156 / 345
九話 新たな繋がり
比べ合い
しおりを挟む
◇ ◇ ◇
前回落とした城からさらに北上した所に、狙うべき太史翔の持ち城があった。
規模は俺が拠点とする城と同程度。
待機している将の数は十数人。前に城を落とされ、次にここを攻められると読んで、将を集めたらしい。
小高い丘から敵の城を眺めていると、兵士の格好をした才明が馬上にいる俺の足元へ近づき、話しかけてきた。
「恐らくは太史翔が抱える将の中でも、強者が集まっているかと思います。何度も立て続けに負けて、内外の評価がひどく落ちておりますから」
「そんな状態なのにこの人数で、本当に大丈夫なのか……?」
俺は隣の華候焔をチラリと見やる。俺同様に馬上に乗り、恐れ知らずな笑みを浮かべながら城を眺めている。
フッ、と華候焔から小さな笑いが零れた。
「大丈夫も何も、直接ぶつからないからな。誠人様、あそこの小さな丘が見えますかな? 我らが今から向かう場所です。そして、それ以上は城に近づきませぬ。落城するまでは」
華候焔が指さした丘は、なだらかで上りやすそうな、なんの変哲もない丘。そこを超えれば延々と草が茂った地が続いており、障害なく城を臨むことができる。
本来ならば城から見通しが良く、隠れることができない地。隊を隠すことができなければ、奇襲を仕掛けるのは難しい。正攻法ならば、より武力の高い者が勝者となるだろう。
しばらく周辺の景色を眺めてから、俺たちは進軍して目的の小丘へ到着する。
俺たちの動きに気付いて城から兵士たちが出てくる。次々と騎馬隊や歩兵隊が城壁の門から現れ、人の壁となって門の前に並ばんでいく。
その様子を眺めながら、華候焔は普通の大きな弓を手にし、戯れに弦を弾いた。
「さて、と。まずは比較できるように普通の弓からやろうか」
近くの兵士から矢を受け取ると、華候焔は軽々と弦を引いて構えを取る。
無駄のない動きと姿勢。戦国絵巻に描かれそうな姿に、俺は目を奪われてしまう。
「普通ならこの距離で射ったとしても、城どころか手前の兵たちにすら届かん。だが技を使えばこの通り――」
シュゥゥゥゥッッ、と矢に光が集まっていく。
全体に光が宿ったかと思えば、そこからさらに矢尻へと光が凝縮されていく。
そして矢先へすべての光が集まり、点となった瞬間――バシュッ! 矢が華候焔の手から離れた。
小さな輝きはすぐに見えなくなり、矢は直線の軌跡を描いていく。
失速する気配はなく、真っ直ぐ、真っ直ぐ――ゴカッ。城の屋根の飾りが崩れたのが見えた。
前回落とした城からさらに北上した所に、狙うべき太史翔の持ち城があった。
規模は俺が拠点とする城と同程度。
待機している将の数は十数人。前に城を落とされ、次にここを攻められると読んで、将を集めたらしい。
小高い丘から敵の城を眺めていると、兵士の格好をした才明が馬上にいる俺の足元へ近づき、話しかけてきた。
「恐らくは太史翔が抱える将の中でも、強者が集まっているかと思います。何度も立て続けに負けて、内外の評価がひどく落ちておりますから」
「そんな状態なのにこの人数で、本当に大丈夫なのか……?」
俺は隣の華候焔をチラリと見やる。俺同様に馬上に乗り、恐れ知らずな笑みを浮かべながら城を眺めている。
フッ、と華候焔から小さな笑いが零れた。
「大丈夫も何も、直接ぶつからないからな。誠人様、あそこの小さな丘が見えますかな? 我らが今から向かう場所です。そして、それ以上は城に近づきませぬ。落城するまでは」
華候焔が指さした丘は、なだらかで上りやすそうな、なんの変哲もない丘。そこを超えれば延々と草が茂った地が続いており、障害なく城を臨むことができる。
本来ならば城から見通しが良く、隠れることができない地。隊を隠すことができなければ、奇襲を仕掛けるのは難しい。正攻法ならば、より武力の高い者が勝者となるだろう。
しばらく周辺の景色を眺めてから、俺たちは進軍して目的の小丘へ到着する。
俺たちの動きに気付いて城から兵士たちが出てくる。次々と騎馬隊や歩兵隊が城壁の門から現れ、人の壁となって門の前に並ばんでいく。
その様子を眺めながら、華候焔は普通の大きな弓を手にし、戯れに弦を弾いた。
「さて、と。まずは比較できるように普通の弓からやろうか」
近くの兵士から矢を受け取ると、華候焔は軽々と弦を引いて構えを取る。
無駄のない動きと姿勢。戦国絵巻に描かれそうな姿に、俺は目を奪われてしまう。
「普通ならこの距離で射ったとしても、城どころか手前の兵たちにすら届かん。だが技を使えばこの通り――」
シュゥゥゥゥッッ、と矢に光が集まっていく。
全体に光が宿ったかと思えば、そこからさらに矢尻へと光が凝縮されていく。
そして矢先へすべての光が集まり、点となった瞬間――バシュッ! 矢が華候焔の手から離れた。
小さな輝きはすぐに見えなくなり、矢は直線の軌跡を描いていく。
失速する気配はなく、真っ直ぐ、真っ直ぐ――ゴカッ。城の屋根の飾りが崩れたのが見えた。
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説




美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる