上 下
153 / 345
八話 本当の仲間は誰?

何よりも熱くなること

しおりを挟む
 体は気だるいが、このまま華候焔を相手にしなければいけない流れかと諦める。

 だが予想に反して華候焔は上体を起こし、俺を無暗に疼かせずに離れてくれた。

「誠人、まずは先約をこなしてしまえ。あれもこれもと一度に分かろうとしても、頭も心も追いつかないだろう。俺は才明の後でいい」

 どうやら華候焔は俺が現実の才明――仲林アナに話を聞きに行きたがっていることを知っているらしい。

 分かった上で認めてくれるということは、少なくとも華候焔は才明が足を引っ張る敵ではないと評価している。

 一度現実に戻ったら、即座に会いに行こう。
 自分の方向性がしっかりと固まり、俺は大きく頷いてみせる。

 フッ、といつもの不敵な笑みを零してから、華候焔は話を続ける。

「さてと……俺が今までよりも誠人のために尽くすということを、行動で示さないとな」

「無理に示さなくてもいい。もう焔の心を疑っては――」

「俺がやりたいんだ。好きな相手が気に入る贈り物をしたいと望むのは、当たり前のことだろ? それに、英正には負けられんからな」

 冗談めいた口調で言っているが、俺を見下ろす華候焔の目が笑っていない。本気で英正と張り合いたがっているのが分かってしまう。

 いったい何を言い出すのだろうかと不安を覚えていると、華候焔は軽く体を前に倒し、俺に顔を近づけて告げてくる。

「そうだな、城をひとつ落とそうか。俺と誠人で」

「他の者は?」

「ここの留守番でもさせていればいい。兵数は二〇〇程度で十分だ。俺と誠で一〇〇ずつ。戦を仕掛ける時、最低でも一将につき一〇〇の兵を連れていかないと将として認められないからな」

 城を俺たち二人で陥落させる……そんなことができるのか?

 半信半疑な俺に対して華候焔が妖しく微笑む。さっきまでの切実で重い気配はなりを潜め、楽しみたいという高揚心が伝わってくる。

 そっと俺の頬に手を添えながら華候焔が告げる。

「言っただろ? 誠人のために本気を出すと……」

「……俺は見ているだけか?」

「二人で、と言ったはずだ。誠人にも動いてもらう。何もしないほうが嫌だろ? 俺とともに戦え」

 華候焔と戦える――この最強の男と駆けられる。

 どんな褒め言葉よりも、甘く優しい言葉をかけられるよりも、俺の心が熱くなる。

 本気の華候焔を見ることができるだけでも胸が高揚するというのに、戦うこともできるなんて。

 俺は何も答えなかった。上手く言葉が出せなかった。
 だが俺の目の輝きで思いは伝わったようで、華候焔は嬉しげに目を細め、「今から準備する。それまで休んでいろ」と立ち上がる。

 去り際、俺の頭を撫でてから華候焔は部屋を出ていく。

 たったこれだけで英正のことで抜けていた力が、俺の中へ一気に戻るのを感じていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...