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九話 新たな繋がり
澗宇との対面
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◇ ◇ ◇
いつもとは違う黒が基調の衣服をまとい、獅子の刺繍を施した帯を巻き、清楚な白の羽織に袖を通した俺は、華候焔を連れて貴賓室へと向かった。
扉の前に跪いて待機する英正の姿があり、俺は一瞬足を止める。
こちらに気づいた英正が俺を見る。目が合った瞬間、思わず駆け寄りたい衝動に襲われたが、すぐ隣の部屋には澗宇がいる。公の場である以上、素を出す訳にはいかない。
俺は静かに英正に近づき、肩に手を乗せた。
「英正、よく無事に帰って来てくれたな」
「……いえ、私はただ出向いただけに過ぎません」
もっと嬉々とした反応が返ってくるかと思ったが、英正の表情は冴えず、どこか苦々しそうに呟く。
何かあったのだろうかと心配していると、英正は息をついた後に貴賓室へ目配せした。
「今、才明殿と白澤様が澗宇様と話をされております。お食事がまだでしたら今の内に――」
「いや。わざわざ足を運んでくれたんだ。すぐ会うべきだ」
「分かりました。しばしお待ちを……」
英正は立ち上がり俺に一礼すると、どこか緊張した様子で「領主様がお越しになりました」と貴賓室へ声をかける。
間もなくして、キィィ……と扉が開き、才明が俺を出迎えた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
相変わらずのにこやかな糸目で感情が読めない顔だが、それでもいつもより雰囲気が固い。どうやら珍しく才明も緊張しているらしい。
招かれるまま部屋に入り、俺は部屋の奥で果実と飲料で侍女から歓待を受けている者を目にする。
とても小柄で、まだ成人を迎えてなさそうなあどけない顔だった。
穏やかな笑みを浮かべて杯に口付け、侍女へ労うような笑みを浮かべる彼からは、武の匂いが一切しなかった。
肩まで伸ばした明るい茶色の髪に薄く赤らんだ頬。おそらくは男性なのだろうが、顔立ちは中性的で女性と言われても通る顔だ。目も大きく可憐さが漂っている。
そして部屋の隅に見慣れぬ大男が跪いて控えている。
正しくは分からないが、もしかすると華候焔よりも大きいかもしれない。柔らかさを滲ませる主とは反対に、鍛えられた肉体もまとう空気もずしりと重い。岩を通り越して鉄の塊のような男だ。
歓待を受けているのが澗宇で、大男が侶普なのだろう。
俺は澗宇の元へ行き、胸元で平手に拳を合わせる拝礼の型を作って目の前まで持ち上げる。
「私が領主の正代誠人……我が城までわざわざ足を運んで頂き感謝す――」
「ああっ、どうかそんなに硬くならないで下さい誠人さん。僕のほうが年下ですし、この世界では最弱の領主ですから……どうか澗宇と呼び捨てて下さい」
ゲームとはいえ形は大切だと思って対応したが、澗宇は現実の感覚そのままの反応を返してくる。
……こんな少年が、なぜ多くの領土を有して勝ち残っているんだ?
困惑を滲ませる俺に対して、澗宇は恥ずかしげに頬を掻きながら苦笑した。
いつもとは違う黒が基調の衣服をまとい、獅子の刺繍を施した帯を巻き、清楚な白の羽織に袖を通した俺は、華候焔を連れて貴賓室へと向かった。
扉の前に跪いて待機する英正の姿があり、俺は一瞬足を止める。
こちらに気づいた英正が俺を見る。目が合った瞬間、思わず駆け寄りたい衝動に襲われたが、すぐ隣の部屋には澗宇がいる。公の場である以上、素を出す訳にはいかない。
俺は静かに英正に近づき、肩に手を乗せた。
「英正、よく無事に帰って来てくれたな」
「……いえ、私はただ出向いただけに過ぎません」
もっと嬉々とした反応が返ってくるかと思ったが、英正の表情は冴えず、どこか苦々しそうに呟く。
何かあったのだろうかと心配していると、英正は息をついた後に貴賓室へ目配せした。
「今、才明殿と白澤様が澗宇様と話をされております。お食事がまだでしたら今の内に――」
「いや。わざわざ足を運んでくれたんだ。すぐ会うべきだ」
「分かりました。しばしお待ちを……」
英正は立ち上がり俺に一礼すると、どこか緊張した様子で「領主様がお越しになりました」と貴賓室へ声をかける。
間もなくして、キィィ……と扉が開き、才明が俺を出迎えた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
相変わらずのにこやかな糸目で感情が読めない顔だが、それでもいつもより雰囲気が固い。どうやら珍しく才明も緊張しているらしい。
招かれるまま部屋に入り、俺は部屋の奥で果実と飲料で侍女から歓待を受けている者を目にする。
とても小柄で、まだ成人を迎えてなさそうなあどけない顔だった。
穏やかな笑みを浮かべて杯に口付け、侍女へ労うような笑みを浮かべる彼からは、武の匂いが一切しなかった。
肩まで伸ばした明るい茶色の髪に薄く赤らんだ頬。おそらくは男性なのだろうが、顔立ちは中性的で女性と言われても通る顔だ。目も大きく可憐さが漂っている。
そして部屋の隅に見慣れぬ大男が跪いて控えている。
正しくは分からないが、もしかすると華候焔よりも大きいかもしれない。柔らかさを滲ませる主とは反対に、鍛えられた肉体もまとう空気もずしりと重い。岩を通り越して鉄の塊のような男だ。
歓待を受けているのが澗宇で、大男が侶普なのだろう。
俺は澗宇の元へ行き、胸元で平手に拳を合わせる拝礼の型を作って目の前まで持ち上げる。
「私が領主の正代誠人……我が城までわざわざ足を運んで頂き感謝す――」
「ああっ、どうかそんなに硬くならないで下さい誠人さん。僕のほうが年下ですし、この世界では最弱の領主ですから……どうか澗宇と呼び捨てて下さい」
ゲームとはいえ形は大切だと思って対応したが、澗宇は現実の感覚そのままの反応を返してくる。
……こんな少年が、なぜ多くの領土を有して勝ち残っているんだ?
困惑を滲ませる俺に対して、澗宇は恥ずかしげに頬を掻きながら苦笑した。
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