俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

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九話 新たな繋がり

手強いタッグ

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   ◇ ◇ ◇

「――ちょっと待って下さい……白澤殿、今私は華候焔殿と誠人様だけで太史翔の城を攻め落とすと聞こえたのですが、気のせいでしょうか?」

「奇遇ですねー。ワタシにも同じような空耳が聞こえちゃいましたー。不思議ですよねー」

「共に同じ空耳が聞こえるとは、なかなか稀有なことですねえ」

「ワタシたち、気が合うんですかねー?」

 広間に集まった際、華候焔の口から二人で城を攻めることを告げると、才明と白澤が明後日の方向を見ながら棒読みのやり取りを始めた。そして、

「いきなり何を言い出すんですかー! 誠人様を危険に晒さないで下さいー!」

「そんな無謀なこと、軍師として認められませんよ。しかも兵士もたった二〇〇? あり得ません」」

 くるりと華候焔に振り返り、口々に非難交じりの説得を試みてきた。

 左右から口やかましく言われてしまい、華候焔が煩わしそうに顔をしかめる。

「そう騒ぐな。ちゃんと算段があってのことだ。あと誠人様の気晴らしも兼ねて」

「散歩するみたいなノリで城落とししないで下さいー!」

 白澤と華候焔の対立は毎日必ず目にする光景だ。だが、

「華候焔殿が一騎当千の猛者だということに疑う余地はありません。しかし誠人様に己の存在を誇示したいからと、いたずらに連れ出して危険に晒すというのはいかがなものかと思います」

 いつも柔和な弧を描いている才明の糸目が、見るからに鋭くなっている。
 普段から掴みどころのない男だが、それでも俺のことを心配して怒っていることが伝わってくる。

 強く反対する才明と白澤に対し、華候焔はそれぞれを見交わした後、ニヤリと笑った。

「危険には晒さない。そもそも隊を連れて突っ込む訳じゃないからな。ただ単に、威力のある花火を城にブチ当てて、城から敵を追い出すだけだ。きれいな花火を上げながら城も奪えて、誠人様の気も晴れる。良いことだらけだろ?」

「花火……大きな火矢でも放つ気ですか?」

 訝しげに才明が訪ねると、華候焔が小さく頷く。

「火ではないが、まあそんなところだな。昨日のアレ、もう完成しているだろ? それを使って俺の技を放つ」

 ピクリ。才明の耳が動いた。

「……確かに試しに一つだけ作るようお願いしました。アレで、華候焔殿の技を……」

「かなり派手なことになると思う。そこに誠人様の力もお借りすれば、面白いことになると思わないか?」

「アレは安易に知られたくないのですが……」

「だが試しは必要じゃないか? 俺の存在と技がいい隠れ蓑になる。俺はこの世界で、まだ本気を出していないんだ。俺の力には上があると思わせれば、小さい領土でも手は出しにくくなるはずだ」

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