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八話 本当の仲間は誰?
胸奥にざわつきを覚えながら
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「それでは誠人様、澗宇の元へ派遣する使者なのですが……誠人様?」
才明の声に俺はハッとなり、小さく頭を振って気を取り直す。
「すまない、少し考え事をしていた。誰を使者にする気だ?」
「登用したばかりの将は、まだ忠誠度が高くありませんから除外ですし、私や華候焔殿がここを離れる訳にはいきません。忠誠心の高さと、魅力が高ければ相手に話を聞いてもらいやすいという点では表涼が適正。ですが彼には羽勳を抑えてもらう必要があります。となれば――」
「使者は英正に決まり、か……危険はないのか?」
「保証は致しかねます。澗宇自身は平和主義者でも、彼を取り巻く将たちが同じとは限りません。澗宇に会う前に捕らえられ、始末される可能性もあります」
命を落とす危険があるなら、俺自身が使者として行ってしまいたい。誰かの命を懸けるくらいなら自分の命をかけたい。自分の判断の責任は自分で背負ってしまったほうが気は楽だ。
そんな俺の思いをすぐに汲んだ才明が、短く首を横に振る。
「誠人様が直接乗り込むことはなりませんよ。貴方の命を危険に晒すことは、英正殿にとっても不本意なことかと。このような大事を任されることになれば、英正殿は張り切られるでしょうし……彼を信じて待ちましょう」
この一手を打つならば、俺ができることは待つことだけ。
答えは決まっているのに割り切れなくて俺が表情を曇らせていると、
「……なるべく最短で行ける道と、いざという時に逃げられる道を教えておく。俺はあちこち放浪していたからな。澗宇に直接会えれば帰りは大丈夫。行きだけ用心すればいい」
華候焔の提案に少しだけ安堵を覚える。そして澗宇の領地に行ったことがあるという事実と、澗宇の人柄を知っているような発言に、また俺の胸奥がざわついてしまう。
最強故に何人もの領主に仕えてきた華候焔。その中に澗宇がいてもおかしくない。
一瞬、華候焔と視線が合う。たったこれだけでも本心を見抜かれそうで、俺はすぐに才明へ頷いて誤魔化す。
「分かった。英正に託そうと思う……華候焔、しっかりと英正に教えておいて欲しい」
「もちろんだ。もし捕まったとしても安心しろ、俺が連れ戻してやるから。英正に居なくなってもらったら困るからな」
俺の憂いを晴らそうとするように華候焔が不敵に微笑む。
いつもの笑み。彼なら何が起きたとしても、どうにかしてくれそうだと安心できる。
今もさっきよりも安堵を覚えている。
しかし完全に俺の心が晴れることはなかった。
才明の声に俺はハッとなり、小さく頭を振って気を取り直す。
「すまない、少し考え事をしていた。誰を使者にする気だ?」
「登用したばかりの将は、まだ忠誠度が高くありませんから除外ですし、私や華候焔殿がここを離れる訳にはいきません。忠誠心の高さと、魅力が高ければ相手に話を聞いてもらいやすいという点では表涼が適正。ですが彼には羽勳を抑えてもらう必要があります。となれば――」
「使者は英正に決まり、か……危険はないのか?」
「保証は致しかねます。澗宇自身は平和主義者でも、彼を取り巻く将たちが同じとは限りません。澗宇に会う前に捕らえられ、始末される可能性もあります」
命を落とす危険があるなら、俺自身が使者として行ってしまいたい。誰かの命を懸けるくらいなら自分の命をかけたい。自分の判断の責任は自分で背負ってしまったほうが気は楽だ。
そんな俺の思いをすぐに汲んだ才明が、短く首を横に振る。
「誠人様が直接乗り込むことはなりませんよ。貴方の命を危険に晒すことは、英正殿にとっても不本意なことかと。このような大事を任されることになれば、英正殿は張り切られるでしょうし……彼を信じて待ちましょう」
この一手を打つならば、俺ができることは待つことだけ。
答えは決まっているのに割り切れなくて俺が表情を曇らせていると、
「……なるべく最短で行ける道と、いざという時に逃げられる道を教えておく。俺はあちこち放浪していたからな。澗宇に直接会えれば帰りは大丈夫。行きだけ用心すればいい」
華候焔の提案に少しだけ安堵を覚える。そして澗宇の領地に行ったことがあるという事実と、澗宇の人柄を知っているような発言に、また俺の胸奥がざわついてしまう。
最強故に何人もの領主に仕えてきた華候焔。その中に澗宇がいてもおかしくない。
一瞬、華候焔と視線が合う。たったこれだけでも本心を見抜かれそうで、俺はすぐに才明へ頷いて誤魔化す。
「分かった。英正に託そうと思う……華候焔、しっかりと英正に教えておいて欲しい」
「もちろんだ。もし捕まったとしても安心しろ、俺が連れ戻してやるから。英正に居なくなってもらったら困るからな」
俺の憂いを晴らそうとするように華候焔が不敵に微笑む。
いつもの笑み。彼なら何が起きたとしても、どうにかしてくれそうだと安心できる。
今もさっきよりも安堵を覚えている。
しかし完全に俺の心が晴れることはなかった。
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