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八話 本当の仲間は誰?
白澤の進化
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* * *
ツゥン――。
朝食を終えて自室に戻ってすぐ、俺はVRのゴーグルをかけて『至高英雄』を起動した。
いつもこの起動音を耳に入れると、一瞬だけ意識が途切れ、すぐに元に戻る。
ふと手を動かして目元を触れば、ゴーグルはなく直接肌へ触れられる。
視界は未だ暗く、自分の体を見ることすら叶わない。
鼓動が走り、焦燥感が全身へ広がっていく。
早く確かめたい。
分かったところで、俺のやるべきことは変わらないとしても――。
目覚めると、真新しく豪華になった天井が目に入ってくる。
中華らしい龍や雲の模様。強さと神秘にあやかれるよう、こんな寝床の真上に敢えて描かれたのだろうか?
そんなことを思いながら体を起こすと、ふとベッドの足元に白い獣の皮で作ったような丸いマットが目に入る。
前回までこれはなかったような……。
わざわざ誰かが置いてくれたのかと、スリッパのような簡易の履き物に足を入れると、
「ふわぁぁぁぁ……あー、誠人サマー、おはよーございますー」
突然マットが話しかけてきたかと思えば、むっくりと起き上がり空に浮かぶ。
聞き馴染んだ声に俺は目を剥いた。
「は、白澤、なのか……!?」
「はいー。誠人サマの領主としての格が上がりましたので、ワタシの格も上がりましたー」
フワフワと浮かびながら嬉しそうに話す白澤だが、前の手乗りサイズから眺めのフェイスタオルぐらいの大きさに成長したはいいが……毛に覆われているのは前と変わらず。毛むくじゃらの小さな一反木綿、といった感じだ。
こういう進化をする時は、もう少し形が複雑になるというか、せめて顔が出るとか、もっと様になるものではないのか?
可愛くも格好良くもならない、珍妙なままの白澤を眺めるばかりの俺に白澤が話を続ける。
「昨日は近くにいられなくてすみませんー。進化のために離れてましたー。前よりも神通力が強くなりましたので、誠人サマのお役に立てますからねー」
「そう、だったのか。何かあったのかと心配したぞ。できれば一言教えて欲しかった」
「すみませんー、急に呼ばれてしまいましたからー」
「呼ばれた?」
「この世界を作る神様ですー。別名はしすてむえんじにあですー」
前回までの俺なら、ゲームだからとそのまま聞き流していた。
しかし現実の体ごとここに来ていることが分かった今、白澤のこの発言が嘘のように感じてしまう。
果たして俺を本当に支えようとしているのか、それとも監視しているのか――。
用心しなければと思いつつ、俺は「頼りにしているぞ」と平静を装った。
ツゥン――。
朝食を終えて自室に戻ってすぐ、俺はVRのゴーグルをかけて『至高英雄』を起動した。
いつもこの起動音を耳に入れると、一瞬だけ意識が途切れ、すぐに元に戻る。
ふと手を動かして目元を触れば、ゴーグルはなく直接肌へ触れられる。
視界は未だ暗く、自分の体を見ることすら叶わない。
鼓動が走り、焦燥感が全身へ広がっていく。
早く確かめたい。
分かったところで、俺のやるべきことは変わらないとしても――。
目覚めると、真新しく豪華になった天井が目に入ってくる。
中華らしい龍や雲の模様。強さと神秘にあやかれるよう、こんな寝床の真上に敢えて描かれたのだろうか?
そんなことを思いながら体を起こすと、ふとベッドの足元に白い獣の皮で作ったような丸いマットが目に入る。
前回までこれはなかったような……。
わざわざ誰かが置いてくれたのかと、スリッパのような簡易の履き物に足を入れると、
「ふわぁぁぁぁ……あー、誠人サマー、おはよーございますー」
突然マットが話しかけてきたかと思えば、むっくりと起き上がり空に浮かぶ。
聞き馴染んだ声に俺は目を剥いた。
「は、白澤、なのか……!?」
「はいー。誠人サマの領主としての格が上がりましたので、ワタシの格も上がりましたー」
フワフワと浮かびながら嬉しそうに話す白澤だが、前の手乗りサイズから眺めのフェイスタオルぐらいの大きさに成長したはいいが……毛に覆われているのは前と変わらず。毛むくじゃらの小さな一反木綿、といった感じだ。
こういう進化をする時は、もう少し形が複雑になるというか、せめて顔が出るとか、もっと様になるものではないのか?
可愛くも格好良くもならない、珍妙なままの白澤を眺めるばかりの俺に白澤が話を続ける。
「昨日は近くにいられなくてすみませんー。進化のために離れてましたー。前よりも神通力が強くなりましたので、誠人サマのお役に立てますからねー」
「そう、だったのか。何かあったのかと心配したぞ。できれば一言教えて欲しかった」
「すみませんー、急に呼ばれてしまいましたからー」
「呼ばれた?」
「この世界を作る神様ですー。別名はしすてむえんじにあですー」
前回までの俺なら、ゲームだからとそのまま聞き流していた。
しかし現実の体ごとここに来ていることが分かった今、白澤のこの発言が嘘のように感じてしまう。
果たして俺を本当に支えようとしているのか、それとも監視しているのか――。
用心しなければと思いつつ、俺は「頼りにしているぞ」と平静を装った。
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