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八話 本当の仲間は誰?
華候焔の呟き
しおりを挟む華候焔の目が鋭くなり、向こうで話をしている才明に向く。
「この世界を知りたい、か。そういうヤツがいてもおかしくはないが、知ってどうする気なんだろうな。知ったところで何もできないだろうに……」
小さく低い声で華候焔が呟く。彼にしては珍しく自虐的な笑みを浮かべて。
しかし、すぐに不敵に笑ったかと思えば、俺の肩を抱き寄せて囁きかけてくる。
「そんなに知りたいなら俺が教えてやろう。褥の中でたっぷりと、な」
チュッと頬に口付けられ、俺の背筋に甘い痺れが走り抜けていく。
これ以上何かされたら無様に腰を抜かしてしまう――と俺が危機感を覚えた時、
「はい、やめて下さいー。これ以上はワタシが許しませんー! アナタに巻き付いて締め付けますよー」
俺の肩にかかっていた白澤が、体を半分浮かせて華候焔へ臨む。
水を差されて華候焔の顔が不満に歪んだ。
「すぐに邪魔するな、長毛玉。単なる大人の社交だ。お前は引っ込んでろ」
「嫌ですー。これ以上誠人サマの弱みにつけ込んで手籠めにしないで下さいー」
また言い合いが始まってしまい、俺は眉間にシワを寄せてしまう。
出会った時からこの調子だが、最近より酷くなっている。事あるごとに反発し合っている。
同じ陣営にいるのだから、もう少し仲良くはできないのかとため息をついていると、突然「なんとっ!」と鉄工翁の驚きの声が部屋に響いた。
何があったのかと俺たちが才明たちの元へ駆け付けると、机の上に広げた大きな紙に手早く図面を描いていく才明の姿があった。
「才明、これは……?」
俺が尋ねても才明は一心不乱に図を描くことに集中し続ける。
ヒョイと図面を覗き込んだ華候焔が、「ほう」と声を上げた。
「面白い弓じゃねえか。両端に滑車を付けて弦を引きやすくしているのか……これなら弦の素材を強固なものにしてガチガチに張っても矢を射られる。普通の弓より威力が上がるな」
ひと目見て瞬時に図面を理解する華候焔に対し、武だけではない一面が垣間見える。やはり流石だと俺がその姿に感心していると、彼が考え込むように口元に手を置いてボソリと呟く。
「……コンパウンドボウ、か」
たまたま俺が意識していたから、辛うじて聞こえた言葉。
中華風の世界観であるゲーム内で、カタカナ語の物は出てこない。
なのに華候焔がそれを口にしたということは、ひとつの事実を物語る。
華候焔も才明と同じく、現実にいる人間の誰かだということを――。
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