157 / 345
九話 新たな繋がり
恐るべき威力
しおりを挟む
「見ての通り、普通の弓ならこの程度だ。まあ遠く離れた相手を確実に当てられるってだけでも役に立つんだがな」
「……役立つどころか、幅広い射程範囲内で将を狙えるのは脅威でしかないんだが……」
俺が思ったことを呟くと、華候焔は「褒めて頂き恐縮」と愉快げに応え、すぐに肩をすくめる。
「だが勘のいい奴には避けられる時もある。弓は俺の得意武器ではないからな。専門のヤツにはどうしても精度が及ばん。だがな――」
華候焔が弓を持った手を下すと、それを合図に後方から二人の兵士が大きな弓を運んで来る。
そして華候焔は弓を大きな物に持ち変える。
弓の両端に小さな滑車がつけられたもの――コンパウンドボウ。
馬の体に取り付けてあった矢筒から華候焔が手にしたのは鉄の矢。
キリリリ……と弦を引き絞りながら矢を構えると、華候焔の口元が嬉しげに緩んだ。
「ふむ……いいな。力が入れやすいし、普通の弓よりもさらに引ける。これならもっと――」
独り言を呟くほどに矢が光を帯びていく。
白い輝きは次第に赤みを増し、炎を宿したような揺らめきを生む。
熱い。最初の一矢には熱など感じなかった。
まるで華候焔の余りある力を燃やし、矢に詰め込んでいるように見えてくる。もしかすると本人が止めなければ、際限なく力を宿すことができるのかもしれない。
次第に赤き光が矢の先端に集まっていく。
凝縮されて小さくなっていく輝き――かと思えば、再び大きな輝きとなって膨らんでいく。
辺りの空気がブルブルと震え出す。気を抜けば俺の力も吸い取られ、矢に溜め込まれてしまいそうだ。
ククッ、と。華候焔が喉で笑った。
「普通の素材でここまで耐えられるか。ならば特殊な物で作らせばより強くなる……今日はこれくらいでいいか……っ」
言い終えた瞬間、華候焔は矢を放つ。
ゴォォォォォォッ、と旋風と轟音を生みながら、赤き力をまとった矢が城へ飛んでいく。
城壁を飛び越え、城の屋根へ届いた刹那――城の上部がごっそりと消えた。
見ていた俺も、才明も、兵士たちも、全員が息を呑む。
心なしか城の前に配置された兵たちも固まっているように見える。
たった一矢で城を破壊。
投石機での攻撃でも、ここまでの威力はない。もはや大砲クラスだ。
これが華候焔の本気なのかと俺が目を見張っていると、彼は特に誇ることもせず新たな鉄矢を手にした。
「じゃあそろそろ本気を出すとするか」
……今のが本気じゃない、だと?
俺を含めた全員が華候焔の発言に固まってしまう。あまりの強さに畏怖を覚え、後ずさりする兵もいる。
勝っているはずなのに緊張感が漂う中、華候焔は俺に手を差し出した。
「誠人様、貴方の力をお借りしたい」
「……役立つどころか、幅広い射程範囲内で将を狙えるのは脅威でしかないんだが……」
俺が思ったことを呟くと、華候焔は「褒めて頂き恐縮」と愉快げに応え、すぐに肩をすくめる。
「だが勘のいい奴には避けられる時もある。弓は俺の得意武器ではないからな。専門のヤツにはどうしても精度が及ばん。だがな――」
華候焔が弓を持った手を下すと、それを合図に後方から二人の兵士が大きな弓を運んで来る。
そして華候焔は弓を大きな物に持ち変える。
弓の両端に小さな滑車がつけられたもの――コンパウンドボウ。
馬の体に取り付けてあった矢筒から華候焔が手にしたのは鉄の矢。
キリリリ……と弦を引き絞りながら矢を構えると、華候焔の口元が嬉しげに緩んだ。
「ふむ……いいな。力が入れやすいし、普通の弓よりもさらに引ける。これならもっと――」
独り言を呟くほどに矢が光を帯びていく。
白い輝きは次第に赤みを増し、炎を宿したような揺らめきを生む。
熱い。最初の一矢には熱など感じなかった。
まるで華候焔の余りある力を燃やし、矢に詰め込んでいるように見えてくる。もしかすると本人が止めなければ、際限なく力を宿すことができるのかもしれない。
次第に赤き光が矢の先端に集まっていく。
凝縮されて小さくなっていく輝き――かと思えば、再び大きな輝きとなって膨らんでいく。
辺りの空気がブルブルと震え出す。気を抜けば俺の力も吸い取られ、矢に溜め込まれてしまいそうだ。
ククッ、と。華候焔が喉で笑った。
「普通の素材でここまで耐えられるか。ならば特殊な物で作らせばより強くなる……今日はこれくらいでいいか……っ」
言い終えた瞬間、華候焔は矢を放つ。
ゴォォォォォォッ、と旋風と轟音を生みながら、赤き力をまとった矢が城へ飛んでいく。
城壁を飛び越え、城の屋根へ届いた刹那――城の上部がごっそりと消えた。
見ていた俺も、才明も、兵士たちも、全員が息を呑む。
心なしか城の前に配置された兵たちも固まっているように見える。
たった一矢で城を破壊。
投石機での攻撃でも、ここまでの威力はない。もはや大砲クラスだ。
これが華候焔の本気なのかと俺が目を見張っていると、彼は特に誇ることもせず新たな鉄矢を手にした。
「じゃあそろそろ本気を出すとするか」
……今のが本気じゃない、だと?
俺を含めた全員が華候焔の発言に固まってしまう。あまりの強さに畏怖を覚え、後ずさりする兵もいる。
勝っているはずなのに緊張感が漂う中、華候焔は俺に手を差し出した。
「誠人様、貴方の力をお借りしたい」
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる