端、俺の中から困惑は消えた。

「分かった、条件を呑もう。俺も個人的に澗宇と話をしたい」

 俺が一歩前に出て気持ちを伝えると、澗宇の目の輝きが増す。
 今にも瞳が潤んで涙を流しそうな目。意味のない戯れではなく、俺との対話を心底望んでいることが伝わってくる。しかも切実に。

 いったいなぜなのだろうかと考えていると、華候焔からため息が聞こえてくる。

 二人の間に漂う親しさと違和感。
 澗宇に聞けば教えてくれるだろうか? と俺が考えているところで、才明がパンッと手を鳴らした。

「では静かに語らえるように準備致しました後、私たちは部屋を出ましょう。大声を出さない限りは外に聞こえませぬのでご安心下さい」

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