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七話 現実が繋がる時
●悪役を買って出る
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突然肩を掴まれたかと思えば、グイッと力強く俺は抱き寄せられて男性から引き離される。
朦朧としながらでも声の主は東郷さんだと理解できた。
「いや、別に、正代君が辛そうだったから――」
「薬を飲ませてそうさせたくせに……顔は覚えました。私のゲストに手を出そうとしたこと、後で柳生田社長に報告させて頂きます」
「頼む、それだけは……っ」
ぼんやりとなる意識の中、男性が東郷さんに縋ろうとする。
しかし軽く男性を蹴り飛ばし、東郷さんは俺を抱え上げ、無言でエレベーターへ乗り込んでしまった。
性急にボタンを押してエレベーターを動かす中、東郷さんから小さなため息が聞こえてきた。
「あれほど勝手に動くなと言ったのに……大丈夫か、正代君?」
東郷さんの声が体に響き、やけに疼いて落ち着かない。
口を開けば喘いでしまいそうで、俺は必死に固く唇を結ぶ。
密室に二人だけ。抱えられ、逃げることのできない状況。
嫌な緊張感で心臓がひどく脈打つ。なのに体中に響けば腰の奥が甘く疼いて、東郷さんに縋りたくなってしまう。
さっき東郷さんが男性に対して、薬を飲ませたとか言っていた。この体の異変はそのせいなのだろう。
楽にして欲しいと願うということは、抱いて欲しいと言うようなもの。
絶対に助けを求めてはいけない。弱音も吐かない。このまま落ち着くまで、俺は黙り続けなければ……。
――チン。エレベーターが指定した階に到着する。
扉が開いてすぐに東郷さんは歩き出し、真っ直ぐに続く廊下の突き当りの部屋で足を止める。
片手でカードキーを取り出し、ドアのロックを外せるのは流石だ。俺の重さをを片手で抱えながらできる人間はそういない。
ここは東郷さんの部屋で、俺が落ち着くまで休ませてくれるのだろうと思っていたが……。
部屋に入り、バタンと扉を閉めた直後――俺の唇は東郷さんに奪われていた。
「……っ」
必死に堪える俺の努力が無駄だと言わんばかりに、東郷さんは俺の口内を淫らに舐め回し、ねっとりといやらしく舌を絡め取る。
ゲームで何度も快楽に流されてしまった体は、逆らうことなく悦びを覚えてしまう。
唇を睦ませながら東郷さんがベッドへ俺を運んでいくまでの間、俺はキスに夢中になるばかりで、やめて欲しいと微塵も拒むことはできなかった。
一旦唇を離してゆっくりとベッドに俺を寝かすと、当然のように東郷さんは上に被さってくる。
顔を近づけて見下ろすその表情は、どこか不敵で妖しく、熱に溢れていた。
「言ってあったな? 約束を違えたらどうするか――お仕置きだ」
俺が異常な体の疼きに流され負けてしまう前に、東郷さんが俺を楽にする口実を告げてくれる。
ただ欲情をぶつけたいだけとは思えないのはなぜだろうか?
先に切り出すことで悪役を買って出た東郷さんは、俺の返事を聞かずに口付けを再開した。
朦朧としながらでも声の主は東郷さんだと理解できた。
「いや、別に、正代君が辛そうだったから――」
「薬を飲ませてそうさせたくせに……顔は覚えました。私のゲストに手を出そうとしたこと、後で柳生田社長に報告させて頂きます」
「頼む、それだけは……っ」
ぼんやりとなる意識の中、男性が東郷さんに縋ろうとする。
しかし軽く男性を蹴り飛ばし、東郷さんは俺を抱え上げ、無言でエレベーターへ乗り込んでしまった。
性急にボタンを押してエレベーターを動かす中、東郷さんから小さなため息が聞こえてきた。
「あれほど勝手に動くなと言ったのに……大丈夫か、正代君?」
東郷さんの声が体に響き、やけに疼いて落ち着かない。
口を開けば喘いでしまいそうで、俺は必死に固く唇を結ぶ。
密室に二人だけ。抱えられ、逃げることのできない状況。
嫌な緊張感で心臓がひどく脈打つ。なのに体中に響けば腰の奥が甘く疼いて、東郷さんに縋りたくなってしまう。
さっき東郷さんが男性に対して、薬を飲ませたとか言っていた。この体の異変はそのせいなのだろう。
楽にして欲しいと願うということは、抱いて欲しいと言うようなもの。
絶対に助けを求めてはいけない。弱音も吐かない。このまま落ち着くまで、俺は黙り続けなければ……。
――チン。エレベーターが指定した階に到着する。
扉が開いてすぐに東郷さんは歩き出し、真っ直ぐに続く廊下の突き当りの部屋で足を止める。
片手でカードキーを取り出し、ドアのロックを外せるのは流石だ。俺の重さをを片手で抱えながらできる人間はそういない。
ここは東郷さんの部屋で、俺が落ち着くまで休ませてくれるのだろうと思っていたが……。
部屋に入り、バタンと扉を閉めた直後――俺の唇は東郷さんに奪われていた。
「……っ」
必死に堪える俺の努力が無駄だと言わんばかりに、東郷さんは俺の口内を淫らに舐め回し、ねっとりといやらしく舌を絡め取る。
ゲームで何度も快楽に流されてしまった体は、逆らうことなく悦びを覚えてしまう。
唇を睦ませながら東郷さんがベッドへ俺を運んでいくまでの間、俺はキスに夢中になるばかりで、やめて欲しいと微塵も拒むことはできなかった。
一旦唇を離してゆっくりとベッドに俺を寝かすと、当然のように東郷さんは上に被さってくる。
顔を近づけて見下ろすその表情は、どこか不敵で妖しく、熱に溢れていた。
「言ってあったな? 約束を違えたらどうするか――お仕置きだ」
俺が異常な体の疼きに流され負けてしまう前に、東郷さんが俺を楽にする口実を告げてくれる。
ただ欲情をぶつけたいだけとは思えないのはなぜだろうか?
先に切り出すことで悪役を買って出た東郷さんは、俺の返事を聞かずに口付けを再開した。
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